低用量ピルの副作用はにはどんな症状がある?症状の発生時期についても詳しく解説!
低用量ピルを使用したいけれど「副作用が出るときいて不安になった」という方もいるかもしれません。
今回の記事では、低用量ピルの副作用が出やすいタイミング・起こりうる副作用と発生頻度・低用量ピルにより発症リスクが上昇する病気について解説します。
低用量ピルの使用を迷っている方も、ぜひ検討の際に参考にしてください。
監修薬剤師:
佐孝 尚(薬剤師)
北海道医療大学薬学部 卒業 現在はセンター薬局グループに薬剤師として勤務しながら株式会社イヤクルを創業。不動在庫医薬品取引プラットフォームアプリ【イヤクル】を運営。
保有免許・資格
薬剤師免許
低用量ピルの副作用はいつから出る?
低用量ピルの副作用について、重篤でないものの多くは3か月以内に治まるといわれています。
一方で、副作用がいつからみられるかについては明確な統計・研究がありません。
ただし、一部の効果は当日から得られるため、副作用も当日から現れる可能性があります。
特に、下記の症状は身体が低用量ピルの作用に慣れていない服用初期に起こりやすい症状です。
吐き気
倦怠感
頭痛
このような症状は徐々に軽くなっていくことが多いため、過剰に心配する必要はありません。ただし、吐き気・頭痛がとても強い・息苦しさを伴うなどの場合は、脳梗塞・静脈血栓症などの可能性もあります。
このような重篤なリスクについては記事後半の「低用量ピルのリスク」で詳しく解説するので、こちらも併せて確認してください。
低用量ピル服用に伴う副作用の発生頻度
副作用とは、薬の主目的とは異なる効果のなかで「好ましくない効果」のことです。
低用量ピルの長期投与臨床試験では、さまざまな副作用が報告されています。
ここからは、副作用としてよくきかれる症状・まれに現れる症状などを紹介します。
吐き気
低用量ピルの副作用として、最も多く報告されているのが悪心・嘔吐です。症状の強さには差があるものの、服用した方の30%ほどに悪心・嘔吐がみられます。
吐き気が現れる理由は、急激なホルモンバランスの変化です。ピルの成分には女性ホルモンが多く含まれ、ホルモン量の変化により体内は妊娠中と似た環境になります。
そのため、吐き気をはじめとする軽いつわりのような症状が現れることが多いです。つわりが現れる妊娠初期には、吐き気のほかに下記のような身体・体調の変化がみられます。
頭痛
乳房の張り
乳房痛
食欲亢進
倦怠感
眠気
上記は低用量ピルを服用した場合にも副作用として現れやすい症状です。
特に乳房の張りを自覚した方は約20%と多く、次いで頭痛が約15%、乳房痛が約12%の方にみられます。
いずれも症状が起こるメカニズムは吐き気と同じで、身体が低用量ピルに慣れる3ヵ月目までには症状が落ち着く場合が多いです。
ただし「吐き気だけでなく嘔吐してしまう」という方は、症状が日常生活の妨げになるだけでなく、薬を十分に吸収できず効果が得られない可能性もあります。そのため、症状が強い場合は処方を受けた医療機関に相談することをおすすめします。
眼のかすみ
低用量ピルを服用すると、まれに目のかすみ・視力低下などが現れます。割合としては服用者の0.1%と低率ですが、重篤な原因が隠れている場合もあるため注意が必要です。
低用量ピルに関連して視力・視野に変化が起こる主な原因は下記の3つです。
角膜厚の変化
網膜静脈閉塞症
脳梗塞
低用量ピルの軽微な副作用として、角膜厚の変化があります。角膜とは黒目の表面にある透明な膜で、この厚みが変化すると視力低下・目のかすみを自覚することがあります。症状は軽いことが多く、緊急性は低い副作用といえるでしょう。
一方、網膜静脈閉塞症・脳梗塞を疑う症状があれば早めの受診をおすすめします。
まず、網膜静脈閉塞症は目の奥にある網膜の血管が詰まる病気です。また、脳梗塞は脳の血管が詰まる病気で、いずれも血栓(血のかたまり)が原因となります。
網膜静脈閉塞症の場合は部分的な視野の欠け・視力低下が主な症状です。また、脳梗塞による視力障害には視力低下・半側空間無視(視界の左右いずれかがみえなくなる)などがあります。
動悸
低用量ピルを使用し始めると、ホルモンバランスの急な変化により自律神経が乱れて、動悸を感じることがあります。このような動悸は低用量ピル服用者の約0.3%にみられ、他の副作用と同じく徐々に落ち着くと考えられます。
ただし、後述する静脈血栓症・虚血性心疾患の影響で動悸が現れる場合もあるため注意が必要です。もし、動悸とともに急な息切れ・胸痛・呼吸苦などを感じた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
肩こり
肩こりも動悸と同じく、ホルモンバランスが崩れることで起こる副作用です。肩こりを自覚する方は低用量ピル服用者の0.3%以下と多くはありません。
低用量ピルによる肩こりも、通常の肩こりと同じく血行不良・筋肉のこわばりが主な原因です。そのため、背中・肩周りを温めて血行改善・リラックスに努めることで症状が和らぐでしょう。
皮疹・発疹
低用量ピル服用後、約0.6%の患者さんが湿疹・皮膚のかゆみを訴え、約0.2%の方に蕁麻疹がみられています。薬の副作用による発疹は薬疹と呼ばれ、アレルギー反応の可能性もあるため注意が必要です。
なお、薬疹が出てからも原因となった薬を飲み続けることで、さらに強いアレルギー反応が出る場合があります。発疹・かゆみを自覚したら、次の服用をする前に医療機関へ相談し、受診・服用についての指示を仰ぎましょう。
