テキサス大学医学部ガルベストン校(UTMB)の研究者たちが、アルツハイマー病や認知症などの神経変性疾患について、鼻にスプレーを噴霧するだけで認知機能を改善する治療法を発表しました。

New Breakthrough in Alzheimer’s Research: UTMB Researchers Develop Nasal Spray Treatment for Alzheimer’s Disease

https://www.utmb.edu/news/article/utmb-news/2024/07/03/new-breakthrough-in-alzheimer-s-research--utmb-researchers-develop-nasal-spray-treatment-for-alzheimer-s-disease



Nasal tau immunotherapy clears intracellular tau pathology and improves cognitive functions in aged tauopathy mice | Science Translational Medicine

https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.adj5958

One-dose nasal spray clears toxic Alzheimer's proteins to improve memory

https://newatlas.com/health-wellbeing/nasal-spray-tau-proteins-alzheimers/

この新しい治療法の中心となるのは、TTCM2と呼ばれる特殊な抗体です。この抗体は、脳内で有害なタウタンパク質の蓄積を選択的に認識し、標的にする能力を持っています。

タウタンパク質は通常、健康な脳では神経細胞の構造を維持する重要な役割を果たしていますが、神経変性疾患では異常に折りたたまれ、神経細胞の機能を妨げる凝集体を形成してしまいます。



従来の治療法では、タウタンパク質の凝集体が存在する細胞内区画に十分に抗体が浸透できないという課題がありました。しかし、UTMBの研究チームは、TTCM2抗体を特殊な粒子に包含することで、鼻腔経由での脳への効果的な送達を可能にしたとのこと。この方法により、血液脳関門という大きな障壁をバイパスし、治療薬をより迅速かつ効果的に脳に届けることができるようになると研究チームは論じています。

さらに、この治療法の効果を高めているのが、TRIM21と呼ばれる細胞内受容体の働きです。TTCM2抗体がタウタンパク質の凝集体と結合した後、TRIM21がこの抗体と凝集体の結合を認識して分解を促進し、従来の治療法では難しかった細胞内のタンパク質を効率良く除去できるとのこと。

研究チームは高齢マウスモデルを用いた実験で、この鼻噴霧治療法がタウタンパク質の凝集体を効果的に除去し、認知機能を改善することを確認しました。この結果は、アルツハイマー病やその他の関連する疾患に苦しむ何百万人もの患者にとって、大きな希望となる可能性を秘めています。



UTMBの研究チームは、この有望な結果を実際の治療法へと発展させるため、さらなる前臨床試験を計画しており、将来的にはTTCM2抗体を使用したヒト臨床試験へと研究を進める予定だとしています。