「日本のヤクザリーダー」が核物質密輸未遂でアメリカ連邦地検に起訴される
ミサイルや麻薬を密売した疑いで2022年に逮捕されていた国際犯罪シンジケートのリーダー、エビサワ・タケシ容疑者に核物質を密輸しようとした疑いがあるとして、新たに追起訴状が発行されました。
Southern District of New York | U.S. Attorney Announces Nuclear Materials Trafficking Charges Against Japanese Yakuza Leader | United States Department of Justice
2024年2月21日、ニューヨーク州南部地区のダミアン・ウィリアムズ連邦検事ら3名の司法担当者により、仲間と共謀してミャンマーから他国への核物質を輸送しようとした疑いでエビサワ容疑者を追起訴するとの発表が行われました。
ウィリアムズ検事らによると、エビサワ容疑者は麻薬・武器密売人を装っていた麻薬取締局(DEA)の潜入捜査官に核物質のサンプルを見せており、後に当局がサンプルを押収・分析した結果サンプルが本物であると判明したため、核物質の密輸を謀った容疑で起訴するに至ったとのことです。
ウィリアムズ検事らはエビサワ容疑者を「日本のヤクザリーダー」と呼称。共同被告人のソンフォップ・シンガシリ容疑者と合わせて、追起訴状について罪状認否を求める予定です。
訴状によると、エビサワ容疑者は2020年初頭からDEAの捜査官相手に「大量の核物質を入手できる」と話しており、後にガイガーカウンターで放射線を測定している岩石の写真と、当該物質にトリウムとウランが含まれていることを示す分析結果を送っていたとのこと。
エビサワ容疑者から幾度も質問を受けた捜査官は、イランの将軍を装った仲間を引き入れ、核兵器計画での使用を目的とした核物質の売却を仲介することに同意。するとエビサワ容疑者は「ウランよりもさらに優れたプルトニウムを将軍に提供する」と提案してきたそうです。エビサワ容疑者が対価として求めたのは軍事用兵器でした。
捜査を進める中で、エビサワ容疑者の共犯者が「2000kg以上のトリウム232と、100kg以上の八酸化三ウラン(イエローケーキの主成分)を入手可能であり、ミャンマーで5トンもの核物質を生産できる」と話していたことも判明しているそうです。後にエビサワ容疑者と共犯者2名が捜査官らと対面し、核物質のサンプルが入ったプラスチック容器を提示したため、捜査官はサンプルを撮影。
その後、タイ当局の協力の下でサンプルは押収され、アメリカに引き渡されました。アメリカの核法医学研究所がサンプルを検査した結果、いずれのサンプルにも検出可能な量のウラン、トリウム、プルトニウムが含まれていることが判明。特にプルトニウムの同位体組成は兵器級であり、十分な量が生産されれば、核兵器に使用されることもあっただろうと判断されているそうです。
エビサワ容疑者には核物質の密売や麻薬の輸入謀議、兵器の所持や取引など合計7件の容疑がかけられており、複数回の終身刑が言い渡される可能性があります。ウィリアムズ検事は「本日の起訴状で申し立てられた行為はどれも誇張なく重大なものです。エビサワ容疑者は核兵器開発計画に使用されると認識しながら密売を計画し、さらに地対空ミサイルを含む殺傷力のある兵器の購入交渉も行っていました。容疑者がアメリカの法廷で裁きを受けられるよう計らってくれた法執行機関のパートナーに感謝します」と述べました。