中国・雲南で「電力の不足と余剰」同時発生のなぜ
雲南省の主力電源である水力発電は2023年から記録的な渇水に見舞われている。写真は長江上流の金沙江に建設された大規模水力発電所(中国長江三峡集団のウェブサイトより)
中国西南部の雲南省は、急峻な地形を利用した水力発電が盛んなことで有名だ。同省は2023年、記録的な渇水による深刻な電力不足に見舞われた。2024年はそれに加えて、風力発電や太陽光発電の(一時的な)電力余剰という新たな難題にも直面している。
雲南省の電源構成は、火力発電が主力の他省とは大きく異なる。発電所の総設備容量の約7割を水力発電が占めるなか、風力発電所と太陽光発電所の建設ラッシュにより再生可能エネルギー発電の比率が急上昇。その結果、火力発電の比率は全体の11%弱にまで低下した。
ダム貯水量が2〜5割減
そこを襲ったのが2年連続の異常渇水だ。「水力発電所のダムに流入する水量は、(メコン川上流の)瀾滄江は過去平均より約2割減、(長江上流の)金沙江は約1割増、その他の河川は2〜5割減となりそうだ」。昆明電力交易センターは2月20日、そんな予想を発表した。
省内の河川の流量は、冬季に減少し夏季に増加する。2023年は年初から初夏にかけての渇水で電力供給が逼迫。同年8月以降は多少好転したものの、水力発電所の貯水量不足は1年を通じて続いた。
そして2024年の減水期を迎え、雲南省では電力不足の再来が確実視されている。昆明電力交易センターは、2024年に省内で年間270億kWh(キロワット時)の電力量が不足し、電力需要のピーク時に最大750万kW(キロワット)の出力不足が生じると予想する。
それだけではない。昆明電力交易センターはさらに、風力発電所と太陽光発電所の大量建設に伴う電力余剰と、異常渇水による電力不足が同時発生するリスクを指摘した。
風力発電や太陽光発電は、気象条件による出力の変動が大きい。一般的には、火力発電所の出力をきめ細かく調整することで電力供給を安定させるが、雲南省では火力発電の比率が低下したため、調整機能が不十分になってしまった。
雲南省では再生可能エネルギー発電の設備容量が急増している。写真は国有投資会社の国投雲南新能源が建設した風力発電所(同社ウェブサイトより)
雲南省の再生可能エネルギー発電の設備容量は、2023年末時点で風力発電が1530万kW、太陽光発電1959万kWに上る。両者の合計は過去1年間で2倍以上に急増した。
青海省でも問題が顕在化
そのため、昼間の太陽光発電のピーク時と夜間の風力発電のピーク時に、消費しきれない電力を捨てざるを得なくなる可能性があると、昆明電力交易センターは指摘する。
風力発電所と太陽光発電所の建設ブームが中国全土で過熱するなか、電力不足と電力余剰の同時発生というジレンマは、雲南省だけの問題ではなくなりつつある。
例えば中国西北部の青海省では、水力発電、風力発電、太陽光発電の合計設備容量がすでに全体の9割を超えた。そのため夜間には電力が不足し、昼間には電力が余るというミスマッチが顕在化している。
(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は2月20日
(財新 Biz&Tech)