面接でやさしくされたら「見送り寸前」と思うべき…凄腕ヘッドハンターが教える「圧迫面接」の本当の狙い
■難関企業で実際に行われている「選考法」
優秀な経営者や人事の担当者の方たちは、人を見抜くプロフェッショナルである一方で難関企業と呼ばれる会社を目指す経験者の皆さんや学生さんのほうも、やはりハイキャリアでスペックの高い人材がそろっていますので、特に最終段階に残るレベルではプロの目でもなかなか見極めがつかないことも、珍しくないといいます。
そうした場合、採用側ではあえて内定候補者を「試す」やり方で、その人の本質を見抜こうとするケースもあります。
これは、某難関企業で実際に行われている選考法なのですが、最終段階の社長との面接を会食の形式で実施します。その段階までに、半分以上の候補者はふるい落とされ、残った人たちにしてみれば「社長との会食ともなれば、ほぼ大丈夫」との油断も生じるのでしょう。
そしてその会食の途中、社長はいきなり黙り込んでしまうのです。わざと黙ってしまうことで、相手がどんな反応をするかを見る。
■メンタルの強さや機転、コミュニケーション能力を見ている
候補者にしてみれば、突然、社長が黙ってしまうわけで、ほとんどが困ったり、パニックになったりしますが、そこに当人の人間性の本質が顔を出すといいます。
私が当の社長にお聞きしたところでは、特に「正解」はないといい、うまく言葉を引き出そうと知恵を絞っていろいろ話しかける、何らかの意図をさとってひとまず自分も黙ってしまうなど、対応は人によって様々。とにかくどう対処するかを見て、追い込まれた際のメンタルの強さや機転、コミュニケーション能力を見るということでした。
あるいは会食の後半、適度にお酒がまわったところで「採用決定」をにおわせ、油断した時の態度、表面に出た本性を見るという方法も用いるそうで、超難関の人気企業では候補者をそこまで「試す」場合がある――逆に言えば、それを知っているか、いないかで、こちらとしては対応する際の落ち着きようも、まるで違ってくるはずです。
■「圧迫面接」も「試す」意味が大きい
採用というのは時として、内定を切望する皆さん以上に、会社にとっても真剣勝負という面があります。
そうであるなら、孫子の兵法にならって「彼を知り己を知れば百戦殆あやうからず」を目指すべきではないでしょうか。
前項との関連になりますが、面接の際にしばしば行われる「圧迫面接」もまた、企業側が内定候補者の本質を見極めるために「試す」という意味が大きいもの。
その点を知っておくだけで、対応する際の意識もぐっと楽になってくるに違いありません。
■内定の可能性があるから試している
そもそも、企業側の採用担当の方たちのホンネを聞けば、多くの方々は、内定を出す可能性が少なからずある相手だけに圧迫面接を課すのであり、明らかに落とそうという相手にはむしろマイルドな対応を心がけるのだとか。
それというのも、不採用になった人が必要以上に会社への不満やわだかまりを持つのを避けたい意図が働くのだといいます。
面接会場を出れば、候補者もまた消費者のひとりであり、特にSNSの単なるウワサが株価を直撃しかねない現在において、企業側はそうした点に敏感になって当然です。
つまり、キツいと感じるほどの「圧迫面接」を受けるというのは、内定の可能性が高い、あるいはボーダーラインにあるからこそのこと。
それを知っていれば、皆さんも必要以上にドキドキする必要はなくなります。
■「冷たい対応でキツかった」のに内定が出る
実際、私はキャンディデイトの皆さんに、面接後の感想や印象をレポートにしてもらっていますが、これを採否の結果と照らし合わせると、「冷たい対応でキツかった」のに内定が出たり、「良好な反応だった」にもかかわらず残念な結果になったり、というケースに出会うのは珍しくありません。
もちろん、とてもいい印象そのままに内定獲得という例もあり、一概には言えませんが、その場の印象だけで一喜一憂するのはあまり意味がないということだけは確かです。
圧迫面接、恐るるに足らずの気持ちを持って、過剰な緊張に囚われないようにしてください。
■見た目の印象が55%
志望者と面接官が直接、向き合ってのやりとりをする面接では、言葉以外の要素が皆さんの想像以上に大きなウェイトを占めています。
コミュニケーションに関する心理学に「メラビアンの法則」という理論があるのを、聞いたことがあるでしょうか?
