知って納得、ケータイ業界の″なぜ″ 第161回 「mineo」が長期利用者向け特典を復活、その背景に「1円スマホ」規制あり
オプテージの「mineo」は2024年1月30日、利用者向け特典サービス「ファン∞とく」を、長期利用者向け特典サービスとしてリニューアルすることを発表した。その背景には「1円スマホ」の規制で話題となった電気通信事業法の一部改正が大きく影響しており、今後MVNOのサービス提供の自由度は大幅に高まることとなりそうだ。
○「ファン∞とく」が再び長期利用者向けサービスに
オプテージがMVNOとして提供するモバイル通信サービス「mineo」は、契約数が126万回線を超え、MVNOの中では大手の一角として知られる。そのmineoは2024年1月30日に新サービス発表会を実施し、いくつかの新しい施策を打ち出している。
その1つは、通信品質を約5倍改善させたこと。MVNOはそのサービス特性上、昼休みなどの混雑時に通信品質が著しく低下しやすく、それが利用者の不満要素の1つとなっていることから、オプテージでは品質改善の取り組み強化を図り、2024年1月には前年対比で約5倍の通信品質改善が進んだという。それでも携帯各社の品質には及ばないというが、普段使いであればある程度快適に使える品質となったことは確かなようだ。
mineoは通信品質の向上に力を入れているそうで、さまざまな対処の末、独自調査ながら2024年1月には前年対比で約5倍品質が向上したとしている
そしてもう1つの施策となるのが「ファン∞とく」のリニューアルである。ファン∞とくはmineoの利用者に向けて特典を提供するサービスであり、現在はアプリの利用状況などに応じて契約事務手数料(3300円)が無料になるエントリーコードがもらえたり、コミュニティサイト「マイネ王」で使える「王国コイン」がもらえたり、端末を購入すると電子マネーギフトがもらえたりするなどの特典が提供されている。
だが2024年2月28日にそのサービス内容を大幅にリニューアルし、契約年数に応じて特典が増える、長期利用者向けの特典サービスに変更される。具体的にはmineoの契約者に対し1年に1度「mineoコイン」がもらえる仕組みで、契約から2年目までなら1枚、4年目までなら2枚、5年目以降なら3枚と、契約年数に応じてもらえるコインが増えるという。
mineoの「ファン∞とく」は長期利用特典へと大幅にリニューアル。1年に1回もらえる「mineoコイン」が、長く利用するほど多くもらえる仕組みだ
mineoコインは王国コインをリニューアルしたもので、王国コイン同様マイネ王でのイベント参加やグッズの入手などに利用できるのはもちろんのこと、枚数に応じて各種手続きの手数料やオプションサービス、端末購入時の料金などを割り引くクーポンに変えることも可能。mineoコインの有効期限は5年間なので、枚数を貯めてよりお得な特典に交換することも可能だ。
mineoコインは手数料やオプション料金、端末購入の割引などとして活用できる。より多く貯めておき、大きな割引に使うことなど可能だ
実は、ファン∞とくは2017年の提供当初も、長期利用者に向けた特典サービスだった。だが2019年10月より、特典の内容が契約年数によらない現在のスタイルに変更されている。それがなぜ、2024年になって再び長期利用者向け特典に戻ったのかというと、そこに影響しているのが電気通信事業法だ。
実はファン∞とくは、2017年のサービス提供開始当初も長期利用者特典サービスとされており、MVNOとしては初の長期利用者向け特典として大きな注目を集めていた
○「1円スマホ」だけではない法改正の影響
2019年10月といえば電気通信事業法が大幅に改正され、それまで一般的だった通信料金の契約を前提としたスマートフォンの割引や、長期契約を前提に毎月の料金を割り引く“縛り”などに大幅な規制が加えられたタイミングでもある。だがすべてのモバイル通信事業者が規制の対象となった訳ではない。
対象となったのは1つに携帯4社とその特定関連法人で、KDDI傘下のビッグローブなど、MVNOながら携帯4社の傘下企業もその対象に含まれている。そしてもう1つが、契約数が多い独立系のMVNOであり、具体的には携帯電話市場で0.7%以上のシェアを持つ事業者が対象となっていた。
シェア0.7%とはおよそ100万契約となるため、当時100万契約を超えていた「IIJmio」を運営するインターネットイニシアティブ(IIJ)と、mineoを運営するオプテージがその対象とされた。そのため両社は携帯4社やそのグループ企業と同じ規制を受けることとなり、法改正により大幅な規制がなされた長期利用者向け特典に関しても、内容変更を余儀なくされたのである。
総務省「電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について」概要より。2019年の電気通信事業法改正により、端末値引きや“縛り”などの行為を禁止する事業者として携帯4社と関連企業のほか、シェア0.7%を超えるMVNOが指定された
