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●東京旅行でわざわざ行ってみたい珠玉の定食屋とその料理とは?

 日本全国に定食屋はゴマンとありますが、「旨い!」と思わずうなってしまう定食を出す店はそう多くはありません。メイン料理はもちろんのこと、極上の白飯、さらに汁もの、付け合せと細部に至るまで手抜かりなし。そんな絶品定食を出している東京の“三つ星定食屋”を厳選してご紹介します。

荻窪『ことぶき食堂』の「ブタカラ定食」

『ことぶき食堂』名物の「ブタカラ定食」

 中央線・荻窪駅は、駅周辺に目移りするほどお店がたくさんありますが、『ことぶき食堂』は駅から歩いて10分ほどと、やや遠目の場所にあります。にもかかわらずお客さんが途絶えないのは、ひとえに美味しいから。

荻窪駅からやや遠いが、行く価値アリの『ことぶき食堂』

 メニューは生姜焼きやアジフライなどの定食やラーメン、チャーハンなどいろいろありますが、ここで食べて欲しいのは名物の「豚の唐揚げ定食」、通称“ブタカラ”です。

“ブタカラ”は、薄~い片栗粉の衣に覆われており、見るからにカリッとしています。皿には、まるで組み体操のような塩梅で、下のブタカラが上のブタカラを支え……といった具合にこんもりとした山を形成しています。

カリッカリの衣の中は、柔らかい豚肉

 食べてみると、ニンニクとショウガ、そして香ばしい醤油の香りが鼻を抜けて、サクッと音を立ててふわりと噛み切れます。硬くなりがちな豚肩ロースなのに、実に柔らか。醤油ダレにはほんのりと酸味が加わっていて、油っぽさを中和してくれています。筆者はこんな美味しい豚の唐揚げをほかで食べたことがありません。

定食に付くごはんも美味しい!

 そして、このブタカラを受け止めるご飯がまた絶品。お米1粒1粒がツヤツヤと輝き、みずみずしく、粒の硬さの塩梅も完璧。ご飯にブタカラをワンバンドさせて食べるのもオススメです。

 カツオ節や煮干しのお出汁がしっかり効いた味噌汁や、お新香のぬか漬けも塩味・旨味のバランスが最高。文句のつけどころないパーフェクトな定食です。

●DATA

店名:ことぶき食堂

住:東京都杉並区桃井1-13-16

駒沢大学『かっぱ』の「煮込み」定食

『かっぱ』名物「煮込み」

 東急田園都市線・駒沢大学駅から徒歩15分の場所にある『かっぱ』は、定食屋としては珍しく、営業は夜のみ。しかもお酒はありません。

 ここを訪れた客の誰もが頼むことになるのが「煮込み」。というのも、入店してカウンターに着席するなり、注文する間もなく煮込みの皿がサッと出てくるのです。つまり、『かっぱ』は、夜の煮込み一択の店なのです。

 さらに、煮込み登場と同時に、お店の方にごはんの量を聞かれます。

『かっぱ』のごはんは大、中、小があります。こちらは中。それでも量が多い!

 ちなみにご飯「中」でこの量。写真だけではその量が伝わりにくいと思いますが、びっくりするほど多いです。「小」はその約2/3程度の量で、「大」は中と小を合わせた量。いくら大食いでも「大」を注文するなら覚悟が必要なレベル。すごい量です。

牛の赤身を使った「煮込み」

「煮込み」は、牛スジでも牛モツでもなく、牛の赤身を使っています。白味噌をベースにした数種類の味噌がブレンドしてあり、牛肉のほか、こんにゃくや豆腐が入り、刻んだ生姜がピリッとしたアクセントになっています。

 美味しそうだけど、煮込みと白飯だけなの? と思うかもしれませんが、煮込みは言うに及ばず、白飯がとんでもなく旨いので、お酒は不要。この旨さだけで酔えるくらいです。

 そのご飯はガス炊き。炊き上がるとすぐにおひつに移し、適度に水分を抜いて、絶妙な銀シャリに仕上げています。

こちらは大根のお新香

 別オーダーですが「お新香」も食べて欲しいです。夏場はキュウリ、冬場は大根。丁寧に漬け込んだお新香は、これまた銀シャリの美味しさをさらに引き上げてくれます。

●DATA

店名:かっぱ

住:東京都世田谷区駒沢5-24-8

二子玉川『たぬき』の「チキンチキン」定食

『たぬき』の「チキンチキン」定食

 次に紹介するのは、東急田園都市線・二子玉川駅から徒歩6~7分ほどの場所にある『たぬき』です。メニューは、サバやアジなどの魚系から、からあげ、生姜焼きなどの肉系と、いろいろな定食があります。どれを食べても美味しくて、ボリューミー。

 とりわけ開店後、早めに完売してしまうのが、「牛すじ煮込み定食」。そしてもう1つの人気メニューが「チキンチキン定食」です。

『たぬき』の「チキンチキン定食」、通称“チキチキ”

「チキンチキン定食」は、鶏から揚げとささみカツの2種類が楽しめる定食です。巨大な鶏のから揚げと、ささみカツ1枚、そして盛りの良いご飯、たっぷりのキャベツが大皿に載って登場します。

 から揚げは、カリッカリの衣、ジューシーな肉汁があふれます。また、ささみカツの衣もサクッサクでお肉はふっわふわ。そして、やっぱりなんといってもご飯が旨いのなんの! 良い定食屋はやっぱりお米が美味しいのです。

●DATA

店名:たぬき

住:東京都世田谷区玉川3-15-12 玉川3丁目マンション110

経堂『洋食バル ウルトラ』の「ハンバーグステーキ」

『ウルトラ』のランチ定食「ハンバーグステーキ」

 小田急小田原線・経堂駅そばにある『洋食バル ウルトラ』。ランチ時には行列が絶えない人気店です。

『ウルトラ』のランチメニュー[食楽web]

 ランチメニューは、ハンバーグや豚の生姜焼き、白身魚フライ、エビフライなどの定食(ご飯おかわり自由・味噌汁付き)で、1100円~1200円。今や銀座などにある有名な洋食屋さんだと「ハンバーグ定食」は2000円前後するので、良心的な価格です。しかし味に関してはまったく引けを取りません。

理想的なハンバーグの焼き加減

 ハンバーグは、表面に適度な焦げ目がついており、ふっくらプリッとしています。ソースは軽めのデミグラスソース。月並みな表現ですが、お箸やナイフを入れると肉汁がジュワッと溢れてきます。ここに温泉卵(100円)をプラスすると、ハンバーグとソースに卵のコクがプラスされて最高のバランスです。

厨房で作られていくハンバーグステーキ

 さらに付け合せのスパゲティにソースを絡めて食べると、これまた一品料理レベル。茶碗で出されるご飯もツヤツヤして、みずみずしくて、ハンバーグをより美味しく食べさせてくれます。

 このほか、生姜焼き定食、エビフライ定食など、何を食べても美味しいので、毎日行っても飽きることがない『ウルトラ』。まさに街に愛され度合い“ウルトラ級”の食堂なんです。

●DATA

店名:洋食バル ウルトラ

住:東京都世田谷区経堂1-19-2 松菱ビル1F

(撮影・文◎土原亜子)