ITインシデントとしては世界最悪クラスとも表現されている、2024年7月に発生した「CrowdStrike問題」では、多くの大企業が影響を受けました。Microsoftによれば、影響を受けた端末の数はWindows端末全体の1%未満とのことなのですが、なぜこれほど大きな範囲に影響が及んだのかは、会社が大きくなる経緯を見ると納得できる部分があるかもしれません。

What to Know About CrowdStrike, the Little-Known Cybersecurity Company Behind a Global Tech Outage - WSJ

https://www.wsj.com/tech/crowdstrike-cybersecurity-software-global-it-outage-3ca536f6



How and why CrowdStrike has a massive market share - NotebookCheck.net News

https://www.notebookcheck.net/How-and-why-CrowdStrike-has-a-massive-market-share.865374.0.html



CrowdStrikeを創業したのはジョージ・カーツ氏、ドミトリ・アルペロヴィッチ氏、グレッグ・マーストン氏です。特にカーツ氏は、1999年10月にセキュリティ企業のFoundstoneを創業し、大手通信企業のAT&TやMotorolaを顧客として抱えていました。

George Kurtz:プレジデント、CEO、共同創業者 | クラウドストライク

https://www.crowdstrike.jp/about-crowdstrike/executive-team/george-kurtz/



Foundstoneが2004年にMcAfeeに買収されると、カーツ氏はMcAfeeの幹部となり、最高技術責任者(CTO)まで務めました。アルペロヴィッチ氏は、McAfeeで脅威調査担当バイスプレジデントだった人物。マーストン氏はコンサルティング会社・Network in Motionの最高財務責任者(CFO)だった人物です。

カーツ氏がCTO在任中の2010年に、McAfeeを原因としてWindows XPが再起動ループに陥る不具合が大規模に発生。売上の総利益率が80%と好調だったMcAfeeは大きな損失を出し、Intelに買収されています。



3人は2011年にCrowdStrikeを創業し、2013年にサイバーセキュリティ市場に参入しました。特に人気を博したのは、高度なアンチウイルスサービスを提供する「CrowdStrike Falcon」で、政府機関との契約締結に役立つと評判だったとのこと。

さらに、2016年にはロシア政府系のハッカー集団「Fancy Bear(ファンシーベア)」などがホワイトハウスなど政府系機関をハッキングしようとした試みを検出したり、大統領選でヒラリー・クリントン候補のメールが盗み出された件に関与したハッカーを特定したりして、注目を集めました。

こうした成功を経て2019年に上場したCrowdStrikeは、市場価値110億ドル(約1兆7000億円)という規模に成長し、サイバーセキュリティサービス提供企業として最上位に位置づけられるようになったとのこと。

2023年には証券取引委員会がセキュリティインシデント関連の規制を厳格化したことにより、コンプライアンスを簡単に満たすためにCrowdStrikeのサービスの需要が高まり、さらに市場シェアを伸ばしました。その結果、市場シェアの15%を占め、市場価値は730億ドル(約11兆4200億円)規模で8000人の従業員を抱える、巨大セキュリティ企業になりました。

なお、今回の全面的停止のインシデントを受けて、CrowdStrikeの株価は7月19日(金)に11%下落しており、シェアにも悪影響を及ぼすものとみられています。

ちなみに、共同創業者で前CTOのアルペロヴィッチ氏は2020年に退職し、非営利の超党派シンクタンク「Silverado Policy Accelerator」を立ち上げています。また、CFOだったマーストン氏もすでに退職済みです。