だがその後、政府主導の料金引き下げによって携帯大手の側がMVNOのお株を奪う低価格のサービスを提供したことで、MVNOは苦戦を強いられている。それゆえ総務省の有識者会議でも、MVNOの規制を緩和してはどうかという議論がなされるようになったのだ。
その結果が反映されたのが2023年12月27日の電気通信事業法の一部改正だ。この法改正では、いわゆる「1円スマホ」を実現する値引き手法に対する規制が大きな注目を集めたが、実は改正された要素はそれだけではなく、規制対象の事業者の見直しも実施されている。
具体的には独立系のMVNOに関して、規制対象とする事業者のシェアを従来の0.7%から、4%に引き上げるというもの。シェア4%はおよそ500万契約で、当時の楽天モバイルの契約数に近しい数となることから、楽天モバイルを下回るシェアのMVNOを規制することはかえって競争を停滞させると判断し、このような変更をするに至ったのだろう。
総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正」概要より。規制対象となる独立系MVNOのシェアは0.7%から4%に引き上げられ、その結果IIJやオプテージは規制対象外となった
だがその結果、IIJやオプテージは規制対象から外れたので、大幅な端末値引きや“縛り”なども規制なく堂々と実施できるようになった。実際オプテージは今回の発表で、スマートフォンを最大2万6000円値引きする「端末価格割引キャンペーン」を期間限定で実施しているが、対象機種の中には電気通信事業法の規制を超えた値引きがなされている機種も存在する。
mineoで2024年3月31日まで実施される「端末価格割引キャンペーン」の対象機種。番号ポータビリティでの転入や、端末を一括払いするなどの条件はあるが、「moto g52j SPECIAL」は法規制を上回る2万6400円の値引きを実施している
そしてもう1つ、規制対象から外れたことで実施できるようになったのが、長期利用者に向けた特典の提供だ。とりわけmineoはマイネ王を通じた利用者とのコミュニケーションに力を入れているだけに、利用者の長期的な関係構築に貢献する長期利用者向け特典を強化したかったといえ、それがファン∞とくのリニューアルに結び付いたといえそうだ。
そうしたことから今後、規制対象から外れたIIJmioやmineoが、それを生かしてサービス強化を図ってくる可能性は非常に高い。多くの消費者が期待しているであろうスマートフォンの大幅値引きに関する動向も注目される所だが、ファン∞とくのようにベースの部分でのサービス強化がなされ、それがMVNOの競争強化につながってくることにも期待したい。
○「ファン∞とく」が再び長期利用者向けサービスに
その1つは、通信品質を約5倍改善させたこと。MVNOはそのサービス特性上、昼休みなどの混雑時に通信品質が著しく低下しやすく、それが利用者の不満要素の1つとなっていることから、オプテージでは品質改善の取り組み強化を図り、2024年1月には前年対比で約5倍の通信品質改善が進んだという。それでも携帯各社の品質には及ばないというが、普段使いであればある程度快適に使える品質となったことは確かなようだ。
mineoは通信品質の向上に力を入れているそうで、さまざまな対処の末、独自調査ながら2024年1月には前年対比で約5倍品質が向上したとしている
そしてもう1つの施策となるのが「ファン∞とく」のリニューアルである。ファン∞とくはmineoの利用者に向けて特典を提供するサービスであり、現在はアプリの利用状況などに応じて契約事務手数料(3300円)が無料になるエントリーコードがもらえたり、コミュニティサイト「マイネ王」で使える「王国コイン」がもらえたり、端末を購入すると電子マネーギフトがもらえたりするなどの特典が提供されている。
だが2024年2月28日にそのサービス内容を大幅にリニューアルし、契約年数に応じて特典が増える、長期利用者向けの特典サービスに変更される。具体的にはmineoの契約者に対し1年に1度「mineoコイン」がもらえる仕組みで、契約から2年目までなら1枚、4年目までなら2枚、5年目以降なら3枚と、契約年数に応じてもらえるコインが増えるという。
mineoの「ファン∞とく」は長期利用特典へと大幅にリニューアル。1年に1回もらえる「mineoコイン」が、長く利用するほど多くもらえる仕組みだ
mineoコインは王国コインをリニューアルしたもので、王国コイン同様マイネ王でのイベント参加やグッズの入手などに利用できるのはもちろんのこと、枚数に応じて各種手続きの手数料やオプションサービス、端末購入時の料金などを割り引くクーポンに変えることも可能。mineoコインの有効期限は5年間なので、枚数を貯めてよりお得な特典に交換することも可能だ。
