ENEOSが逃がした魚はあまりに大きい!ローソンTOBへの参画が幻に終わったワケ
ENEOSホールディングスが、KDDIや三菱商事と共にローソンへの出資を検討していたことが明らかになった。ENEOSにとってローソンとの連携はどんな意味があったのか。そしてなぜTOBから手を引いたのか。国内外の石油業界を知る専門家が五つの論点で徹底考察する。(桃山学院大学経営学部教授 小嶌正稔)
KDDI×ローソン×三菱商事のディール
ENEOSが逃がした獲物は大きかった
通信のKDDIがコンビニエンスストアのローソンをTOB(株式公開買い付け)するニュースを追っていて驚いた。当初は石油元売り最大手のENEOSホールディングスも参画する計画だったという。報道によると、ENEOSは2023年12月に経営トップが解任されたため、この資本参画を辞退したのだそうだ。三菱商事×KDDI×ENEOSの3社がローソンを共同経営するプランは幻に終わった。
石油業界を専門に研究してきた筆者からすると、ENEOSが逃がした獲物は、あまりに大きい。しかもトップ解任の理由は女性へのセクハラが原因の不祥事であるだけに、何とも情けない。もし、このディールが当初案通り成功していれば、次世代の日本を支えるビジネスモデルになっていたはずなのに。
脱炭素、電気自動車(EV)化によりENEOSは「40年には国内のガソリン需要が19年比で半減する」と予測している。石油元売りは自ら変わらなければもう後がない。
欧米ではガソリンスタンドという商売自体がすでにマイナーだ。ガソリンは、コンビニで売られる商品の一つとなっているからだ。これに着目したのがセブン&アイ・ホールディングスだ。米国でコンビニ併設型ガソリンスタンドの大型買収を次々と決断し、世間を驚かせた。
コンビニは、次世代に向けたEV充電ステーション網の要になりつつある。ENEOSにとってローソンとの連携はまたとない大チャンスであったことは明白だ。
なぜ、ENEOSはローソンのTOBから手を引いたのか。それは社長の不祥事による解任だけでなく、ENEOSの社内事情も大きく影響していると筆者は考える。