スポルティーバJ1月間ベストイレブン

識者による独自選考のJリーグ月間ベストイレブン。9月は、スポーツライターの篠幸彦氏に11人を選んでもらった。シーズンも終盤に入り、残り5試合。ラストスパートで活躍を見せている選手は誰か。


9月のJ1ベストイレブン。4戦中3勝したクラブの選手が中心だ

FW/大迫勇也(神戸)、細谷真大(柏)
MF/マテウス・サヴィオ(柏)、満田誠(広島)、山口蛍(神戸)、三戸舜介(新潟) 
DF/佐々木翔(広島)、本多勇喜(神戸)、ドウグラス・グローリ(福岡)、酒井高徳(神戸) 
GK/村上昌謙(福岡)

【会場をどよめかせたミドルシュート】

 9月の4戦のうち、3勝を挙げたのは、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島、アビスパ福岡、柏レイソルの4クラブ。好調を維持したこれらのクラブを中心にベスト11を選出した。

 まずFWは福岡の山岸祐也、広島の加藤陸次樹らも候補にいるなか、神戸の大迫勇也と柏の細谷真大の2トップを選んだ。

 大迫は得点こそ第29節横浜F・マリノス戦のPKによる1点のみだったが、ターゲットマンとしてキープ力は抜群だった。それだけでなく、とくに失速気味の8月からチームが復調してきた第28、29節は、前線からの守備も凄まじく、攻守においてクオリティの違いを見せつけた。

 細谷は4戦3得点と結果を残し、12得点で自身初の2ケタに乗せた。得点力のみならず、裏への抜け出しや強靭なキープ力、激しいプレッシングなど、前線であらゆるタスクを高いクオリティで精力的にこなし、まさにエースの活躍。9月に勝ち点9を積み上げ、残留争いからやや抜け出したか。

 続いてMFの両サイドハーフは、神戸の武藤嘉紀、福岡の紺野和也も選出に値するが、柏のマテウス・サヴィオとアルビレックス新潟の三戸舜介を選んだ。2人ともサイドがかぶっているため、三戸は右サイドで選出した。

 柏は第26節横浜FM戦に2−0で勝利し、そこから9月の3試合で複数得点を記録。守備の立て直しから得点力も上昇傾向にあり、その攻撃の中心に2得点3アシストのマテウス・サヴィオがいた。タイトな守備からのカウンターを主攻にするなかで、第29節北海道コンサドーレ札幌戦でインターセプトからの細谷の先制点アシストは鮮やかだった。

 武藤と最後まで悩んだ末に選んだ三戸は、注目のひとり。途中出場となった第27節ガンバ大阪戦で、ワンタッチで佐藤瑶大の股抜きから決めたゴールは圧巻。第28節の横浜FC戦での、ンドカ・ボニフェイスをかわしたワンタッチコントロールからのシュートも見事で、2試合連続で得点を記録。

 極めつけは、入りはしなかったものの、第29節川崎フロンターレ戦で同点弾の起点となったポスト直撃のミドルシュート。これは会場をどよめかせた。ライン間で巧みにボールを受けるセンス、ボールを持った時のアイディアとクオリティは、伊藤涼太郎(シント=トロイデン)を失った新潟のなかで、攻撃に違いを生み出せる存在だ。

【開幕から29試合フル出場のMF】

 ダブルボランチは福岡の前寛之と井手口陽介のコンビとも悩んだが、広島の満田誠と神戸の山口蛍を選出。

 広島が不調を抜け出したのと満田の復帰のタイミングがピタリと重なるのは、それだけではないにしてもこの男の影響力が絶大なことも事実だろう。第25節あたりからボランチでプレーすると、縦への鋭いパスと持ち前の前線を追い越すダイナミズムで広島の攻撃を力強く前進させた。

 強度の高い守備でも貢献し、このポジションでもハイクオリティな選手であると示し、加藤とマルコス・ジュニオールの2シャドーの選択肢を自然な形で成立させた。

 山口のクオリティは今さら言及するまでもないが、前線のハイプレスの背後で広範囲にボールを刈り取り続ける高強度の守備は傑出していた。とくに第28節、29節と2試合連続で無失点に抑えたゲームでは、山口の中盤での潰しが効いていた。

 潰し役でありながらここまでリーグ全試合フル出場は、タフであると同時に、カードをもらわないディフェンス技術も卓越していることの証明だ。

 DFはセンターバックで、神戸の山川哲史、広島の塩谷司、福岡の奈良竜樹、柏の犬飼智也ら、候補に値する選手が多かった。そのなかでサイドバックの枠をひとつ潰して神戸の本多勇喜、広島の佐々木翔、福岡のドウグラス・グローリの3人を選んだ。

 前述しているとおり、神戸は守備の強度を取り戻し、本多の対人守備の強さ、粘り強さは際立っていた。攻撃においても大迫へのロングフィード、両サイドへの鋭い展開など、高いフィード能力で起点にもなった。

 広島の佐々木の対人守備も称賛に値する。相手が狙ってくるサイドへの展開や抜け出しを、出足の鋭さと1対1の強さでことごとく潰し、ロングボールに対しても力強く跳ね返した。

 福岡の奈良、宮大樹らと形成する強固な3バックのなかでもドウグラス・グローリの守備は強力だった。FC東京のディエゴ・オリベイラ、名古屋グランパスの永井謙佑、柏のマテウス・サヴィオなど、対人守備の強さで相手のエース級に仕事をさせなかった。

 サイドバックには広島の志知孝明、中野就斗、柏の片山瑛一らも候補には入るが、神戸の酒井高徳を選出した。右サイドでの攻守における機動力、対人守備の強さで安定感をもたらした。なかでも天王山となった横浜FM戦でのエウベルとのマッチアップはハイライトだった。

【勝ち点を手繰り寄せたビッグセーブ】

 最後にGKの候補にはともに2試合のクリーンシートを記録した神戸の前川黛也、広島の大迫敬介らを挙げたが、今回は福岡の村上昌謙を選んだ。

 福岡はタイトな守備陣形と、鋭い寄せで枠内へシュートを打たせない守備をベースに9月を3勝1分の無敗で駆け抜けたが、数少ないピンチを村上のビッグセーブが救った。

 なかでも第27節名古屋戦での後半2分の永井の決定機、好調同士の対戦となった第28節柏戦では、前半12分に抜け出してきた山田雄士、後半アディショナルタイムにも細谷のシュートをストップし、勝ち点3を手繰り寄せた。

 最多4人を選出した神戸は、横浜FMとの天王山を制して好調時の勢いを取り戻しつつある。9月に掴んだこの勢いで、代表ウィーク後のラスト5試合を駆け抜け、悲願の初優勝達成なるか。