相場展望2月26日号 米国株: 米国株を強力に牽引したエヌビディアも、当面落ち着く見通し 日本株: 異様な日経平均の上昇に、警戒感
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)2/22、NYダウ+456ドル高、39,069ドル(日経新聞より抜粋) ・2/22のNYダウは続伸し、初めて3万9,000ドル台に乗せ、7営業日ぶりに過去最高値を更新した。上昇幅は12月中旬以来の大きさだった。【前回は】相場展望2月22日号 米国株: エヌビディア決算発表終了、気になるバフェット氏の投資動向 中国株: 「株式市場で鎖国」宣言をした中国 日本株: 日経平均の株高要因は、「半導体」「円安」「金利高」
・NYダウの構成銘柄ではないが、2/21夕に市場予想を上回る四半期決算や業績見通しを発表した画像処理半導体のエヌビディアが急伸し、ハイテク株や半導体株を中心に買いが広がった。
・エヌビディアは約+16%上昇した。時価総額は約1兆9,400億ドル(約290兆円)と、2/21から+2,770億ドル増加した。米メディアによると、1日の時価総額の増加額として過去最大という。前日発表の決算や見通しが市場の想定以上に強く、生成人工知能(AI)関連投資の勢いや広がりを示したと受け止められた。
・AI関連銘柄の業績成長期待が改めて高まった。主要株価指数の高値更新が続くなか、前日までハイテク株には利益確定や持ち高調整の売りが出ていたが、エヌビディアの決算を受けてハイテク全般を買い直す動きが強まった。
・米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げを開始する見通しで、米経済がソフトランディング(軟着陸)できるとの期待も強い。FRBのジェファーソン副議長は同日の講演で「米経済おおむね想定通りなら、年内引締め的な政策を巻き戻すのが適切になるだろう」との見解を示した。物価の安定に向けた進捗については「慎重ながら、楽観的だ」と述べた。
・同日発表の週間の米新規失業保険申請件数は市場予想を下回った。米国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の良さから、株価の一段の上昇を見込む買いも入った。
・NYダウの上げ幅は一時+530ドルを超えた。顧客情報管理のセールスフォースやIT(情報技術)のIBM、ソフトウェアのマイクロソフトが高い。クレジットカードのビザや同業のアメリカン・エクスプレス、ホームセンターのホームデポなど消費関連銘柄も買われた。
・多くの機関投資家が運用指標とするSP500株価指数は続伸し、4営業日ぶりに最高値を更新した。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は4営業日ぶりに反発した。上昇率は2023年2月上旬以来の大きさだった。一時は16,061と、2021年11月に付けた終値ベースの過去最高値16,057を上回った。
・アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)やブロードコムといった半導体株、交流サイトのメタなどの上げも目立った。
2)2/23、NYダウ+62ドル高、39,131ドル(日経新聞より抜粋) ・NYダウは3日続伸し、連日で過去最高値を更新した。相対的にみて出遅れ感のあった景気敏感株やディフェンシブ株が買われ、NYダウを支えた。一方、買いが先行したハイテク株には目先の利益を確定する売りが次第に優勢となり、相場の重となった。
・前日にかけて上値が重かったバイオ製薬のアムジェンや医薬品・医療機器のジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)などの上昇が目立った。このところ米経済はソフトランディング(軟着陸)を達成できるとの観測に加え、米企業業成長期待も高まっている。投資家の運用リスク取る姿勢が強まるなか、足元の相場上昇に出遅れ感のあった銘柄に買いが入った。
・NYダウの上げ幅は+200ドルを超える場面があったが、次第に上値が重い展開となった。NYダウの構成銘柄ではないが、今週発表の好決算を受けて画像処理半導体のエヌビディアへの買いが続き、時価総額は2兆ドルを上回る場面あったものの、買い一巡後は伸び悩み+0.35%高で終えた。前日に買いが目立った他のハイテク株や半導体関連株は利益確定売りに押されて、相場の重荷となった。
・米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始が想定よりも先延ばしされるとの見方から、買いが鈍った面もあった。ゴールドマン・サックスはこのところのFRB高官の発言や今週公表された1月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を踏まえ、最初の利下げ予想をこれまでの5月から6月に変更した。年内の利下げ回数は従来予想の5回から4回引き下げた。ウォラーFRB理事は2/22夜の講演で、金融政策運営について「利下げの開始を急いではいない」と語った。