低用量ピルのリスク
ここまで紹介したように、低用量ピルにはさまざまな副作用があります。そのなかでも特に注意が必要なのが、血栓ができやすくなる作用です。
ここからは、低用量ピルによる血栓症のリスク・血栓により引き起こされる疾患を紹介します。また、最後には「低用量ピルを始めてから気になる」という方が多い不正出血・体重増加についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
静脈血栓症
血栓(血管内の血のかたまり)が血流を妨げることで、いくつかの重篤な病気につながる可能性があります。血栓による病気として代表的なものには、静脈血栓症があります。
低用量ピルを服用していない女性と比較した場合、服用している女性の静脈血栓症リスクは3~5倍です。ただし、服用していない方の年間発症例が10万人に5人程度であることを考えると、件数としては多いものではありません。
静脈血栓症のなかでも問題となるのが、深部静脈血栓症です。
深部静脈とは、腰のあたりから2つに分かれ、左右それぞれ脚の中心を通っている太い静脈です。深部静脈血栓層になると、下記のような症状が現れます。
足のむくみ・痛み
足の血色不良
深部静脈血栓では、血栓が肺・心臓へ戻っていく血液の流れに乗って肺の血管に詰まることがあります。
この状態を「肺塞栓症(エコノミークラス症候群)」と呼び、主な症状は突発的な呼吸困難・胸痛です。
脳卒中
脳卒中とは脳血管疾患とも呼ばれ、脳の血管に障害が起こる病気の総称です。そのなかでも、低用量ピルの服用により虚血性脳卒中(脳梗塞)のリスクが高まるとされています。
健康で喫煙歴のない女性が低用量ピルを服用した場合、服用していない集団と比較すると脳梗塞の発症リスクは2倍ほどです。
脳梗塞を発症すると、下記のような症状が現れます。
ろれつが回らない
言葉がうまく出てこない
身体の左右どちらかが麻痺する
バランスが取れず立っていられない
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは、動脈硬化・血栓などにより心臓の血管が狭くなり、心筋に十分な酸素・栄養が行きわたらなくなる病気です。
非喫煙者に限っては「低用量ピルを服用しても虚血性心疾患のリスクは有意に上昇しない」というデータがあります。
しかし、低用量ピルを服用している方は血栓症のリスクが高いことから、虚血性心疾患になりやすい可能性はあるでしょう。このような病気を避けるため、医療機関では事前の問診をもとに「血栓症のリスクが高く低用量ピルの処方をできない」と判断する場合があります。
処方を受けられない方の例は、下記のとおりです。
35歳以上で1日15本以上の喫煙がある方
血栓症の家族歴がある方
片頭痛・心疾患・高血圧などの既往がある方
血栓による病気は死亡につながるケースもあるため、低用量ピル服用中に静脈血栓症・肺塞栓症・脳卒中・虚血性心疾患と疑われる症状に気付いたら、すぐに受診することをおすすめします。
不正出血
不正出血とは、通常「月経以外の出血」を指します。ただし、低用量ピル服用中は休薬期間に起こる出血を月経ではなく「消退出血(しょうたいしゅっけつ)」と呼びます。
そのため、この消退出血以外の出血が不正出血です。低用量ピル服用中の不正出血としては、下記の2種類が考えられます。
破綻出血
予定外の消退出血
破綻出血とは、女性ホルモンの作用により子宮内膜が一定以上厚くなって自然に剥がれ落ちるものです。
一方、服用期間中に消退出血が起こる理由には、薬の飲み忘れ・体調不良(ひどい下痢や嘔吐)などにより予定外に体内のホルモン量が低下することが挙げられます。こうした不正出血は体調に大きな影響はありません。
しかし、月経不順の改善・月経日の調整を目的として低用量ピルを服用し始めた方にとっては不安な症状でしょう。
多くの不正出血は副作用と同じく3か月以内に落ち着きます。しかし、服用開始から3ヵ月以上経ち、飲み忘れなどがないにもかかわらず不正出血が気になる場合は、服用薬を変更できる場合があります。
まずは、担当の医師に相談してみましょう。
体重増加
低用量ピル服用者の2%ほどに体重増加がみられます。しかし、ピル自体に太りやすくなるといった作用はありません。
体重増加の原因となる可能性があるのは、低用量ピルの副作用である食欲亢進・むくみです。低用量ピルを服用すると、体内にナトリウムが溜まりやすくなり、結果的に体内の水分量が増えてむくみにつながります。
むくみは低用量ピル服用者の3%程度にみられる副作用で、基本的には心配ありません。ただし、体重が短期間で変化するほどむくんだ・痛みや血行不良を伴うといった場合は静脈血栓が疑われます。症状に不安があれば、医療機関に相談しましょう。
編集部まとめ
低用量ピルは女性ホルモンを主な成分としており、服用を始めると体内のホルモンバランスが大きく変化します。
この変化に体が慣れるまでの3ヵ月程は、低用量ピルの副作用として吐き気・頭痛・倦怠感などを自覚する方が多いでしょう。
多くの副作用は服用を継続するうちに落ち着いてきます。ただし、副作用のなかには血栓症など命にかかわるものもあるため注意が必要です。
低用量ピルの処方を受ける際は医師の説明をよくきき、気になる症状があれば早めの受診を心がけましょう。
参考文献
角膜の病気 | 公益社団法人日本眼科医会
薬疹 | 埼玉県皮膚科医会
むくみ-気になるからだの危険信号- | 特定非営利活動法人日本成人病予防協会