サッカー五輪代表、パリへ行くためのカギは? アジア勢相手の最終予選へ不安は拭えず
U−23日本代表が、パリ五輪アジア最終予選(U−23アジアカップ)を前にした最後の親善試合2試合を終えた。
結果は1勝1敗。初戦ではマリに1−3と敗れたものの、2戦目はウクライナに2−0と勝利した。
ウクライナ相手に2−0と勝利したU−23日本代表だが...。photo by Sueishi Naoyoshi
チームとして志向する高い位置からのプレスがハマった後者と、ハマらなかった前者。結果のみならず、内容的に見ても、ウクライナ戦の出来がよかったのは明らかであり、マリ戦は課題が、ウクライナ戦は収穫が、それぞれ目立つ試合になった。
ゲームキャプテンを務めたMF藤田譲瑠チマが、「前半から積極的に、攻撃の部分でも、守備の部分でも前からいけていた」と振り返ったウクライナ戦は、マリ戦での反省が生かされた試合と言えるだろう。
とはいえ、そんな2試合の流れを素直に喜べないのは、それがある程度予想されたものだったから。
すなわち、きれいに型どおりのサッカーをしてくるチーム(主にヨーロッパ勢)には分がいいが、予想外のことを仕掛けてくるチーム(主にヨーロッパ以外の国)には分が悪い。今回のU−23代表には過去の戦績から、そんな傾向が見て取れていた。
実際、ハイプレスを仕掛ける日本に対し、ウクライナはあまりにも正直だった。
GKも加えて低い位置からのビルドアップを試みるも、ポジションの取り方が概ねパターン化されているため、次々と日本の守備網に引っかかってしまう。立ち上がりに日本が決めるべきところを決めていれば、もっと大差がついていても不思議はなかった。
前半のなかばをすぎたあたりで、プレスを外されてウクライナに攻め込まれる場面はあったものの、「相手の時間ではあったけど、そこまで怖さというか、相手がゴールに迫ってくる、というのはなかった」とは、センターバックを務めたDF馬場晴也。
90分を通して、日本が慌てることなく進められた試合だった。
対照的に、90分を通して息つく暇を与えてもらえなかったのが、マリ戦である。
「開始10分は間違いなく(プレスが)ハマっていた。けれど、それに対してマリが(戦い方を)変えてきて、僕らはそれに対応しきれなかった」
そう語るのは、マリ戦でゲームキャプテンを務めたMF山本理仁だ。
山本は「僕は(ウクライナ戦を)外から見ていただけなので、肌感ではわからないが」と前置きしたうえで、こう続ける。
「正直、マリのほうが前に運ぶ力は強かったし、それにプラスして長いボールとか、いろんな引き出しを持っていたな、というのが自分の印象。日本の守備がよかったのももちろんあるけど、ウクライナはポゼッションしていても、なかなか前に進まなかった」
マリ戦でセンターバックに入ったDF西尾隆矢もまた、こんな言葉で敗戦を振り返っている。
「(マリ戦では)自分たちのなかでは(プレスが)ハマっている状態のときに、個ではがされるところが多々出てきてしまった。『じゃあ、これどうする?』って、ピッチのなかで混乱してしまう時間帯があった」
今回の2試合において、プレスがハマったか否かは、必ずしも日本の出来だけが理由ではないだろう。初戦の反省が2試合目に生かされたのは確かでも、相手がマリでも同じことができたかは、想像の域を出ない。
マリ戦を踏まえて、練習では従来とは異なる配置からのハイプレスにも取り組んでいるようだが、実戦でトライするには至っていないのが現状だ。
その意味で言えば、U−23代表は「現段階でこのくらいのことはできる」という積み上げの成果をある程度の水準までは示すことはできた。だがその一方で、積み上げの間に表われてきた課題については、いまだ消化できずに残ったままなのである。
そして迎えるのは、パリ五輪アジア最終予選を兼ねたU−23アジアカップである。
4月15日に開幕するこの大会は、全16カ国が参加し、上位3カ国(決勝進出2カ国と3位決定戦の勝者)がパリ行きのチケットを獲得。4位(3位決定戦の敗者)の国は、ギニア(アフリカ予選4位)とのプレーオフに進むことになる。
つまり、ベスト4進出が最低限のノルマ。韓国、UAE、中国とのグループステージを2位以内に入って勝ち上がり、準々決勝で勝利することが求められる。
だが、先のアジアカップでA代表がイランやイラクに敗れたことでもわかるように、執拗にロングボールを多用してきたり、身体能力を生かした強引な突破を図ってきたりと、なりふり構わず日本にぶつかってくるのが、アジア勢の怖さである。
来たるU−23アジアカップでも、日本が実力上位国のひとつであることは間違いないが、だからといって、簡単には勝たせてもらえないことは、A代表が証明済みだ。
最後の親善試合を終え、山本が語る。
「(相手は)ロングボールも確実に入れてくるだろうし、中東(のチーム)も運ぶ力はかなり強いと思う。そこは(U−23アジアカップの準備のために)マリがいい相手になったと思いたい」
抱える弱点を大きく晒すことなく、自分たちの土俵で戦い続けることができるのか。
日本がパリへ行くためのカギである。