東京女子プロレス新チャンピオン渡辺未詩、初防衛戦で動き出す運命…垣間見えた荒井優希の新境地
東京女子プロレスが、3月31日に2度目の両国国技館大会「GRAND PRINCESS ’24」を開催した。この日、元AKB48の湯本亜美がプロレスデビューを果たし、元SKE48の谷真理佳がアイドルとしてライブに参加。アイドルとプロレスが交差した3.31、両国で何があったのか? 東京女子プロレスの現役&元アイドル選手4人を深堀りしたドキュメント『プロレスとアイドル』(太田出版)の著者であり、元週刊プロレスの記者、小島和宏が解説する(前後編の後編)。
【写真】楽屋での渡辺未詩&谷真理佳の記念ショット、ほか東京女子プロレス「GRAND PRINCESS ’24」【24点】
SKE48としてミニライブを開催し、プロレスラーとしてインターナショナル・プリンセス王座の防衛戦に臨んだ荒井優希。両国国技館の大舞台はプロレスとアイドルの二刀流として、ひとつの大きな到達点のように見えた。
ただ、当の本人はそんなに華やかなものではない、という意識を強く持っていた。大会の数日前に取材をしたとき、彼女は「プロレスラーとして泥臭い部分も見せたい」と言った。対戦相手の上福ゆきはモデルやグラビアイドルを経験している長身美人。だからメディアも美しすぎる決闘として煽っていたのだが、プロレスラー・荒井優希にとって、この防衛戦はそんな綺麗事ではなかったのだ。
そんな想いが爆発したのは場外乱闘。どう考えても場外戦は上福のペースになるのだが、キリッとした表情を浮かべた荒井は豪快な張り手一閃! いや、張り手というよりゴリッとしたビンタだ。ガクッとヒザから崩れ落ちる上福の姿に両国国技館は大きくどよめいた。泥臭い、というよりも荒井優希の「人間臭い」闘い方。この日も見事に防衛を飾り、チャンピオンロードを歩み出した荒井優希の新境地が垣間見えた一戦だった。
メインイベントではアップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩が団体最高峰のプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦。「プロレスラーとして日本武道館のメインイベント、アイドルとして日本武道館での単独ライブ」という壮大な目標を掲げてアップアップガールズ(プロレス)が立ち上げられてから7年。やっと武道館クラスのビッグマッチのメインイベントに辿りついた渡辺未詩は難攻不落のチャンピオン・山下実優を説得力満点の大技ラッシュで堂々、撃破。アイドルとしてはまだまだ道は長いが、ひと足早く、プロレスラーとしての大目標を達成した。
試合後、控室の前にいると、谷真理佳が大粒の涙を流しながら戻ってきた。
「さっき言ったこと、取り消します! 実感が沸かないって言いましたけど、さっき、実況席でおつかれさまの花束をもらったら、急に実感が沸いてきて……」
そう、アイドルとしてのラストステージはこの日のミニライブだったが、SKE48としての最後の仕事は試合中継のゲスト解説だったのだ。それを終えて、スタッフから労いの言葉をかけられたら、もう涙が止まらなくなった、という。
そんな話をしているところに、ついさっきチャンピオンになったばかりの渡辺未詩がすっ飛んできた。谷真理佳と「アイドルとして最後の記念写真」を撮りたいのだという。渡辺未詩はアイドルに憧れて、アップアップガールズ(プロレス)のオーディションを受けたが、それ以前から熱心なアイドルヲタで、谷真理佳はHKT48時代から追いかけてきた、という。
そんな渡辺が指定したのが『おでかけ』ポーズ。これは2013年から2017年まで放送されていた『HKT48のおでかけ!』でおなじみのポーズ。けっしてアイドルっぽいポーズではないので、周りにいた人たちは「なにそれ?」と笑っていたが、ある意味、アイドル・谷真理佳のルーツともいえる大切なアクションである。
SKE48のミニライブでは泣きそうになったけれど、このポーズは完全に涙腺にきた。あぁ、本当にアイドル・谷真理佳は終わったんだな、とホロリ。チャンピオン、ありがとう! そして、さよなら、アイドルの谷真理佳! アイドルとプロレスのスクランブル交差点は、本当にいろんなドラマを内包した素敵すぎる空間なのである!!
