昨年、目まぐるしく打順やポジションが変わる日替わりオーダーでリーグ優勝したオリックス。西川龍馬の加入で、バリエーションと得点力の増加が期待できる。

 長らくオリックスのエースとして活躍し、引退後はオリックスの投手コーチも務めた星野伸之氏に、今季のオリックスのベストオーダーを考えてもらった。


星野氏が打線の軸として期待する、昨年のパ・リーグ首位打者の頓宮裕真photo by Sankei Visual

【6番に紅林、7番に杉本が入る恐怖の打線】

――オーダーを固定しない印象があるオリックスですが、星野さんがオーダーを組むとしたらどうなりますか?

星野伸之(以下:星野) 昨季は135通りのオーダーを組みましたし、今季もオーダーは日替わりだと思います(笑)。複数ポジションを守れる選手が多いこともあって悩みましたが、自分のベストオーダーは以下です。

<星野伸之が考えるオリックスのベストオーダー> ※開幕戦ではなく、今季のベストオーダーを想定

1番 中川圭太(センター)

2番 安達了一(セカンド)

3番 森友哉(DH)

4番 頓宮裕真(ファースト)

5番 西川龍馬(レフト)

6番 紅林弘太郎(ショート)

7番 杉本裕太郎(ライト)

8番 宗佑磨(サード)

9番 若月健矢(キャッチャー)

――新加入の西川選手は5番ですね。

星野 初めて対戦するピッチャーが多いでしょうし、前の打者に投げている球を観察できるという意味で、5番ぐらいがいいかなと。目慣らしをしておけば、狙い球を絞りやすい利点があります。1番や2番でも相手は嫌かもしれませんが、ある程度パ・リーグのピッチャーに慣れてからでいいと思います。
 
 ほかに、「内外野を守れる野口智哉をどこかに入れようか」「セカンドに安達ではなく(マーウィン・)ゴンザレスを入れるなら、2番ではなく7番あたりかな......」などいろいろ考えましたが、個人的にはやはり2番に安達を使いたいです。ランナーが出塁すれば一二塁間が広くなり、右打ちした時のヒットゾーンが広がるので、インコースの球でも右に打てる安達は相手にとって嫌だと思います。

――クリーンナップが強力なので、その後の6番も走者が溜まって打席が回ることが多くなりそうです。そこは紅林選手に任せる?

星野 紅林はバッティングがよくなってきましたし、勝負強さもあるので6番に置きたいです。その後の7番に杉本を置けば、非常に怖い打線になるんじゃないかと。それと、杉本で攻撃が終わったとしても、次の回が宗から始まりますよね。宗から上位打線へつなぐ流れも見えますし、切れ目のない打線になります。

 一発のあるレアンドロ・セデーニョを下位打線に入れるのもいいでしょうし、オープン戦で苦労した(コーディ・)トーマスが打ち始めたら、ますます打線のバリエーションが増えそうです。

【オリックス打線の強み】

――オープン戦では、さまざまな選手が複数のポジションを守っていましたね。

星野 調子が悪い選手がいた場合に替えやすいですね。たとえば、宗の調子が上がらなければ、サードに太田椋の起用もあるかなと。太田はバッティングが超積極的なので、1番に入れると打線の起爆剤になり得ます。それと、廣岡大志も状態がいい。内外野を守れますし、さまざまな起用が考えられます。

 ポジションがはっきりしているのは、キャッチャー以外は紅林と宗ぐらいでしょうか。頓宮は基本的にファーストですが、DHの場合もあるでしょうし。あとは、福田周平にも奮起してほしいんですよね。昨季は出場試合数がかなり減ってしまいましたが、代走や守備固めのスペシャリストになる気はないでしょうから。

――打線の軸は森選手、頓宮選手、西川選手に任せる形ですね。

星野 そうですね。森と西川は実績がありますし、バットコントロールは日本でも上位だと思います。頓宮は昨季首位打者を獲りましたけど、活躍できたのはまだ1年。それでも、しっかり技術がついてきた感じがするのでクリーンナップを任せられるかなと。右バッターの頓宮を、左バッターの森と西川で挟むと相手がリリーフ起用で悩むと思うので、こういう並びにしました。

 ほかにも、オリックスには中軸を任せられる選手がいます。頓宮の調子が悪ければ、セデーニョをクリーンナップに置いてもいい。あと、杉本が以前のように打てれば4番に置きたいのですが、ここ最近はバットを"振りすぎ"な感じがして......。2021年に優勝した時はいい感じで右打ちができていましたし、逆方向へのホームランも多かったですけど、今はいい時の感覚を忘れてしまったようにも見えます。

――杉本選手を含め、基本は調子のいい選手を優先して使っていく形になりそうでしょうか。

星野 それができるのがオリックスの強みです。ひとりの選手がずっと出続けることが少ないので、疲れを分散しながら戦えます。ポジションを固定し、ケガをしたら代わりはこの選手、という起用法が通常かと思いますが、本当に誰がスタメンになるのかわかりません。昨季、最終的にベストナイン(遊撃手)に選出された紅林が開幕時は二軍だったことも驚きでしたが、その時の調子を見極めて起用していますよね。

 昨秋、高校時代にショートを守っていた横山聖哉をドラフト1位で獲りましたが、紅林にとっても刺激になるはず。ショートはほかのポジションに比べて競争が少なかったので、横山の指名は「安心するなよ」という紅林へのメッセージなんじゃないかと思います。

――先ほど話が出ましたが、本当に切れ目がなくてしぶとそうな打線です。

星野 昨季はチーム本塁打数(リーグトップの109本)が多かったのですが、基本的にはつないでいく野球ですし、状況判断をしながら打てるバッターが比較的に多いと思います。セデーニョは育成選手の時から、キャンプでもセンター返しをしていましたし、チームバッティングを徹底させていますよね。

 新外国人のトーマスがどんな指示をされているのかはわかりませんが、チームとしての考えが浸透していると思います。なので、結果がうまくいくかどうかは別として、誰が試合に出ても遜色のない攻撃ができるんじゃないかと思います。

【プロフィール】

星野伸之(ほしの・のぶゆき)

1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000三振を奪っている。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。2018年からは野球解説者などで活躍している。