・NYダウの構成銘柄では、IT(情報技術)のIBMや化学のダウ、ドラッグストアのウォルグリーンズ、外食のマクドナルドも買われた。半面、スマートフォンのアップルやソフトウェアのマイクロソフトは安い。米原油先物相場が下落し、石油のシェブロンも売られた。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反落した。朝方は買いが先行し、一時は16,134と2021年11月に付けた最高値16,057を上回った。もっとも、前日に大幅に上昇した後で、主力ハイテク株や半導体関連株には利益確定や持ち高調整の売りが次第に優勢となった。半導体のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は▲3%近く下げた。
・多くの機関投資家が運用指標とするSP500株価指数は小幅に3日続伸した。前日比+1.77(+0.3%)高の5,088と連日で更新した。
■2.米国株:米国株高を強力に主導したエヌビディアだが、いったんは落ち着くとみる
1)NYダウが史上最高値更新続くが、エヌビディアの牽引効果のおかげ ・2/1〜23までの株価推移 2/1⇒2/23 上げ幅上昇率 NYダウ38,519ドル 39,130+612ドル高 + 1.6%高 エヌビディア 630 788 +158ドル高 +25.0%高 ・2/23は高値823ドルと前日比+38ドル高・+4.9%高と急伸した。 ・しかし、買い一巡後は伸び悩み終値は788ドルと、前日比+3ドル高・+0.36%高に、上げ幅を縮めた。2)エヌビディアの売買高は2/22に過去最高、2/23は利益確定の売り株数が増加 ・売買高(株数)推移 2/21 2/22 2/23 売買高(株数) 69.0万株 86.5 82.9
3)エヌビディアの株価は、当面の最高値を形成したイメージ ・2/23の株価は一時、前日比で+4.9%高となったが、次第に売り圧力に押されて、終値では+0.36%高に縮めた。 ・2/23の売買高は82.9万株と大きかったが、それは売り株数が増えた結果と思われる。 ・つまり、エヌビディアの好決算効果は出尽くしたとみる。今後、株価は高値維持を目指す展開になると予想する。
4)いよいよ米株式相場は、決算ラリーを終え、材料出尽くしの流れへ ・これから3月中旬過ぎまでの約1ヵ月は下値模索するとみる。 ・エヌビディアの業績サプライズ効果は、納まっていくだろう。
●3.エヌビディア急騰で「空売り筋」に2/22だけで▲30億ドルの損失(ブルームバーグ)
1)空売り筋には約▲30億ドル(約▲4,500億円)の損失は「AI生成の悪夢」になったと指摘。2)エヌビディアの空売り残高は183億ドル相当で、米国市場で3番目に多い銘柄。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)2/22、上海総合+37高、2,988(亜州リサーチより抜粋) ・前日までの好地合いを継ぐ流れとなり、7日続伸し、昨年12/12以来、約2ヵ月半ぶりの高値水準で終えた。・中国の政策動向が引続き支援材料となった。なかでも、相場テコ入れの強化が材料視されている。当局は機関投資家などに対し、寄り付き直後と大引け前の30分間、株式を売り越さないよう指示したと伝わった。関係部局は先ごろ、「国家隊」と呼ばれる中国政府系投資会社による買い支えや空売り規制の強化、上場企業の投資価値向上を支援するなどの施策を集中的に打ち出している。
・また、全国人民代表会議(全人代)の開幕3/5が視野に入ってきたことで、追加の経済支援策に対する期待感も高まった。
・大型株のバリュエーション再評価が進むなか、中央企業(中国政府直属の国有企業)傘下の銘柄群に買いが続いている。
・朝方は上値の重い場面がみられたものの、指数は上げ幅を徐々に広げた。
・業種別では、石油・石炭などエネルギー関連の上げが目立ち、通信関連も高い。中国メディアは2/22、国務院・国有資産委員会は中央企業を通じ、中国の人工知能(AI)技術発展を加速するなどと報道した。中央企業では、中国聯通など大手通信キャリアがAI分野で先行していると説明した。ハイテク株も急伸した。公益・素材・インフラ関連・医薬・運輸・金融なども買われた。
2)2/23、上海総合+16高、3,004(亜州リサーチより抜粋) ・前日までの好地合いを継ぐ流れとなり、8日続伸し、節目の3,000を回復。
・中国の政策動向が引続き支援材料となった。当局は相場支援スタンスを強めているほか、全国人民代表大会(全人代)の開幕の3/5が視野に入ってきたことで、追加の経済対策に対する期待感も高まっている。
・ただ、上値は限定的。売り圧力が意識されるなか、指数は安く推移する場面もあった。
・業種別では、住宅価格の持ち直しが期待され不動産が高い。主要70都市の1月新築住宅相場に関しては、値下がりしつた都市数が62⇒56に減少した。下落都市が減少するのは、2023年3月以来だ。自動車も上げが目立った。銀行もしっかり。公益・ハイテク・医薬・素材・軍事関連なども買われた。半面、石油・石炭のエネルギーは冴えない。
