【#東京ゲソ天ブルース】ゲソ天蕎麦の系譜を追う…マニア垂涎の一杯を東京・品川区の立ち食い蕎麦店で実食した!

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深夜の料理系番組って、危険ですよね。画面いっぱいに映し出される料理の画像は、どう見ても「ほらほら、食べたいでしょ!」と言っているようにしか見えませんし、こんな時間に見ちゃだめだと思ってもつい見てしまうものです。フジテレビの深夜に放送されていた「東京ゲソ天ブルース」は、その名の通りゲソ天そばにスポットを当てた画期的(?)なグルメ系番組でした。こんなの見せられたら食べたくなっちゃうよ、ということでさっそく食べてきました!

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六文そば中延店の「げそ天そば」

※番組では「ゲソ天」の表記でしたが、今回訪問した六文そば中延店さんでは「げそ天」の表記でしたので、六文そば中延店に関する部分は「げそ天」で統一しています。

【今回のそば】
・いかげそ天そば 600円

少し風もある晴れた日曜日、休日ですがちょっと早起きして東急大井町線の中延駅へ行ってきました。「東京ゲソ天ブルース」で紹介していた6店舗の中で、わが家から一番近いのが中延にある「六文そば中延店」だったからです。

録画しておいた別の番組を深夜1時過ぎまで見ていたその日、さてそろそろ寝ようと再生を停止した時でした。いきなり画面に大きく映ったそばのどんぶり、そしてナレーションの「ゲソ天そば」という言葉。え?何この番組?とリモコンを持った手が止まり、そのまま引き込まれてしまいました。

決して狙って見たわけではないのに、目の前に展開されるこだわりのゲソ天そばの世界に捕まってしまい、そのまま番組終了の25:55までテレビの前から離れることができなかったのです。

ということで中延にやってきました。今の家に引っ越す前は比較的近かったので時々訪れていた中延ですが、もう20年近くも前のことですので、まるで知らない町に来たようです。地図でだいたいの場所は確認しておいたのですが、駅改札をちょっと出たらすぐ看板が見えて一安心。



いかにも立ち食いそば屋の風格、しかもかなり強めの昭和感です。東京によくあるチェーン店の立ち食いそば屋とは明らかに一線を画す佇まいで、ちょっとした緊張感さえ覚えました。自動ドアなどはなく、店の入り口は開けっ放しで、すでにお客さんが4人いるのを確認。6人ほどのスペースがあると聞いていましたので、今なら入れるぞと迷わずに店の中へ。

入って右側には厨房を囲むようにL字のカウンターがあり、そこが空いてましたのですぐに「いかげそ天そば、お願い致します」と注文。そしてセルフの水をコップに注ぎ、そばが出来上がるのを待ちます。厨房には女性がお二人いました。きっと開店から閉店までお二人で切り盛りされているのでしょうね。

2分もかからずにそばが出てきましたので、ポケットに用意しておいた千円札をトレイに乗せ、いかげそ天そばのお釣り400円を頂きました。L字カウンターの向かい、左の壁際にも2~3人程度の狭いカウンターがあるのですが、写真を撮りたいのと厨房の真ん前は人の動きがあるので空けておいた方がいいかもと思いましたので、丼を持ってすぐにそちらへ移動。狭いですが、ちょっと落ち着きました。



見るからに、なんとも見事なげそ天そばです。見た目の8割ほどを占めるげそ天、そして刻んだねぎだけというとんでもなくシンプルな構成は、無駄をそぎ落とした立ち食いそばならではのものです。そこへ、カウンターに置かれていた七味を少々振りかけます。



あくまでわたしの好みですが、天ぷらそばには七味がよく合います。なので、汁やそばではなく天ぷらの上にかけるのが流儀(?)です。さて、まずは汁が染み切らないうちにメインのげそ天を一口。よく揚がっているので、結構な歯ごたえと共にちょっと染みた汁の味と油の味が口の中で混ざり合います。これぞ、まさにげそ天。げそを切らずにそのまま揚げて提供している店がよくありますが、この店はげそを一口大にカットした状態で揚げています。なのでサクッと嚙み切れて、あとは口の中でげそを味わうことができるという理に適ったげそ天です。





