クセがすごすぎるギャグや読めなすぎる展開が話題となり、昨年8月の公開からリピートを重ねる「どアホウ」が増殖中の「キャスト8人の野球映画」こと、『野球どアホウ未亡人』。異常な盛り上がりの応援上映が行われ、再上映が行われたかと思えば、4か月近くロングラン上映する映画館が現れるなど、謎すぎる作品で主演を務めた森山みつきさんが、再び登場! 前回(https://getnavi.jp/entertainment/901967/)のインタビューから4か月余り。前回のユニフォーム姿から一転、可憐な振り袖姿で、「どアホウ」現象を振り返りつつ、2024年の意気込みについて語ってくれました。

 

森山みつき●もりやま・みつき…11月3日生まれ。大阪府出身。森永乳業アロエヨーグルトのCMなどで活躍後、21年に「共振」で映画デビュー。22年に「REVOLUTION+1」に出演するほか、主演を務めた「死後写真」ではイタリアの映画祭「Sipontum Arthouse International Film Festival」にて最優秀女優賞を受賞している。X(旧Twitter)/Instagram

 

【森山みつきさん撮り下ろし写真】

 

地方の劇場のお祭り・歓迎ムードがすごかった!

──都内(池袋シネマ・ロサ)での上映が終了し、9月から愛知(刈谷日劇)と大阪(シアターセブン)など、地方での上映が始まりました。初日舞台あいさつなどで訪れて、いかがでしたか?

 

森山 ロサさんのときは、私たちの方から「観に来てください!」とお客さんにお願いして、口コミで広まっていきましたが、愛知も大阪も、事前に地元のラジオ番組で取り上げてくださったこともあり、「待ってました!」な感じのお祭り・歓迎ムードがすごかったです! 刈谷(日劇)さんは劇場の入口を装飾した「どアホウゲート」を作ってくださって我々よりも“どアホウ”を追求してくださっていて感動を覚えましたし、私の地元・大阪にある(シアター)セブンさんは、20歳のときに人生で初めて行ったミニシアターだったんです。

 

──森山さん初のミニシアター体験は、何の作品だったんですか?

 

森山 大好きな満島ひかりさんが主演した「海辺の生と死」でした。まさか自分の主演映画で、ここに戻ってくるとは思いませんでしたし、ドキドキしながら映画館に入った思い出もよみがえりました。さらに映画「死後写真」と合わせて主演映画2作同時公開、通称「もりや祭り」でも盛り上げてくださって、全く毛色の違う両作をハシゴして違いを楽しんでくださる方が多くてうれしかったです。11月には長野(千石劇場)でも上映されたんですが、歴史を感じさせるレトロな映画館での上映も、どこか感慨深かったです。大阪ではチラシ配りをするために、ユニフォーム姿で甲子園球場にも行き、海外の方と国際交流もできました。あと、地方に行くと、ファンの方がお菓子や袋麺など、地元の名産をプレゼントしてくださるので、東京に戻るときはスーツケースがパンパンになるんですよ(笑)。

 

──さらに10月には、東京・新宿ロフトプラスワンにて、映画を観ながらツッコミを入れる応援上映「野球どアホウ未亡人+1」が開催されました。

 

森山 「どうしていいか、分からない空気感の中、皆さん探り探りになるのかな?」と思っていたんですが、全く心配無用でした! 映画が始まる前から「みんな、声出していくぞー!」という部活ノリがすごくて、こっちが圧倒されましたし、お客さんのツッコミに逆に笑っちゃう感じでした。映画を観ているお客さんの顔を横から見られたのですが、皆さん本当にいい顔されていたし、私が演じた夏子が必殺技を決めたときに、場内が大歓声と拍手で包まれたりして、本物のスポーツ観戦のようで楽しかったです。

 

──3月には、大阪ロフトプラスワンWESTにて、第二回応援上映「野球どアホウ未亡人−1.0」が開催されます。

 

森山 今度もライブハウスが会場ですし、やはりお酒を飲みながらの応援上映は楽しいと思うんですよ。あえて、野次を飛ばしに行くというか、ストレス発散するために行くぐらいの感覚で、遊びにきてもらえたらうれしいですね。

 

お客さんの感想によって、映画の輪郭がハッキリしていった

──そして、11月には「第33回映画祭TAMA CINEMA FORUM」に参加されました。

 

森山 21年のカナザワ映画祭、22年の福岡インディペンデント映画祭以来の映画祭への参加だったんですが、ステージ上にお花が置かれていたり、初めて映画を観るお客さんもかなりいたり、いつものホームというか、緩い雰囲気とは違ったので(笑)、「ちゃんとしなきゃ」「しっかりしゃべらなきゃ」という身が引き締まる気持ちになりました。

 

──そして、12月の「MOOSIC LAB 2024」や池袋・新文芸坐での上映、年末年始のシアターセブンでの再上映や神戸・元町映画館の上映に続き、ついに1月13日(土)から池袋シネマ・ロサでの再上映が始まります。それを祝し、劇場の外看板を「野球どアホウ未亡人」が飾り、場内では振袖姿の森山さんの巨大タペストリーが迎えます。

 

森山 外看板のインパクトはすごいですよね……! 池袋の街中に突如としてあのビジュアルが現れるわけですから……実際に普段映画を見なさそうな方からも反応があって、これを機にミニシアターに初めて足を運ぶ方がいてくれたらなぁなんて夢見たりしています(笑)。着物も何枚か持っているほど和装は好きで、無条件にテンションが上がるので、事あるごとに着たくなるんですよ。今日、着付けていただいた(スタイリストの)CHAM TEDUKAさんの着物モデルも、一度させてもらったこともあるんです。

 

──このような広がりから、森山さん自身の「野球どアホウ未亡人」に対する捉え方は変わりましたか?

