既にある銀歯も、白い歯で再治療しやすくなっている(写真:Fast&Slow/PIXTA)

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診療報酬」が改定され、50代以上は、過去に治療した銀歯を保険適用で「白い歯」に替えるチャンスだ。最新の歯の素材と歯科治療費を抑えるコツを、専門家に聞いた。

「先日、歯科に行ったら『奥の銀歯ですけど、保険診療で白い歯に治せますよ』とすすめられて治療しました。今までのように銀歯が見えるのを気にせず、思い切り笑うことができます」

こうした声が読者から寄せられたように、6月の診療報酬改定で、銀歯を白い歯に変更する歯科治療の保険適用範囲が広がった。

阪本歯科医院(東京都)の院長・阪本正さんが語る。

「50代以上の患者さんの銀歯を見ると、かみ合わせが悪いという訴えがあったり、隙間が生じていたり、金属アレルギーが出てきたりなど、何かしらの不具合があるため、ほとんどの場合で、保険治療で白い歯に変更できています」

ここ数年でもっとも身近な“白い歯”となっているのが、CAD/CAMという種類だ。

「歯型のスキャンデータをコンピューターに入力し、3Dプリンターで製作した、ハイブリッドレジンというプラスチック素材の歯です。かぶせものとして、2014年に犬歯の奥にある2本並んだ小臼歯に対して保険適用が始まり、その後、適用される歯の範囲が拡大して、2020年にはほぼすべての歯が適用に。2022年からは詰めものとしても認められはじめ、今年6月の改定で、一部条件はあるものの、すべての歯のかぶせもの、詰めものでCAD/CAMが保険診療対象になりました」

白い歯にしやすくなったというが、現在、改めてどのような素材があるのか。また、歯科治療費はどのくらいかかってくるのか。阪本さんに解説してもらった。

「そもそも歯科治療では、初診の場合、初診料、歯周病検査、パノラマレントゲン写真などの費用がまずかかります。必要に応じて口腔内写真、歯磨き指導など、4千円ほどが必要な場合が多いです」

そうして虫歯治療となる。素材ごとのメリット、デメリットは表を参照してほしい。

私たちにとってもっともなじみがあるのは、やはり、銀歯だろう。

ロシア・ウクライナ戦争の影響で値上がりし、現在、治療には5千〜6千円ほどかかる。

「メリットは、金属なのでとにかく頑丈なことです。審美的にはかなりマイナス。50代の人が20代、30代のころに治療した場合はアマルガム合金という素材を使っているケースが多いですが、アレルギー反応を引き起こすこともあります。長年使っていると隙間から虫歯になることもあり、要注意です」

前出のように、治療の主流となっているCAD/CAMは、1本6千円程度だ。

「銀歯から変更する場合、1回目の診察で銀歯を外し、特に異常がなければ型をとり、仮歯を入れます。当院の場合は1週間ほどで新しい歯ができあがり、2回目の診察で入れます。何も問題がなければ、これで治療は終了です」

CAD/CAMは金属アレルギーの心配がないほかに、見た目に違和感がないのが大きなメリット。色も自然に近く、透明感もある。

「天然歯より硬度が低いために、かみ合う歯にダメージを与えにくい点はメリットですが、一方、歯ぎしりや食いしばりで欠けたり、長期間の使用で摩耗してしまうことも。素材の厚みを確保する必要があり、元の歯を大きく削る点もデメリットです」

昨年末から奥歯に限り保険適用されたPEEKも1本6千円ほど。

「強化プラスチック素材なので、強度に優れています。白い材質ですが、審美的には劣っていて、パッと見ただけで天然の歯ではないとわかるほど。でも、保険適用は目立たない奥歯に限るので、銀歯よりもこちらを選ぶ人が多いです」

以上は保険診療だが、自由診療のセラミックも選択肢の一つだ。

「見た目の問題はまったくありません。ジルコニアという硬い素材を使用しているので、歯ぎしり、食いしばりに強いですが、半面、セラミックの歯と当たる歯がすり減ったりすることもあるので、慎重にかみ合わせの調整をします」

自由診療のため費用ははっきり決まっていないが、1本あたり10〜15万円ほどといわれている。クリニックの立地や専門性に左右されるというので、目的に合わせて相談するのがおすすめだ。

■歯科治療費を少しでも抑えるには

歯科治療はどうしても高額なイメージがあるが、節約する方法はあるのだろうか。50代のベテラン歯科衛生士によれば、

「やはり、歯のダメージが大きいほど通院回数も増えるので、治療費がかさみます。クリーニング等で定期的に病院に通い、早期発見することが重要です。通院間隔が2〜3カ月あくと、『再初診』という形で初診料が加算される場合も。2カ月に1回程度で通院されることをおすすめします」

またレントゲン、歯周病精密検査など、ありとあらゆる検査をして収益をあげるという医師、治療の説明をあまりせずに、自由診療に誘導する医師もいるという。

さらに、「検査ごとの料金もある程度知っておき、本当に必要なのか聞くことも求められます」と注意喚起する。

「デメリットや費用も含めて、しっかりと説明して選択肢を与えてくれる医師を探すこと。また、初診料などは、患者さんの都合で一定期間が経過すると再発生する可能性もあるので、追加料金がないよう、予約を守ることも大事です」と阪本さんもアドバイス。

よいクリニックを選び、治療費を少しでも節約しよう!