(写真: mits/PIXTA)

「ハイタッチの習慣」は、単なる動作に留まらず、人生の質を向上させるということがわかっています。前編に続き、アメリカで大ベストセラーとなった、女性司会者のメル・ロビンズ氏の著書『毎朝の1秒が人生を好転させる! 魔法のハイタッチ』から一部を抜粋し、自分を変える習慣について紹介していきましょう。

ハイタッチをすることで自分に対する見方が変わります

自らにハイタッチをする行為の効果を調べていくにつれ、私は色々なことに気づくようになりました。まずは、忙しく働き詰めの日々を送る中でも、人は自分の心に優しくできるという事実を発見したのです。

また、リスクを取って挑戦し、たとえ失敗しても、そこから学べることは必ずあり、自分を恥じることはないということにも気づきました。

大志や野心を抱きつつ、その一方で、自分や他者に懇切丁寧に向き合うことだってできます。つらくて耐え難い境遇に陥ったとしても、楽観的な姿勢と立ち直る力、信念を倍加して苦境を乗り切ることも可能です。

実際のところ、鏡の中の自分に数週間にわたってハイタッチを送り続けたところ、私は劇的に変わっていきました。まず、これまでずっと気に入らなかった自分の欠点について考えることがなくなったのです。

そのおかげで、自分に対する見方が変わりました。自分の見てくれなんて最小限の関心事であり、より大切で愛すべきは自分の内面であることにも気付いたのです。

こうした思考パターンに自らを導けば、確実に心地の良さを感じられるでしょう。

自分へのハイタッチにはお金はかかりません。しかし、それによって得られる自己承認の感覚には千金の価値があります。自分の存在をしっかりと認められるようになれば、今日、何が起きようとも、自分自身を支えて立ち上がり、くじけずに笑みを浮かべられるはずです。

そもそも自身に向けてハイタッチをしているとき、自分についてネガティブな考えを持つことはありません。あなたも一度、試してみてください。きっとこの感覚をわかってもらえるはずです。

鏡の中の自分を見ながら、手を上げて声援を送るとき、「あーあ、私って太っているわ」「自分は負け犬だ」「オレはひどい人間だ」「自分のお腹が嫌いだ」なんて思える人はいません。絶対に不可能なのです。

一度、鏡に映る自分にハイタッチをしながら、「自分の首元が嫌い!」と叫ぼうとしましたが、できませんでした。すべての言葉を言い終える前に、おかしくなって噴き出してしまったのです。

では、どうして無理だったのでしょうか。人が誰かにハイタッチをするときは、決まってポジティブなシチュエーションだからです。自分にとってそれが当たり前になっているため、ハイタッチをするときにネガティブな気持ちになるのは不可能なのです。

ハイタッチをしようとした瞬間、あなたの潜在意識は反射的にポジティブなモードに入り、頭の中に渦巻く不安や心配を追い出します。

「どうしたら時間内にプレゼンを終わらせられるだろう……」

「時間どおりに子どもを病院に連れていけるだろうか……」

無意識のまま歯を磨いていたりすると、ついついこうした気持ちに心を持っていかれがちです。しかし、ハイタッチをすると、気持ちはすぐに自分のところに戻ってきます。

「しっかりと見ているからね。絶対に信じてるから。いつも一緒にいるから。わかった?」

こんなメッセージがハイタッチによって発信されると、様々な雑念は取り払われ、集中力を取り戻していくのです。

心を満たす最大の要素は、自分を認め、優しくなること

ある研究を紹介しましょう。人生の質の向上のために効果的な影響を与え得る要素について研究者たちが調べたところ、最も効果を発揮する要素は、自分に対して優しくなる習慣を身に付けることだとわかったのです。

英国ハートフォードシャー大学の研究者たちは、この研究を通じて、人に幸福や満足をもたらすものは何なのかを調べようとしました。

彼らは、人生の質を改善すると思われる様々な行動や習慣に注目していったのです。その対象は実に幅広く、エクササイズから、新しいことへの挑戦、人間関係の構築、他人への親切、自分にとって有意義となる行動、目標達成のための活動まで、考えられるものすべてを網羅していきました。