食べ応えのあるげそ天を楽しみながら、合わせるようにそばをすすります。しっかりとした歯ごたえの感じられるおいしいそばで、げそ天にもよく合います。聞くところによると、六文そばという屋号の「六文」は信州真田(あのNHK大河ドラマ「真田丸」で一躍有名になりました)の六文銭から取ったものとか。もしかしたら信州そばなのかな、なんて思いながら半分くらい食べ進んでいくと、ちょっと気持ちも落ち着いてきましたので店内を観察。と言っても他のお客さんがいますので、迷惑にならないようにです。まず目につくのが自分の目の前の壁に貼られている、「名物 げそ天 600円」という貼り紙です。



よく見ると、若干そばの汁が飛んだような跡も見えます。ここで気づいたのが、「げそ天」という表記。「げそ」と「ゲソ」、どちらが正しいということはなく、10本あるイカの足を日本では下足と書いてげそ、もしくはゲソと呼びます。動物の分類学的には足なのに、図解では腕と書かれていたりしてややこしいですよね。胴体部分はいろいろな料理に使われるのに、げそは市場でもタダ同然でしたので、それを利用したのがげそ天です。SDGsはちゃんと以前からあったんですね。しかもおいしいときています。日本人は塩辛や干物、いかめしなどあらゆる加工法でイカを食べるので、実はイカの消費量世界一です。外国ではタコ同様に不吉とされて食べない宗教や地域もありますので、おいしいのにもったいないなぁとも思います。



もちろんいかげそ天そばだけでなく、とり天やらおにぎりやら他のメニューもあります。わたしより先に来ていたお客さんはわたしが食べている間に全員帰り、わたしが帰るまでに新たに4人来店。その全員がいかげそ天そばを注文していたのですが、お一人だけさらにごぼう天を追加トッピングしていました。そうでした、立ち食いそばには追加トッピングという技がありましたね。これは次回チャレンジです。



ここでふと、メニュー以外の貼り紙に気づきました。空調工事のため13:00の閉店になるとのことですが、驚いたのは訪れた日が丁度この工事の日。もし寝坊して午後に行こうなんて思っていたら、店に入れなかったかもしれません。よかったと思いつつ残ったそばを食べつくし、汁も色は濃いのにおいしかったので、いつものように飲み干しました。健康にはよくないですが、おいしいものには勝てません。



そばはもちろん普通の量でしたが、げそ天のせいか結構お腹いっぱいになりました。最後は丼をカウンターの端にある返却口において、「ごちそうさまでした」と言って退店。滞在時間、わずかに10分程度でしたがおいしいいかげそ天そばを頂きました。大満足です。

げそ天そばを提供する店は都内にもいくつかありますが、中延の六文そばは、げそ天を広めた中心的存在でもあります。運営元が変わるなど変遷はあるものの、現在もおいしいげそ天そばを提供し続けてくれていることに感謝です。

立ち食いそばは日本のファストフードですが、その起源は江戸時代のそばの屋台にあります。時々時代劇や落語に登場しますので、大抵の人はなんとなくでもイメージがあると思います。せっかちな江戸っ子はさっと手軽に食べられるそばや寿司を好んでいたと言いますが、それが現代にまで受け継がれているというのはそれだけニーズがあるということです。安くて早くておいしい、まさにファストフードです。

安いからという理由で始められたげそ天も、30年前と比較すると仕入れ価格は4倍になっているとのこと。しかもつい最近ニュースで知ったのですが、いかげそは昨年より10%も価格が上がっており、他の材料も軒並み値上がりしているので立ち食いそば屋の経営はかなり苦しいとのことです。原料費が上っているのだから値上げも仕方ないことではありますが、今でも安価で提供し続けている店の努力をわたしたちはもっと理解しなければいけないのかもしれません。他の安価な食材に変えてもいいのに、あえてげそ天を提供し続ける、そのこだわりがわたしたちを魅了し続けているのですから。

番組ではげそ天にこだわって提供し続ける6店舗を紹介していましたが、そこにはそれぞれの想いやこだわりがあり、だからこそ60分のドキュメンタリーに仕上げることができたのだと思います。わたしのように、この番組を見てげそ天そばを再認識して実際に店を訪れた人が結構いると聞きます。これだけ飽食の時代と言われる中で、あえてコアなげそ天そばにこだわることの意味を考えさせられる番組でもありました。

小難しいことは抜きにしても、とにかくおいしいげそ天そばです。

六文そば以外にもげそ天そばを提供している店がありますので、ぜひ一度食べに行ってみてください!

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