「盗撮してたお前 名前覚えたからな」 フワちゃん、弟の披露宴でこっそり「撮影」されて怒り心頭…法的問題は?
お笑いタレントでYouTuberのフワちゃんが、弟の結婚式に参列した際、披露宴会場で「盗撮」されたと怒りをあらわにしています。
フワちゃんは3月3日、自身のX(旧ツイッター)で、弟の結婚を喜ぶ一方で「これだけは言わせてね」「自撮りしているフリしながら盗撮してたお前 席次見て名前覚えたからな」と投稿しました。
フワちゃんは、ナプキンを頭にかけて顔を隠しながら、怒った表情の写真も添えています。
おめでたい席であることから「盗撮されたら不愉快」「披露宴で盗撮は気持ち悪い」「新郎新婦は事前にやめてねと伝えるべき」といった声があがっています。一方で「芸能人なんだから仕方ない」といった趣旨の反応もありました。
芸能人といえども、勝手に隠れて撮影されたら、嫌な気持ちになるでしょう。偶然見かけた芸能人をこっそり撮影する行為に法的問題はないのでしょうか。清水陽平弁護士に聞きました。
⚫︎こっそり写真を撮影すれば「肖像権侵害」になる可能性
--偶然見かけたり、居合わせた芸能人をこっそりスマホで撮影する行為に法的問題はありますか。
最高裁は「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態……を撮影されない自由を有する」(最高裁昭和44年12月24日判決)としています。
いわゆる「肖像権」についての判例なのですが、ざっくりいえば、プライベートの姿を勝手に撮影することは肖像権侵害になる可能性があります。
このことは、芸能人であっても同様で、偶然見かけたり、居合わせた芸能人を撮影する行為、あるいはこれをSNSにアップする行為は、肖像権侵害になる余地があります。
ただし、撮影やSNSへのアップが肖像権侵害(不法行為)になるかどうかについて、最高裁は「被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」としています(最高裁平成17年11月10日判決・法廷内撮影訴訟)。
撮影の状況や場所などを考慮して、侵害かどうかを考えることになるので、常に侵害になるわけではありませんが、芸能人を狙って撮影するようなものは、もっぱら興味関心に基づくものに過ぎないので、侵害のほうに傾くのではないかと思います。
侵害にならない場合としては、撮影した写真に意図せず芸能人も映り込んでいたようなケースが考えられます。
⚫︎SNSにアップすれば削除や損害賠償請求も
--肖像権侵害が認められたらどうなるのでしょうか。
肖像権侵害にあたる場合、芸能人側が請求すれば、撮影データの削除やSNSにアップされた写真の削除、損害賠償が認められることになります。実際は、撮影されてもある程度仕方ないと考えて、何もしない芸能人も多いと思われます。
しかし、芸能人を見て撮影したくなる気持ちはわからないでもないですが、断りなく撮影することは肖像権侵害になるということは覚えておくべきでしょう。マナー的にも、本人の了解を得てから撮影すべきといえます。
なお、肖像権侵害が成立するからといって、これが「盗撮」として刑事上「違法」になるかといえば、そういうわけではありません。
刑事上「違法」になるものは、大枠でいえば、撮影される側の了承を得ずに、裸や下着などを撮影する行為であり、そういったものを撮影すれば、「性的姿態等撮影罪」や「迷惑防止条例違反」となります。
今回の撮影行為はそういったものではないので、刑事上の問題は生じないでしょう。
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022〜2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから 〜とある弁護士の本音の仕事〜」の法律監修を行っている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:https://www.alcien.jp