その新チャンピオン・渡辺未詩の初防衛戦が5月6日、後楽園ホールで決定した。両国国技館でタッグ王座に輝いた鈴芽&遠藤有栖の初防衛戦も決定したので、まさに5.6後楽園ホールが東京女子プロレスにとって「新章突入」の大事な闘いとなる(さらに両国国技館で激闘を繰り広げた荒井優希と上福ゆきがまさかのタッグを結成!)。
変な話、チャンピオンを目指すまでの道のりはファンも感情移入しやすいし、ものすごい一体感も生まれる。そう、AKB48がはじめて東京ドームに到達したあのころのように。
それがチャンピオンとしてベルトを守る側に回ると、どうしても状況は変わってくる。試合内容も問われるし、自分のファン以外のお客さんも含めた、すべての観客を満足させた上で大会を締めくくる、という大きなミッションをビッグマッチのたびに課せられることになる。
そんな遠大な防衛ロードの緒戦となるのが5.6後楽園ホール。これから先のことを考えると、ものすごく重要な「起点」となる。個人的にはアイドルとして日本武道館での単独ライブを目指す道も同時に追っているので、試合前の歌のコーナーすら、この日は特別な意味を感じてしまいそうだ。
3.31両国国技館でさまざまな運命がクロスしまくった、プロレスとアイドルの人間交差点は、5.6後楽園から、また違った道へと進みはじめる。この連続性がプロレスの面白さであり、きっと近い将来、どこかで複雑に人生が絡み合うはず。最新の「起点」からはじまるドラマにぜひ注目していただきたい。
【前編はこちら】元AKB48湯本亜美、元SKE48谷真理佳…アイドルとプロレスが両国で交差、高木三四郎「すげぇなぁ〜」
SKE48としてミニライブを開催し、プロレスラーとしてインターナショナル・プリンセス王座の防衛戦に臨んだ荒井優希。両国国技館の大舞台はプロレスとアイドルの二刀流として、ひとつの大きな到達点のように見えた。
ただ、当の本人はそんなに華やかなものではない、という意識を強く持っていた。大会の数日前に取材をしたとき、彼女は「プロレスラーとして泥臭い部分も見せたい」と言った。対戦相手の上福ゆきはモデルやグラビアイドルを経験している長身美人。だからメディアも美しすぎる決闘として煽っていたのだが、プロレスラー・荒井優希にとって、この防衛戦はそんな綺麗事ではなかったのだ。
そんな想いが爆発したのは場外乱闘。どう考えても場外戦は上福のペースになるのだが、キリッとした表情を浮かべた荒井は豪快な張り手一閃! いや、張り手というよりゴリッとしたビンタだ。ガクッとヒザから崩れ落ちる上福の姿に両国国技館は大きくどよめいた。泥臭い、というよりも荒井優希の「人間臭い」闘い方。この日も見事に防衛を飾り、チャンピオンロードを歩み出した荒井優希の新境地が垣間見えた一戦だった。
メインイベントではアップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩が団体最高峰のプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦。「プロレスラーとして日本武道館のメインイベント、アイドルとして日本武道館での単独ライブ」という壮大な目標を掲げてアップアップガールズ(プロレス)が立ち上げられてから7年。やっと武道館クラスのビッグマッチのメインイベントに辿りついた渡辺未詩は難攻不落のチャンピオン・山下実優を説得力満点の大技ラッシュで堂々、撃破。アイドルとしてはまだまだ道は長いが、ひと足早く、プロレスラーとしての大目標を達成した。
試合後、控室の前にいると、谷真理佳が大粒の涙を流しながら戻ってきた。
「さっき言ったこと、取り消します! 実感が沸かないって言いましたけど、さっき、実況席でおつかれさまの花束をもらったら、急に実感が沸いてきて……」
そう、アイドルとしてのラストステージはこの日のミニライブだったが、SKE48としての最後の仕事は試合中継のゲスト解説だったのだ。それを終えて、スタッフから労いの言葉をかけられたら、もう涙が止まらなくなった、という。
そんな話をしているところに、ついさっきチャンピオンになったばかりの渡辺未詩がすっ飛んできた。谷真理佳と「アイドルとして最後の記念写真」を撮りたいのだという。渡辺未詩はアイドルに憧れて、アップアップガールズ(プロレス)のオーディションを受けたが、それ以前から熱心なアイドルヲタで、谷真理佳はHKT48時代から追いかけてきた、という。
そんな渡辺が指定したのが『おでかけ』ポーズ。これは2013年から2017年まで放送されていた『HKT48のおでかけ!』でおなじみのポーズ。けっしてアイドルっぽいポーズではないので、周りにいた人たちは「なにそれ?」と笑っていたが、ある意味、アイドル・谷真理佳のルーツともいえる大切なアクションである。
SKE48のミニライブでは泣きそうになったけれど、このポーズは完全に涙腺にきた。あぁ、本当にアイドル・谷真理佳は終わったんだな、とホロリ。チャンピオン、ありがとう! そして、さよなら、アイドルの谷真理佳! アイドルとプロレスのスクランブル交差点は、本当にいろんなドラマを内包した素敵すぎる空間なのである!!
その新チャンピオン・渡辺未詩の初防衛戦が5月6日、後楽園ホールで決定した。両国国技館でタッグ王座に輝いた鈴芽&遠藤有栖の初防衛戦も決定したので、まさに5.6後楽園ホールが東京女子プロレスにとって「新章突入」の大事な闘いとなる(さらに両国国技館で激闘を繰り広げた荒井優希と上福ゆきがまさかのタッグを結成!)。
変な話、チャンピオンを目指すまでの道のりはファンも感情移入しやすいし、ものすごい一体感も生まれる。そう、AKB48がはじめて東京ドームに到達したあのころのように。
それがチャンピオンとしてベルトを守る側に回ると、どうしても状況は変わってくる。試合内容も問われるし、自分のファン以外のお客さんも含めた、すべての観客を満足させた上で大会を締めくくる、という大きなミッションをビッグマッチのたびに課せられることになる。
そんな遠大な防衛ロードの緒戦となるのが5.6後楽園ホール。これから先のことを考えると、ものすごく重要な「起点」となる。個人的にはアイドルとして日本武道館での単独ライブを目指す道も同時に追っているので、試合前の歌のコーナーすら、この日は特別な意味を感じてしまいそうだ。
3.31両国国技館でさまざまな運命がクロスしまくった、プロレスとアイドルの人間交差点は、5.6後楽園から、また違った道へと進みはじめる。この連続性がプロレスの面白さであり、きっと近い将来、どこかで複雑に人生が絡み合うはず。最新の「起点」からはじまるドラマにぜひ注目していただきたい。
【前編はこちら】元AKB48湯本亜美、元SKE48谷真理佳…アイドルとプロレスが両国で交差、高木三四郎「すげぇなぁ〜」