 

森山 作品を観てくださる人が増えていく中で思ったのが、お客さんの感想によって、映画の輪郭がどんどんハッキリしていったことです。作品を作っているときって、自分たちが面白いと思っていても、確かじゃないというか、どこかモヤモヤしている感じだったんですよ。でも、お客さんが「こういうところが面白い!」「こういう楽しみ方ができる!」といったことをどんどん発見してくださることで、「実はこういう映画だった」と教えてもらっているような気がします。それこそ、「私は野球だ」というワードも名言に思えてくるんですよね(笑)。

 

──今後、どのような展開に期待したいですか?

 

森山 まだまだ知られていないなか、すでに上映した場所でさらにどれだけ広げられるか? というフェーズにも入ってくると思うので、逆にめちゃくちゃ酷評されても面白いかなとも思うんですよ。今までいい意見がほとんどだった中で、そういう意見が出てきたら、こんな見方もあったのか! とよりこの映画のことが分かるような気がします。そんな状況が起こるぐらい、普段こういった映画に触れない方々にまで広い範囲に届けたいです。そして、北海道から沖縄まで、できるだけ多くの映画館に舞台あいさつに行って、全国どアホウ化計画を進行したいです!(笑)

 

乗馬ライセンスを活かせる役を演じたい!

──また、森山さんの趣味についてもお聞きします。劇中で披露した歌唱力の評価も高いですが、もともと音楽をやられていたんですか?

 

森山 私はずっと掲げている夢に「音楽映画とアクション映画に出たい」というものがあって、もともと音楽映画が好きだったんです。小学生の頃は「ハイスクール・ミュージカル」や「オペラ座の怪人」をよく観ていて、その後は「さよならくちびる」「味園ユニバース」「サヨナラまでの30分」といった作品が好きでした。でも、私自身は特に、楽器をやっていたとか歌のレッスンを受けていたわけではないんです。

 

──そんななか昨年10月に、Instagramに「野球どアホウ未亡人のテーマ」をギターで弾き語りしている動画が突然アップされました。

 

森山 「野球どアホウ未亡人」に出演した22年に、実はスリーピースガールズバンドの映画の出演が決まっていたんです。最終的に撮影前に企画が流れてしまったんですが、その役作りでギターレッスンを受けて、そのときはASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ソラニン」とか、きのこ帝国やHump Backの楽曲をカバーしていました。映画の話が流れた後もギターの練習はしていて、スタジオに入ったときに「持ち歌あるじゃん!」と、「野球どアホウ未亡人のテーマ」をカバーしたんです。あれはそのときの動画をアップしたんです。

 

──そんなわけで、2月11日のシネマート新宿での上映で「森山さんの弾き語りライブ」が行われることも決定しました。最後に2024年の抱負を教えてください。

 

森山 昔から馬好きで、念願の乗馬ライセンスを昨年取ることができたので、それを活かせるような役柄を演じたいです。そういう意味では商業映画にも出演したいですし、地方に住んでいる家族や友だちが気軽に見られるドラマやCMに出る機会もさらに増やせたらうれしいですね。

 

 

野球どアホウ未亡人

1月13日(土)〜26日(金)東京・池袋シネマ・ロサにて、カムバック上映
2月4日(日)長野・松本シネマセレクトにて上映
2月11日(日)「MOOSIC LAB 2024」東京・シネマート新宿にて上映(森山さんのミニライブあり)
3月2日(土)「野球どアホウ未亡人−1.0」」(応援上映+トーク)大阪ロフトプラスワンウエストにて上映

【映画「野球どアホウ未亡人」よりシーン写真】

(STAFF&CAST)
監督:小野峻志
脚本:堀 雄斗
プロデューサー:堀 雄斗
出演:森山みつき、井筒しま、秋斗、工藤潤矢、田中 陸、関 英雄、柳 涼、藤田健彦

(STORY)
夫の賢一(秋斗)を支える貞淑な妻・夏子(森山みつき)。ある日、草野球に出かけた賢一が突然亡くなり、絶望のなかで暮らす夏子だったが、賢一が所属していた草野球チーム・多摩川メッツの監督・重野(藤田健彦)から野球の才能を見いだされる。賢一の残した借金を返済するため、野球を始めることになった彼女は、重野からの激しい特訓を重ねるうちに、野球の快楽性にとりつかれる。さらに、義妹の春代(井筒しま)やプロ野球スカウトマンの古田(工藤潤矢)ら一癖も二癖もある人物に囲まれ、夏子は歩みを進めていく。

公式Twitter:https://twitter.com/ONOKANTOKU

 

撮影/河野優太 取材・文/くれい響 スタイリスト/GHAM TEDUKA