これは今から50年ほど前に、アメリカのアルバート・メラビアンが検証、発表したもので、「人間の印象は、言語による情報が7%、聴覚による情報が38%、視覚による情報が55%という比率で影響を受ける」という法則性を示しています。
すなわち、人と人が対面のコミュニケーションをする際は、話す言葉の内容や意味よりも、声の質・大きさ・口調や速さ、あるいは口ぐせなどが大きなウェイトを占め、見た目や姿勢、しぐさ、表情などがそれ以上に重要だというのです。
コミュニケーションと言えば、話す内容(言語情報)が最も大切という常識とは逆に、実際にはそれ以外の聴覚や視覚による部分(非言語情報)の影響が大きいというわけで、面接の場面などはその典型的なシチュエーションだと言えるでしょう。
■「清潔感とアピアランス」が大切
実際、私がクライアントの企業様の採用担当の方たちに聞いた話でも、身なりを始めとする視覚情報が結果に影響する場合は極めて多く、大切なのは「清潔感とアピアランス」とのこと。
アピアランスというのは直接には「外見」という意味ですが、この場合は「自分が相手にどう見えるか」というような意味だと考えてください。
私としては、人を外見だけで判断するのはいけないこと、という考えを正しいと思っていますし、中身のない人が見かけだけを飾ったところで、遠からず馬脚を露わすのは間違いありません。
ただ、友人などで何年もの付き合いがある場合とは違い、面接というのは初めての人間同士が30分から1時間ほどという限られた時間で相手を評価する、特異な場面です。
そうであれば、そこで最も大きく作用する条件を意識し、完璧にととのえるのは当たり前のことではないでしょうか。
■録画して訓練することで矯正できる
メラビアンの法則にのっとれば、面接の場で相手を引き付けるかどうかは、皆さんが最初のひと言を口にする以前、部屋に入って面接官があなた自身を見た瞬間に決定してしまうと言っても過言ではありません。
面接の最初も最初、極端な場合はパッと見て3秒とか5秒とかが、勝負の分かれ目になると言えるでしょう。
面接の際、採用側に与える視覚情報については、姿勢やしぐさ、表情といった、意識して訓練することでととのえられる部分と、服装や髪型など一定のお金をかけなければならない部分があります。
うち、訓練でととのえられる部分は、録画をしてのシミュレーションを何回となく繰り返すうち、確実に洗練させられるもの。
姿勢や歩き方、座り方などを身に付けられるほか、貧乏ゆすりや必要以上に多いまばたき、落ち着きのない手の動きなどの気になるクセは自ずと矯正できるでしょう。
■専門家に外見コーディネートしてもらうのも有効
一方、何をどのように着ればいいのか、ヘアスタイルはどうすればいいかについては、毎日のように鏡を見ても、なかなか正解が見つかりません。
なぜなら、服装や髪型には我流の判断よりも、専門知識やセンス、さらに会社ごとの文化の差が関わってくる面が大きいからです。
であれば、ここは専門家の知恵を貸してもらい、多少のお金をかけても、面接のための外見コーディネートをするべきではないでしょうか?
具体的には、大手デパートやスーツ専門店などの信頼できる店で、就職や転職の服装を知り尽くしたアドバイザーに相談。その際は、自分の志望する業界や業種、さらに会社名などもできるだけ詳しく話し、それにふさわしい一式をそろえてもらうのです。
特に、いわゆるドレスコードに敏感で、外見による判断が重要な欧米では、ビジネスパーソン個々人が自分専用のファッションアドバイザーを決め、大事な場面にはそのアドバイスに基づいた服装をととのえるのが常識とのこと。
■ちょっとした手間と出費を惜しむ人が多い
日本にはまだまだそこまでの文化はありませんが、老舗のデパートやビジネスパーソンが顧客の多くを占める大型専門店には、そうした点に通暁したプロフェッショナルが必ずいます。
そうした専門家は、当人の身長や体型といった部分を見て、最適なサイズとデザインを判断し、必要な調整するのはもちろん、業界や業種によって注意すべきところも知り尽くしていますので、まずはそこから始めれば大きな間違いをする心配はありません。
髪型についても、難関企業や人気企業がひしめく都心やオフィス街には、エグゼクティブが行きつけにする技術と信頼の高い理髪店、ヘアサロンが必ずあるものです。
そこで、同じようにアドバイスを受ければ、個々の顔立ちや髪質に加え、業界や業種ごとの面接に合わせた満足のいく調髪をしてくれるでしょう。
