元ピーマンズスタンダードの吉田寛さん

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 かつて芸能界で売れようと闘っていたが、あることをきっかけに引退し、新天地で新しい花を咲かせようと奮闘する人がいる。今年、所属事務所を離れてフリーランスに転身したピン芸人のみなみかわさんの元相方で、元ピーマンズスタンダードの吉田寛さんは、2019年にコンビ解散と同時に芸人を引退。テレビ番組の制作会社に転職し、AD・チーフADを経て、現在はAPを務めている。
 前回のインタビューでは芸人をやめて裏方にまわった理由などを聞いたが、インタビュー後半ではやめたからこそわかる人気芸人の秘密を聞いた。番組制作6年目を迎えた吉田さんの現在地とは?

◆裏方に回ってわかった、自分たちがテレビに呼ばれなかった理由

――YouTubeなどのセルフメディアが発達していますが、いまだにテレビの影響力は大きくて、出たい芸人さんもたくさんいると思います。テレビに呼ばれる芸人さんの特徴はあるのでしょうか?

吉田寛(以下、吉田):身も蓋もないことを言いますが、「台本を守る」芸人ですね。特に、昨今増えている情報バラエティ番組の場合は、伝えたい情報を絶対に言ってもらわないと困ります。台本通りだと面白くないからって無理やりしゃべらなくていいですし、強引にボケなくてもいいです。

 もちろん、芸人として爪痕を残したいのもわかるんですが、制作側としては、台本にある情報はきちんと伝えてもらい、その上でボケてもらえると嬉しいですね。

――言ってしまえば、「台本=番組の命」みたいなものなんでしょうか?

吉田:その感覚に近いかもしれないですね。というのも、ディレクターが何週間もかけて何回も書き直して、総合演出のチェックを受けて、やっとの思いで仕上げた台本なのに、本番で芸人が台本と全く関係ないことをしてしまう。何とか頑張って編集するけど、仕上がったVTRを見た総合演出から「台本通りになっていない」と指摘される。そこで、「実は、その映像・セリフは撮れてないんです」と伝えると、ディレクターの能力が問われてしまうんです。

 もし、ランジャタイさんみたいに個性的なキャラがちゃんと浸透していて、演出的にもそれでOKとなっていれば問題ないんですが、それは本当にレアケースです。ピーマンズスタンダードは台本通りにできなかったから、2回目のロケの仕事が来なかったんだと、裏方に回ってすぐに分かりました。

◆伝説のロケの達人に「鳥肌が…」

――吉田さん的に、ロケがうまいと思う最近の芸人さんは?

吉田:いろいろ思い浮かぶ人はいますし、ぶっちゃけ番組のカラーによっても求められる素質は違ってくるんですが……。僕が見てきた中では、鬼越トマホークさんですかね。破天荒なようで、実はロケをちゃんとやってくれます。見てて、「そりゃ呼ばれるわ」と思いました。

あと、すごすぎて鳥肌が立ったのは彦摩呂さんです。まず、大きな声で「今日呼んでくれてありがとう!」って現場に入ってくるんです。食べてる時も、「美味しい!カメラさんも食べたそうにしてるやん! ADの子も(仕事の手)止めて、食べ食べ!」ってまわりを巻き込んでいくんです。芸能界が華やかだった頃にデビューされてるからか、現場での振る舞い方が、僕らの世代と全然違うんですよね。上手くまわりを巻き込んで楽しい空気感を作るから、いい仕事ができるんだなと、あの時は震えました。

◆テレビに呼ばれるイレギュラータイプの芸人

――最近だと、安田大サーカスのクロちゃん、女芸人のやす子さんをテレビでよく見る気がします。

吉田:クロちゃんは松竹の先輩ですし、今でもたまに飲みに行かせてもらいますが、確かに驚きました。完全に『水曜日のダウンタウン』(TBS系)という番組との出会いがあったからでしょうね。