バリエーション豊富なチャントで声援を送ったウルグアイサポーター。写真:浅田真樹

写真拡大

 ウルグアイサポーターが、バリエーション豊富なチャントを朗々と歌い上げれば、アメリカサポーターは、USAコール一本やりで応戦する。

 カンザスシティにあるアローヘッド・スタジアムは、決戦を前にした熱気の中にも、どこか和やかな、これから始まる試合を楽しもうという雰囲気が漂っていた。

 ところが、肝心の試合はというと、少しばかり後味の悪い決着になったと言わざるを得ない。

 コパ・アメリカ2024のグループC最終戦、アメリカ対ウルグアイは、結果から言えば、ウルグアイが1−0で勝利した。

 決勝トーナメント進出のためには、最悪でも勝点1、できれば3が欲しかったアメリカは、結局1勝2敗でグループステージ敗退。引き分けでもよかったウルグアイは、3戦全勝で悠々の1位通過となった。

 前半にして両チームに負傷交代者が出るほど、激しい攻防が繰り広げられたこの試合。問題のシーンが起きたのは、66分である。

 ウルグアイが右サイドで得たFKを、キッカーのニコラス・デラクルスがゴール前へ送ると、ロナウド・アラウーホがヘディングシュート。これはアメリカのGKマット・ターナーに止められたものの、リバウンドをマティアス・オリベラが押し込んだ。

 水色のユニホームが歓喜するピッチとスタンド。だが、対照的に記者席は、落ち着いた、というより、少々白けた空気に包まれていた。モニターで確認した映像では、“明らかなオフサイドに見えた”からだ。

 しかしながら、長い時間をかけてVARチェックが行なわれた末、判定はゴール。結局、これが決勝点となり、ウルグアイは勝利したのである。
【動画】物議を醸したウルグアイの決勝点。ピッチとVARルームとの交信音声、ゴール認定に至るまでの“作業手順”を映像で公開
「映像ではオフサイドに見えるが、どんな説明があったのか」

 試合後の記者会見では当然、アメリカの記者から質問が出た。

「かなりクレイジーだ。理解できない」

 アメリカのグレッグ・バーホルター監督は、吐き捨てるように答えている。

 では、なぜ映像では明らかなオフサイドに見えたプレーが、ゴールと判定されたのか。

 試合後、CONMEBOL(南米サッカー連盟)は、ピッチとVARルームとの交信音声とともに、ゴール認定に至るまでの“作業手順”を映像で公開し、判定理由を説明している。

 それによれば、ロナウド・アラウーホがヘディングした瞬間、確かにマティアス・オリベラの身体は、オフサイドライン(後ろから2人目の選手)となるクリス・リチャーズの身体よりも明らかに前に出ている。

 しかし、よく見ると、リチャーズの左足が自陣ゴール方向へ大きく踏み出されているのが分かる。

 公開された映像の中でも、まずはリチャーズの足の位置に合わせてラインが引かれ、続いてマティアス・オリベラの膝に合わせてラインが引かれ、その上で2本のラインは重なっているとして、ゴールが認められている。

 その解説によって、なるほど身体の位置から受ける印象と、実際のオフサイドラインとはずいぶん異なることは理解できた。

 しかし、それでもなお、ゴールの判定はストンと腑に落ちるものではなかった。

 そもそも鮮明とは言い難い拡大映像を頼りに、人間の手によって引かれたラインの位置は、どれほど正確なのか。

 そんな疑問も含め、釈然としないものが残ったのは確かだ。

 このゴールがなければ、アメリカが勝っていたとは言い切れない。試合内容に照らせば、むしろ、その可能性は低かったのではないかとすら感じる。

 だとしても、試合前のワクワクした雰囲気を思うと、もっとスッキリとした決着が見たかった。それが率直な感想である。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)