その結果、人を幸せにし、心を満たしてくれる最大の予測因子は、自己を容認することだとわかったと言います。つまり、自分自身に優しく向き合い、励ます行為をすることで、それに比例した直接的な影響が生じ、自らの幸福度が上がっていくとの結論に達したのです。

この研究が示すように、自分自身に優しくする姿勢(=自己容認)には人生を変えてしまうほどの力があります。

人生は時に、残酷で不公平な顔をのぞかせます。単にうっとうしいだけか、もしくは自分の魂や精神を押しつぶすほどのものかにかかわらず、生きていれば人は必ず何らかの問題に悩まされ、足踏みを強いられるのです。

その苦しみがわかるのは、本人だけであり、他人にはわかりません。だからこそ、自分に優しくし、必要とされる愛情やサポート、声援を与え続けなくてはならないのです。

誰であろうと、人には問題に立ち向かい、人生を変える力が備わっています。過去に起きた出来事を変えることはできませんが、未来に起きるであろう出来事を選択することはできるのです。人が持つ真の力は、それを実際に可能にします。

自らの過去がどれほどひどいものであったとしても、あなたはそれとは異なる新しい未来を作れます。これまでに自己破壊的な習慣を続けていたり、ひどい失敗をしてしまったりした経験があったとしても、心配はいりません。それでもなお、新たな未来は築けます。

今現在、どれだけ自分を恥じていても、その状態から抜け出し、一からやり直せることを知ってください。

世界を見る目を変えれば、見える世界も変わってくる

自分が抱える問題はとても大きく、圧倒されるほど深刻かもしれません。実際のところ、ハイタッチの習慣を始めたところで、その現実は少しも変わらないでしょう。いいですか、変わるのは「あなた」のほうなのです。

自分自身をどう見るか、どんなことを達成する力を持っているのか……。自分を取り巻く世界をどう見るのか、果たして自分はどんな機会と解決策を生み出すことができるのか……。これらはすべて、あなたが変わりさえすれば、すべてが思いのままに回り始めるでしょう。自分の信念と考えに根差して自分自身の背中を押し続けたとき、必ず素晴らしい出来事が起こるものなのです。

聞いてがっかりするかもしれませんが、人生は常にあなたに試練を与え続けます。自分の人生を変えようとしているとき、目標を達成しようとしているとき、もしくは夢を追いかけているとき、必ずあなたは失敗や試練にぶつかるでしょう。残念ながら、それから逃れることはできません。

であれば、失敗や試練に対してどう対応していくのか……。それが勝者と敗者を分けると言っていいでしょう。辛辣になるつもりはありませんが、それが事実なのです。

毎朝のハイタッチはトレーニング

まずはこの事実を受け入れ、「失敗や試練はいい兆候以外の何物でもない」と考えるようにしましょう。もしもあなたが何かに失敗し、試練を強いられたら、「私は正しいことをしているに違いない」と捉えるのです。


自らの能力を信じ、あきらめずに前進し続けるように励ませば、人生は素晴らしい場所にあなたを連れて行ってくれるでしょう。

夢の実現をあきらめず、鏡の前に毎日立ち、ハイタッチの姿勢を維持し続ければ、最終的にはあなたが本来いるべき場所にたどり着けます。

目指していた目標を達成できなかったら、それは本来達成すべきものではなかっただけ。あなたの人生にはもっといいことが待っているはずです。それはきっと驚くくらい素敵なものに違いありません。それを信じてください。

あなたの人生は、次に起こるすべての物事(本当にすべてのこと)をあなただけのために用意してくれているのです。

鏡の中に映る自分自身に毎朝ハイタッチをする行為は、その事実を心から信じるためのトレーニングだと考えてください。息をしているうちは、手遅れとはなりません。時間はまだ残されています。止まらずに、前に向かって歩を進めましょう。

(メル・ロビンズ : テレビ司会者、作家、講演家)