鶴岡慎也が分析する2024年の日本ハム(後編)

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 昨シーズン、リーグ3位の防御率を誇りながら、順位は2年連続の最下位。チーム浮上のカギを握るのが打線であることは明白だ。昨年ブレイクした万波中正を筆頭に、楽しみな逸材は多くいる。鶴岡慎也氏は今季のファイターズ打線をどう見ているのか。


6年目の田宮裕涼は強肩を武器にレギュラー奪取なるか? photo by Koike Yoshihiro

【注目は新外国人のスティーブンソン】

── 攻撃陣について、鶴岡さんが考える「2024年型ファイターズ打線」はどんなオーダーになりますか。

鶴岡 私が考えるオーダーは次のようになります。

1番 アンドリュー・スティーブンソン(レフト)
2番 松本剛(センター)
3番 万波中正(ライト)
4番 アリエル・マルティネス(ファースト)
5番 フランミル・レイエス(DH)
6番 野村佑希(サード)
7番 水野達稀(セカンド)
8番 田宮裕涼(キャッチャー)
9番 上川畑大悟(ショート)

── このなかで鶴岡さんの「イチオシ」は誰でしょうか?

鶴岡 新外国人のスティーブンソンです。昨年マイナーリーグで106試合、132安打、打率.317、16本塁打、57打点、44盗塁。俊足で、ツボにきたら一発の可能性も秘める。流れを引き寄せられる打者です。彼が1番に定着すると、いきなりバッテリーにプレッシャーをかけられるので面白いです。

── もうひとりの新外国人、レイエス選手はいかがでしょうか。

鶴岡 メジャーリーグで、シーズン30本塁打以上を2度経験するなど、通算108本塁打をマークしています。私が見てきた日本ハム歴代外国人選手のなかでも、飛距離は1、2を争うほど飛ばします。あとは力勝負のメジャーと違って、「裏をかく」日本野球の配球に、どれだけアジャストできるかでしょう。打率は低くても、30本塁打を期待したいですね。

── そのほかの打者についてはいかがですか?

鶴岡 2番に置いた松本です。2022年には首位打者のタイトルを獲得するなど、バットコントロールの精度の高い選手です。選球眼もいいですし、つなぎの打撃もできる。芳しくなかった足の状態も復調していますので、充実したシーズンになるのではないかと予想しています。

── クリーンアップには、万波選手、アリエル選手、レイエス選手が入りました。

鶴岡 昨年25本塁打と覚醒した感のある万波を3番に置いて、初回から打席を回したいと思います。万波については、昨年の25本塁打、74打点以上がノルマになります。4番は、昨年の得点圏打率.344をマークした勝負強いマルティネスでいいと思います。マルティネスは来日して7年目、長打はもちろん、状況に応じて右打ちもできますし、四球も選べます。シーズンを通して大崩れしなさそうです。

【清宮幸太郎の現状は?】

── プロ5年目の2022年に18本塁打を放つなど、毎年期待の清宮幸太郎選手はいかがですか?

鶴岡 今季はキャンプイン直前の自主トレ中に左足関節捻挫。3月20日のイースタン戦で、今季実戦初出場を果たしました。状態はよくなっているようですが、今後の調整具合が気になるところです。

── 二遊間には、水野選手と上川畑選手が入りました。

鶴岡 候補はたくさんいますが、守備のうまい上川畑をショートに固定するのがベストだと思います。昨年のチーム失策数94は12球団ワーストで、それが失点につながる場面がありましたが、上川畑が固定されれば問題は解消されると思います。セカンドは水野、石井一成、奈良間大己らの競争になると思います。

── 注目株は誰になりますか。

鶴岡 開幕スタメン捕手が予想されるのは、高卒6年目の田宮裕涼(ゆあ)。「ユアキャノン」と称される鉄砲肩で、成長著しい選手です。開幕から10試合は、選手生命をかけるような意気込みで臨んでほしいですね。キャッチャーはこのほかにも、強肩強打のルーキー・進藤勇也、経験豊富な伏見寅威もいます。投手との兼ね合いで「捕手複数制」を敷いていくかもしれませんね。

── 打線はまだ弱さを感じます。その分、代打の切り札的存在が必要になると思うのですが。

鶴岡 代打の一番手は郡司裕也です。初球から積極的に振っていけるし、ストレートにも振り負けしません。左の代打は加藤豪将。メジャーからの逆輸入選手で、昨年デビューから10試合連続安打を放つなど、存在感を示しました。それだけにケガで離脱したのは残念でした。もちろん、ふたりともレギュラーを狙えるだけのポテンシャルを持っています。

【日本ハムを2位で予想】

── 新庄監督1年目の2022年はチーム打率.234(リーグ4位)、2023年は.231(同6位)。中心となる選手が不在で、「猫の目打線」を組むしかない状況でした。

鶴岡 打順は臨機応変に組むと思いますが、試合に出る選手は昨年のように大きく変わる感じはしません。

── 新庄監督は今年「勝負の3年目」です。どんな野球で勝負をかけてくると思われますか。

鶴岡 この2年間で、選手個々のレベルアップは果たせたと思います。続投が発表された時、「来年も同じような成績であればユニフォームを脱ぐ」「新庄は奇跡を起こす人間」と言っていました。今年は新人、新外国人、FAでいい補強ができました。新庄監督は、投手陣についてはそれなりの自信を持っているように感じます。

 あとは打線がどれだけ得点できるかでしょう。万波は昨年ブレイクしましたが、さらなる飛躍を遂げてもらわないと上位進出はありません。昨年開幕4番で苦しんだ野村も、その経験を生かして今年はやってくれるでしょう。レギュラーを明言されたのは万波だけですが、選手会長の松本が並々ならぬ意地を見せ、チームを牽引してくれると思います。

── 最後に、パ・リーグの順位予想をお願いします。

鶴岡 このように予想しました。

1位 オリックス
2位 日本ハム
3位 ソフトバンク
4位 西武
5位 ロッテ
6位 楽天

── 日本ハムは2年連続最下位ですが、今年は脱出どころかAクラスに入ると?

鶴岡 投手陣はいいですし、少ないチャンスをものにして1点差ゲームをどれだけ拾えるかがカギになります。エスコンフィールド初のクライマックスシリーズ開催を実現し、新庄監督の言う「奇跡」で日本一を目指してもらいたいですね。

── オリックスはリーグ4連覇がかかります。

鶴岡 昨年の山本由伸と山崎の計27勝分は、山下舜平大と宮城大弥がカバーすると思います。ただ、昨年のように2位に15.5ゲーム差をつける大独走にはならないと思います。ソフトバンクは山川穂高とアダム・ウォーカーの加入で打線が充実しました。西武は投手陣が質量とも豊富で、"台風の目"になる可能性があります。ロッテは佐々木朗希が15勝近く勝てば、上位進出もあります。楽天は若手先発投手の台頭がないと厳しいと思います。


鶴岡慎也(つるおか・しんや)/1981年4月11日、鹿児島県生まれ。樟南高校時代に2度甲子園出場。三菱重工横浜硬式野球クラブを経て、2002年ドラフト8巡目で日本ハムに入団。2005年に一軍入りを果たすと、その後、4度のリーグ優勝に貢献。2014年にFAでソフトバンクに移籍。2014、15年と連続日本一を達成。2017年オフに再取得したFAで日本ハムに復帰。2021年オフに日本ハムを退団した