にもかかわらず、実際にはちょっとした手間と出費を惜しむ人がまだまだ多く、自己判断の面接ファッションのまま本番に臨み、第一印象でアウトとなっているのは実に残念だと思います。
■業界や業種ごとの文化の違いを意識する
しかも、要注意なのは新卒採用の学生さんよりも経験者採用を目指す皆さんで、私が見ても「不採用は当然」という例に出会うのはしょっちゅうです。
とりわけ見落としがちなのは、業界や業種ごとの“文化”の違いという点で、シャープさや信頼感、あるいは洗練や上質さを重視する金融業界、質実剛健や安心、安定を重んじる製造業、流行やセンスの面もチェックされるメディア業界など、求められる外見上のポイントは意外なほど幅があるもの。
そうした違いも考えずに現在の自分が属する業界の“常識”を押し通したのでは、異業種へのチャレンジなどうまくいくはずがありません。
私が、経験者採用の場合ほど要注意と強調するのは、その点に特に気を付けてほしいからです。
■「ノーネクタイの写真」でアウトになるケースも
一方、専門のアドバイザーでもなかなか知っている人がおらず、見落としがちなのが個別の会社ごとの文化の違いです。
例えば、M&Aキャピタルパートナーズの場合、金融の中でも特に服装には厳格で、社員の方たちは真夏の暑い盛りでもけっしてネクタイを緩めません。
それを知らず、自分の会社が「夏はクールビズ」という常識のまま、夏場の応募で履歴書に貼る写真をノーネクタイにしたら、それだけで書類の文字は1字も読まれずアウトの可能性もあります。
髪型にしても、男性であれば清潔感あふれる短髪で整髪料できちっと固めたスタイルが会社の“文化”として定着していますので、それからはずれると即マイナスの印象に繋がってしまうでしょう。
■応募する会社のカラーを意識する
会社ごとの違いという点では、それぞれのシンボルカラーというのも重要で、例えば爽やかなブルーカラーでブランディングされていて大人気企業で知られる東京海上日動火災保険やANA、こちらに内定した男性で、履歴書の写真も面接の際もネクタイをブルーになど意識されている方もいました。
それも、会社のHPまで確認し、店頭にある最も近い色のブルーを選んだのです。
同じように、三井住友銀行ならグリーン、みずほ銀行なら深い青、三菱UFJなら赤というように、徹底することは採用側に確実に好印象を与えます。
さらに言えば、経営者の色の好みという点も考え得るポイントです。
例えばM&Aキャピタルパートナーズでは、中村悟社長が赤いネクタイを好まれて何十本もお持ちだというのが有名な話。
であれば、面接の際にあえて1カ所(ネクタイやポケットチーフなど)だけ赤色を取り入れるのも、人事の方の目を引くポイントになるかもしれません。
■数千円の出費を惜しんではならない
こう書くと「そこまでやるの?」と感じる人もあるかもしれません。でも、人生を決める場面であれば「そこまでやる」のが当然ではないでしょうか。
しっかりしたものをそろえると十万円以上の出費が必要なスーツ、あるいは靴、鞄(これらの選択も重要です)とは違い、ネクタイやポケットチーフであれば数千円から1万円の範囲でバリエーションを増やせるわけで、そこを惜しむようでは勝利の神様はほほ笑んでくれません。
ここで書いたことは、多少ともお金のかかる部分もあり、新卒採用の学生さんにはそのまま実践するのが難しい部分があるとも思います。
そもそも新卒採用の場合は幅広い業界・業種に挑戦するため、より一般的な外見上の注意(清潔感やフレッシュなイメージなど)に配慮するべきですが、その際も本項で挙げた考え方を知っておくことは必ずプラスになるはずです。
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半沢 健(はんざわ・けん)
ヘッドハンター、経営者
慶應義塾大学在学中に「就活塾」を立ち上げ。東大生・慶應生・早稲田生を中心に、難関企業を筆頭に数多くの内定に導く。新卒就活時と転職活動時もあわせて、人生で計34社、人気の難関企業中心に内定を獲得。ヘッドハンター業界に参画し、2019年度、“コンサル(M&A)部門MVP”、全国1位のヘッドハンターに選ばれる(日本経済新聞社グループ主催)等、個人表彰多数受賞。TOP株式会社の代表取締役社長兼ヘッドハンターとして、多くの学生やキャンディデイト様のご支援で活躍している。著書に『無敵の内定戦術』(発売:講談社、発行:日刊現代)がある。
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(ヘッドハンター、経営者 半沢 健)