マダガスカル南西部に生息するラボードカメレオンは、既知の四肢動物としては寿命が最も短く、ふ化してからは半年も生きられません。そんなラボードカメレオンが、次の世代に命をつないでから短い生涯を終える瞬間が、動画に収められました。

Watch chameleon erupt in color 'as if uttering her last words' in her final moments before death | Live Science

https://www.livescience.com/animals/lizards/watch-chameleon-erupt-in-color-as-if-uttering-her-last-words-in-her-final-moments-before-death

以下の動画を再生すると、アメリカの公共放送サービス(PBS)がマダガスカル西部のキリンディ森林保護区で撮影した、メスのラボードカメレオンの産卵と死の瞬間を見ることができます。

Female Chameleon Erupts with Color Before Death - YouTube

産卵中のラボードカメレオン。ナレーターが「彼女の短い人生は、この瞬間を迎えるためにあった」と語ります。



卵を産み終えると、最後の力を振り絞って卵に土をかぶせます。「母カメレオンは、卵が地中で長い干ばつを乗り切れるよう、産卵に全力を注ぎます。そして、エネルギーをほとんど使い果たすと、卵を産んでからわずか数時間で死んでしまうのです」と、PBSのプロデューサーのヴァレリア・ファブリ=ケネディ氏と、アメリカ自然史博物館の生物学者であるクリス・ラックスワージ氏はIT系ニュースサイトのLive Scienceに話しました。



生態があまり知られていないラボードカメレオンの生活史を究明すべく、研究チームがラボードカメレオンを観察していたところ、ある個体の動きが急速に鈍くなっていきました。そこで、研究チームがすかさず微速度撮影カメラを設置したところ、野生のラボードカメレオンが最期の時を迎える瞬間の撮影に成功しました。



地面に横たわってからしばらく弱々しく息をしていたカメレオンですが、やがて体色がめまぐるしく変化し始めました。



Live Scienceによると、カメレオンはナノ結晶を含む特殊な細胞を膨張させたり収縮させたりすることで光の反射を変化させ、皮膚の色を変えるとのこと。ファブリ=ケネディ氏らは「死の間際も神経信号が伝達され続け、皮膚細胞の形状が変化し、混沌(こんとん)とした極彩色のパターンを作り出したのが映像に収められています」と説明します。



ついに息絶えた母カメレオン。この時期、マダガスカルの森ではオスを含めたすべてのラボードカメレオンが一斉に寿命を迎えており、乾期が到来する頃になるとラボードカメレオンは土の下の卵を残して全滅します。



卵からふ化した成体の寿命が約4〜5カ月なのに対し、卵がかえるまでにかかる時間は約8〜9カ月間です。つまり、ラボードカメレオンは一生の約3分の2を卵として地中で過ごすことになります。



ファブリ=ケネディ氏らは、「撮れた映像を確認した時、私たちはこの色彩豊かな光景に驚き、そして感動しました。これは、科学者たちがこれまで野生で見たことがない光景でした」と話しました。