昨年、リーグ3位だったDeNAは、投手陣はエースの今永昇太がシカゴ・カブスに移籍したものの、野手陣ではドラ1ルーキーの度会隆輝がオープン戦で好調を維持するなど明るい話題も。

 かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏に、今季のDeNAのベストオーダーを考えてもらった。


オープン戦で首位打者となったドラ1ルーキーの度会 photo by Sankei Visual

【ルーキーの度会、石上への期待】

――さっそくですが、打順、ポジションも含めた高木さんのベストオーダーを伺ってもいいですか?

高木豊(以下:高木) 春季キャンプやオープン戦での各選手の状態をふまえ、現状で私がベストだと考えるオーダーは次のとおりです。

<高木豊が考えるDeNAのベストオーダー> ※開幕戦を想定。

1番 度会隆輝(ライト)

2番 タイラー・オースティン(ファースト)

3番 佐野恵太(レフト)

4番 牧秀悟(セカンド)

5番 宮粼敏郎(サード)

6番 梶原昂希(センター)

7番 山本祐大(キャッチャー)

8番 石上泰輝、林琢真、京田陽太(ショート)

――ルーキーの度会選手と石上選手の名前がありますね。度会選手はオープン戦で首位打者(打率.434)になるなどすばらしい成績を残しました。

高木 ピッチャーは調整しながらのピッチングで、度会の情報もないので手探りだったわけですが、それは度会も同じ。初めて対戦するピッチャーたちからあれだけ打ったわけですし、1番で使っていくべきです。ここまではプロのピッチャーの真っすぐ、変化球にも対応ができていますし、インコースのさばきもうまいです。

 逆方向へ打つことも、強く引っ張ることもできる。ムードメーカーでもあるので彼が1番にいると打線が勢いづきますし、起爆剤になります。三浦大輔監督も、最初から1番で起用し続けていましたよね。つまり、当初からトップバッターとして期待していたわけで、それに度会が結果で応えたということです。

――8番・ショートはルーキーの石上選手、林選手、京田選手と3人の名前が挙がっています。

高木 当初は林の成長に期待していましたが、ここまでは物足りなさを感じます。なので、オープン戦でよく打っていた石上を抜擢してもいいかなと。足を使うなら林かなと思っていたのですが、石上は足も速い(オープン戦で5盗塁、林は3盗塁)。経験や守備の安定感を考えると京田になると思いますが、バッティングの状態はあまりよくないので不安が残ります。

 当初、石上にはセカンドを守らせていましたが、ショートがなかなか決まらなかったためか、石上を教育リーグに行かせてショートを守らせていた(大学時代の本職はショート)。石上の打力を買っているということでしょうし、一軍の戦力として相当期待しているはずです。そう考えると、ショートの筆頭は石上ですかね。

【足も使える攻撃的なオーダー】

――2番にオースティン選手を入れた理由は?

高木 左バッターの梶原でもいいのですが、長期的な視点で考えると1、2番がどちらも左より、左、右と並べたいんです。投手陣に不安があるので、攻撃的な布陣を組みたいという意図もあります。三浦監督の野球の傾向としても、あまり細かいことはやらないはずなので、オースティンは2番に入れたいんじゃないかなと。下位打線からつなぐことができれば、度会とオースティンが3、4番という形になって得点が期待できますし、相手は嫌でしょう。

 クリーンナップは3番の佐野、4番の牧、5番の宮粼で固定し、6番に梶原を入れます。梶原はパンチ力がありますし、189cmと大柄な割には足も速い。次の山本もバッティングがいいですし、梶原の足なら単打でも還ってこられると思うんです。

 上位打線であれば、足が遅くても長打で走者を還すことを期待ができますが、下位打線で塁が渋滞してしまうと、走者が溜まった状態でピッチャーに回ってしまう。なので、6番にはある程度走れるバッターを置いておきたいので、私は梶原にしました。

――7番・キャッチャーには山本選手を入れています。

高木 昨シーズンの後半だけを見ると、3割以上打っていますからね。バッティングで何か掴んだものがあったはずですし、山本はバッティング面でも期待しています。オープン戦では結果が出ませんでしたが、シーズンに入って上向きになるのを期待しています。

 ただ、松尾汐恩のバッティングもいいんですよ。経験を積ませていきたい逸材なので、長いシーズンのどこかで使ってほしいです。

――1番の度会選手がシーズンに入っても好調で、ここ2年は出場機会が少なかったオースティン選手も活躍すれば、他球団のピッチャーが息を抜けない強力なオーダーになりますね。

高木 懸念は長年の課題であるショートですが、石上が台頭する期待感もあります。そうなれば林や京田、森敬斗にとってもかなり刺激になるでしょうし、そういった競争がうまく作用すればいいなと。石上は小柄ですが、体が強くて長打も期待でき、足も速い。DeNAはチームとして足を使えないことが課題と言ってきましたが、度会や林、梶原らと共にそこを解消してくれる存在になり得ます。

 守備は少し不安がありますが、肩が強くて送球は安定していますし、試合で使い続ければ守備は慣れていきます。それも考えて、石上をショートでしばらく使い続けてもいいと思います。

――石上選手はオープン戦の打率がチーム2位(.327)ですし、強力な打線がさらに厚みを増しそうです。打線が投手陣をカバーしていければ、チームが乗っていきそうですね。

高木 そうですね。ただ、真剣勝負はこれから。度会や石上について、相手も徹底して研究してきますし、壁にもぶち当たると思いますが、そこをどう乗り越えていくのか注目しています。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。