mineoコインは手数料やオプション料金、端末購入の割引などとして活用できる。より多く貯めておき、大きな割引に使うことなど可能だ
実は、ファン∞とくは2017年の提供当初も、長期利用者に向けた特典サービスだった。だが2019年10月より、特典の内容が契約年数によらない現在のスタイルに変更されている。それがなぜ、2024年になって再び長期利用者向け特典に戻ったのかというと、そこに影響しているのが電気通信事業法だ。
実はファン∞とくは、2017年のサービス提供開始当初も長期利用者特典サービスとされており、MVNOとしては初の長期利用者向け特典として大きな注目を集めていた
○「1円スマホ」だけではない法改正の影響
2019年10月といえば電気通信事業法が大幅に改正され、それまで一般的だった通信料金の契約を前提としたスマートフォンの割引や、長期契約を前提に毎月の料金を割り引く“縛り”などに大幅な規制が加えられたタイミングでもある。だがすべてのモバイル通信事業者が規制の対象となった訳ではない。
対象となったのは1つに携帯4社とその特定関連法人で、KDDI傘下のビッグローブなど、MVNOながら携帯4社の傘下企業もその対象に含まれている。そしてもう1つが、契約数が多い独立系のMVNOであり、具体的には携帯電話市場で0.7%以上のシェアを持つ事業者が対象となっていた。
シェア0.7%とはおよそ100万契約となるため、当時100万契約を超えていた「IIJmio」を運営するインターネットイニシアティブ(IIJ)と、mineoを運営するオプテージがその対象とされた。そのため両社は携帯4社やそのグループ企業と同じ規制を受けることとなり、法改正により大幅な規制がなされた長期利用者向け特典に関しても、内容変更を余儀なくされたのである。
総務省「電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について」概要より。2019年の電気通信事業法改正により、端末値引きや“縛り”などの行為を禁止する事業者として携帯4社と関連企業のほか、シェア0.7%を超えるMVNOが指定された
だがその後、政府主導の料金引き下げによって携帯大手の側がMVNOのお株を奪う低価格のサービスを提供したことで、MVNOは苦戦を強いられている。それゆえ総務省の有識者会議でも、MVNOの規制を緩和してはどうかという議論がなされるようになったのだ。
その結果が反映されたのが2023年12月27日の電気通信事業法の一部改正だ。この法改正では、いわゆる「1円スマホ」を実現する値引き手法に対する規制が大きな注目を集めたが、実は改正された要素はそれだけではなく、規制対象の事業者の見直しも実施されている。
具体的には独立系のMVNOに関して、規制対象とする事業者のシェアを従来の0.7%から、4%に引き上げるというもの。シェア4%はおよそ500万契約で、当時の楽天モバイルの契約数に近しい数となることから、楽天モバイルを下回るシェアのMVNOを規制することはかえって競争を停滞させると判断し、このような変更をするに至ったのだろう。
総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正」概要より。規制対象となる独立系MVNOのシェアは0.7%から4%に引き上げられ、その結果IIJやオプテージは規制対象外となった
だがその結果、IIJやオプテージは規制対象から外れたので、大幅な端末値引きや“縛り”なども規制なく堂々と実施できるようになった。実際オプテージは今回の発表で、スマートフォンを最大2万6000円値引きする「端末価格割引キャンペーン」を期間限定で実施しているが、対象機種の中には電気通信事業法の規制を超えた値引きがなされている機種も存在する。
mineoで2024年3月31日まで実施される「端末価格割引キャンペーン」の対象機種。番号ポータビリティでの転入や、端末を一括払いするなどの条件はあるが、「moto g52j SPECIAL」は法規制を上回る2万6400円の値引きを実施している
そしてもう1つ、規制対象から外れたことで実施できるようになったのが、長期利用者に向けた特典の提供だ。とりわけmineoはマイネ王を通じた利用者とのコミュニケーションに力を入れているだけに、利用者の長期的な関係構築に貢献する長期利用者向け特典を強化したかったといえ、それがファン∞とくのリニューアルに結び付いたといえそうだ。
そうしたことから今後、規制対象から外れたIIJmioやmineoが、それを生かしてサービス強化を図ってくる可能性は非常に高い。多くの消費者が期待しているであろうスマートフォンの大幅値引きに関する動向も注目される所だが、ファン∞とくのようにベースの部分でのサービス強化がなされ、それがMVNOの競争強化につながってくることにも期待したい。