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今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人である現役コンサルタントのTACT氏に、コンサル業界が人気となっている理由を聞いた。

新卒就活生からコンサル業界が人気の3つの理由

――TACTさんは、コンサル業界を志望する学生たちの相談に乗ることも多いと聞きました。就活生からコンサル業界が人気になっている理由はどんなところにあると思いますか?

TACT氏:主に3つの理由があると思います。1つ目の理由は給料がいいことです。1年目からしっかり働いて、しっかり稼ぎたいという人がこの業界を志望していると思います。

 2つ目の理由は、普遍的に役立つビジネススキルや経験を得られることです。コンサル業界を志望している人の中には、独立志向の強い人が多く、この業界で長く働くというよりも、ビジネスの修業の場としてコンサル業界を選ぶ人も少なくありません。

 3つ目の理由は、まだ自分の仕事の軸を定め切れていない人が、自分探しのためにコンサル業界を志望していることです。将来的に自分がどんな仕事を専門にしたいのか、具体的には定まっていないけれど、とにかく仕事は頑張りたいという人です。

 コンサル業界からだと、幅広い業界に転職しやすいという面があります。短期間で色々なビジネスを経験できるので、「自分が何をしたいのかわからない」という人が、一旦コンサル業界で働きながら、自分にあったキャリアを考えようとしているのだと思います。

短期間でいくつものビジネスを経験できる

――実際にコンサルタントの立場から、コンサル業界で働く魅力はどのように感じていますか?

TACT氏:多種多様なビジネスを経験できるのが、コンサルタントとして働く大きな魅力だと思います。

 コンサルティングファームの場合ですと、数ヵ月ごとに異なるクライアントの仕事を担当することになります。クライアントはメーカーだったり、不動産だったり、国や自治体のこともあります。コンサルティングファームによっては2つ以上のプロジェクトを掛け持ちすることもあります。

 そのため、色々なビジネスを短期間で一気に経験することができます。

1年目から企画や経営の仕事に携われる

TACT氏:また、新卒1年目から企画や経営に直接携わる仕事ができるのも魅力の1つです。

 就職活動をしている学生の中で、商品やサービスを企画したり、マーケティング戦略や経営戦略を担う部門で働きたいと思う人は多いのではないでしょうか。

 ですが、一般的な事業会社に就職すると、すぐに希望する部門で働くことが叶わないケースは多いと思います。

 例えばメーカーであれば、営業所や工場といった現場で、自社のビジネスをじっくりと学び、数年後に希望の部署に異動できるか適性が試されることになります。いわゆる下積みのような期間を過ごすことになるわけですね。

 私は学生時代から街づくりの仕事に興味があって、デベロッパーに就職することも考えていました。ですが、デベロッパーに就職してもすぐに企画系の部門で働ける可能性は低く、少なくとも数年間は現場の部門で働かなきゃいけない可能性が高いとわかっていました。

 結局コンサルティングファームに就職したことで、非常に早い段階から、デベロッパーの企画部門の方々と一緒に仕事をする機会を得られて非常に良かったなと思っています。現在では、街づくりを自分の専門的な領域として、コンサルティングを行うことができています。

「上司ガチャ」とは無縁の環境

――コンサル業界の働き方、働く環境について、特徴的だと感じる点はありますか?

TACT氏:「上司ガチャ」という言葉がありますよね。世の中には、上司の指示が絶対で、上司が明らかに間違ったことを言っていても、立場の壁があってなかなか反論できないという職場は数多く存在すると思います。

 コンサル業界は、上司の理不尽さを感じている人が少ない業界だと思います。

 というのも、コンサルタントの場合、ロジックが通っているかどうかが仕事を遂行する上で最も重要で、自分が正しいことを言っていれば、上司は納得してくれます。

 むしろ、上司から細かく指示されるというより、自分自身でしっかり突き詰めた質の高いアウトプットが求められます。

フレキシブルな働き方が普及している

TACT氏:そのほかには、1年目からフレキシブルな働き方をできることも大きいです。

 私はライフワークとして富山のお祭に携わっているのですが、1年目から富山でリモートワークをすることができました。

 また、コアタイムが設定されているものの、その時間は短いので、自分の働きたい時間に働くことができます。そのため、富山で夕方から地域の人との飲み会がある日は、朝6時頃から仕事を始めて午後3時頃には仕事を切り上げるような働き方も可能でした。

――なぜ、このような働き方が可能なのでしょうか?

TACT氏:おそらく事業会社だと、部署やチーム全体で仕事を共有することが多く、担当者それぞれの仕事の領域を明確に切り分けることが難しいことも多いのだと思います。

 そのため、自分が頑張って仕事をいち早く終わらせたとしても、新たに仕事がふってくるようなことが起こります。

 一方コンサルの場合は、1つの仕事をみんなで終わらせるというよりも、タスクごとにそれぞれのメンバーの仕事をきっちり振り分けて仕事を管理しています。頑張って損をするという感覚はありません。

膨大なインプットを楽しめる人がコンサルに向いている

――コンサルタントに向いている人はどんな人だと思いますか?

TACT氏:知的好奇心がある人が向いていると思います。

 コンサルの実務は、自分が社外のパートナーとして、その道のプロが悩んでいる問題を一緒に解決していくことです。プロジェクトに割り当てられるたびに、その業界のビジネスを知るために、短期間で膨大なインプットが必要になってくるわけです。

 特に外資のファームだと、1ヵ月やヵ月で新たなプロジェクトに割り当てられることもありますし、場合によっては金曜日に「来週の月曜から新しいプロジェクトが始まるから、この業界のことを知っておいてね」なんて言われることも。

 プロジェクトに関する資料を一気に目を通して、業界に関する本を何冊も読み漁ります。その業界の専門家でなくても、最初はある意味付け焼刃で、プロジェクトに参加しなければいけません。

 短期間で新しい知識をインプットしなければいけないプレッシャーがあるので、それを楽しめるかどうかは重要だと思います。

 新しいビジネスを知ることが好きな人は、何よりも楽しめる仕事だと思いますし、そうではない人にとっては、ずっと学び続けなきゃいけない「生き地獄」になるのではないでしょうか。

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