ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――春のGIシリーズ第2弾は、古馬の中距離GI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)。今週末の天気は晴れ予報で、いいコンディションでの開催が期待できそうです。

大西直宏(以下、大西)先週のGI高松宮記念は雨のなかでのレースで、枠順とコース取りが大きく影響しました。もちろん、そうしたことも読みきって馬券を的中させるのも予想の楽しみのひとつですが、純粋な力と力のぶつかり合いのレースも見たいものです。

 その点、大阪杯はBコースに替わってインの荒れた部分がカバーされ、レース当日も好天が見込めるとなれば、この路線の実力馬による真っ向勝負が見られそう。昨年同様、1分57秒台のハイレベルな決着を期待したいですね。

――大阪杯では毎年、"世代対決"がひとつのテーマとして挙げられます。GI昇格後は、5歳馬が5勝、4歳馬が2勝という成績を残していますが、今年はどう見ていますか。

大西 世代レベルについては、僕も折に触れて言及していますが、今年は現4歳世代の元気のなさが気になっています。競走馬の成長曲線を考えると、年明け直後はたいてい4歳馬が猛威をふるっているものです。

 しかし今年は、牝馬限定戦とダート戦、そしてマイル以下の短距離戦を除くと、ここまでの重賞で明け4歳馬が勝ったレースはひとつもありません。これは、なかなか珍しいことです。

 また、これまでに行なわれたGI2戦にしても、4歳馬が1番人気に推されながら、どちらも掲示板にすら載ることができませんでした(フェブラリーSでは1番人気オメガギネスが14着。高松宮記念では1番人気ルガルが10着)。

 それだけに、大阪杯では4歳世代を代表するクラシックホース2頭、皐月賞馬のソールオリエンス(牡4歳)とダービー馬のタスティエーラ(牡4歳)の走りが要注目となります。この2頭の走り次第では、このあとに控えるGI天皇賞・春(4月28日/京都・芝3200m)に出走予定の4歳馬ドゥレッツァの扱いにもかかわってくるので、なおさらです。

――フェブラリーSと同様、大阪杯でも超一線級クラスが同時期に行なわれる海外競馬、今回はドバイワールドカップデー(現地3月30日)のレースに軒並み参戦。その分、メンバーは「手薄」と言われています。4歳馬が5歳以上の古馬に一矢報いるならこのレース、ということになるのでしょうか。

大西 確かにドウデュース(牡5歳)やシャフリヤール(牡6歳)、スターズオンアース(牝5歳)といった面々がいないため、5歳以上の古馬勢が小粒に感じるのは否めません。

 それでも、キラーアビリティ(牡5歳)、ジオグリフ(牡5歳)、スタニングローズ(牝5歳)と芝2000mのGI馬が3頭いて、ステラヴェローチェ(牡6歳)、ルージュエヴァイユ(牝5歳)とGI連対経験馬が2頭。それらが上り調子で臨んでくることを考えると、4歳馬にとって、容易い相手になるとは思えません。

 3歳時と違って、4歳馬も同じ古馬として同斤量(牡馬は58kg、牝馬は56kg)になりますし、決してラクな戦いにはならないでしょう。

――大阪杯はGIに昇格して以来、人気薄馬の激走が頻繁に見られ、好配当を演出することが多いです。今年、大西さんが気になっている穴馬はいますか。

大西 僕が注目しているのは、プラダリア(牡5歳)です。3歳時にGII青葉賞(東京・芝2400m)を勝って以降、その後は鳴かず飛ばずといった状態で、ディープインパクト産駒にありがちな早熟タイプだと思っていました。ところが、古馬になって再び盛り返してきて、4歳秋と明け5歳の初戦と、重賞で2度の勝利を飾りました。


大阪杯での一発が期待されるプラダリア。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 使うごとに馬体重も増やし、近走では前でレースを運べるようになって、脚質の幅も広がっています。僕が同馬に抱いていた印象以上に、成長力を秘めていそうな気がします。

 今回と距離は違いますが、昨年のGII京都記念(3着。阪神・芝2200m)、GI宝塚記念(6着。阪神・芝2200m)と、阪神・内回りでの競馬の内容は悪くなく、この舞台への適性も感じられます。

 これまでの戦績から「GIだとワンパンチ足りない」といったイメージがありますが、今年の大阪杯では超一線級クラスが不在。"GIIに近いGI"と考えれば、ここでも上位争いが十分に見込めます。

 それと、僕は以前から、この馬のパンチ力不足の原因が「もしかしたら距離が長いからではないか?」という考えを持っていたので、今回2000m戦であることもプラスに働くと踏んでいます。

 ということで、大阪杯の「ヒモ穴馬」にはプラダリアを指名したいと思います