●2.中国、海外投資呼び込み措置策定を指示、記録的な直接投資減少で(ブルームバーグ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)2/22、日経平均+836円高、39,098円(日経新聞より抜粋) ・日経平均は4営業日ぶりに大幅反発し、1989年12/29に付けた史上最高値の38,915円を34年2カ月ぶりに更新した。米半導体大手エヌビディアが2/21に市場予想を上回る好決算を発表し、2/22の東京市場で日経平均への寄与度が大きい半導体関連株に買いが波及した。円相場が1ドル=150円台と円安・ドル高基調で推移したことも輸出関連株の買いを誘った。・エヌビディアが米東部時間2/21夕に発表した2023年11月〜2024年1月期の売上高は前年同期比3.7倍の221億300万ドルと過去最高を更新し、市場予想を大幅に上回った。2024年2〜4月期見通しも市場予想以上で、生成AI(人工知能)向け半導体の需要急増による業績成長が続いていることが明らかになった。米株式市場の時間外取引でエヌビディア株が急伸し、2/22の東京市場でも半導体関連株に買いが集まった。東エレクやアドテスト、スクリンなどが大幅高となった。
・市場では「エヌビディアの決算は投資家心理を明るくした。日経平均は足元が天井という雰囲気はない。利益確定売りをこなしながら4万円台を目指す展開だろう」との声が聞かれた。
・日経平均が34年2ヵ月ぶりに最高値を更新した背景には、企業の稼ぐ力の向上やガバナンス(企業統治)の改善、インフレ型経済への移行の期待などがある。特に海外の機関投資家は昨年から活発になっているガバナンス改革に関心を寄せており、上場企業が進める政策保有株の売却や自社株買いなど資本効率を高める取り組みを好感しているようだ。
・「中長期志向の海外の機関投資家は中国から日本に投資マネーを移す動きを強めており、日本株上昇に弾みを付けている」との声が聞かれた。2023年に年間で+28%上昇した日経平均は2024年に入ってからも騰勢を強め、2/22までにすでに+16%上昇した。
・東証株価指数(TOPIX)は3日ぶりに反発し、1990年2月以来34年ぶりの高値だった。JPXプライム150指数は4営業日ぶりに反発した。
・個別銘柄では、ファストリやソフトバンクG、信越化学が高い。トヨタやホンダ、デンソーなど自動車関連株も上昇した。三菱商や日立、安川電が買われた。一方、中外薬が安く、アステラスやKDDIが下落した。ニコンやヤマトが売られた。
2)2/23、祝日「天皇誕生日」で休場
●2.日本株式市場:異様な日経平均の上昇に、警戒信号
1)NYダウに比べて、異様な日経平均の上昇 ・NYダウ・日経平均の推移 2/1 2/22 上げ幅 上昇率 NYダウ 38,519ドル 39,069 +550ドル高 +1.4%高 日経平均 36,011円 39,098 +3,087円高 +8.6%高2)わずかな銘柄の上昇で、日経平均が上昇する構図 ・少数の銘柄で日経平均が上昇 2/13 2/15 2/22 東エレク +396円高 +168 +206 ファストリ +45 +98 +132 アドバンテスト + 48 +37 +131 ソフトバンク +100 +59 +86 信越化学 + 31 + 34 リクルート +39 5社合計 +628 +393 +589 日経平均の上げ幅 +1,066円高 +454 +836 5社合計の寄与率 +59% +87 +70
3)主要3指数でみても日経平均が突出高 ・3指数の推移 2/15 2/22 日経平均 +1.21%高 +2.19 TOPIX +0.28 +1.27 グロース250 +0.37 ▲0.43
4)半導体株が主導する日経平均の上昇も、米エヌビディア株の軟調化に警戒 ・画像処理半導体の極めて好調な業績で米国株の上昇をリードしてきたエヌビディアだが、株価上昇が壁にぶつかった可能性が2/23の値動きにみられる。
・生成AIのトップであるエヌビディア株の上昇が、日本株の半導体関連株に波及してきただけに、緊張感をもって見守りたい。
5)円相場は「円高」方向へ ・日銀総裁の金融政策正常化が近づいたとの見方から、円を買い戻す動きが出るとみられる。 ・円チャートからみて、前回の153円に近づいたこともあり、円安⇒円高へ転換すると見て取れる。
・鈴木・財務省大臣も、「日銀と一体となって取り組んでいくことが重要だ」と述べた。
・「円安」効果で、自動車・商社など輸出関連株に逆風が吹く恐れがり、備えたい。
●3.デフレでなくインフレ状態にある、消費者物価は右上がり続く=日銀総裁(ブルームバーグ)
1)日本銀行の植田和夫・総裁は2/22、衆院予算委員会で答弁した。■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3141 ウエルシア 業績堅調。 ・3182 オイシックス 業績好調。 ・4480 メドレー 業績堅調。 ・9706 日本空港ビルデング 業績好調。執筆者プロフィール
中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou