三笘薫、久保建英、鎌田大地…識者が選ぶ「今季、欧州で最も活躍した日本人選手は誰だ?」
欧州サッカー日本人選手番付(前)
欧州サッカーの2022〜23シーズンが幕を閉じようとしている。今季、欧州でプレーする日本人選手の数はさらに増え、各国の1部リーグのクラブに所属する選手だけで100人に迫ろうとしており、その全体像を把握するのは容易なことではない。誰が活躍をしているのか、その活躍度を測るのも同様に難しい。「リーグ、クラブのランク」「出場時間」「チームへの貢献度」などを総合して判断するしかない。
はたして今季、欧州で最も目覚ましい活躍を見せた日本人選手は誰か。今回は、日本や欧州のサッカーを長く取材してきた4人のジャーナリストに、それぞれトップ5を挙げてもらい、それをもとにランキング化した。
レアル・ソシエダのチャンピオンズリーグ出場に貢献した久保建英
驚くべきは三笘薫の出場時間
杉山茂樹
5位 鎌田大地(フランクフルト)
ヨーロッパリーグ(EL)優勝を飾った昨季がセンセーショナルだったぶん、今季の活躍は地味に映った。チャンピオンズリーグ(CL)でグループリーグを突破。ベスト16に進んだものの、セリエAの優勝チーム、ナポリには合計スコア0−5でなすすべもなく完敗した。
もっとやれるはずなのに――とは、鎌田のプレーを見ていて毎度思うことだ。出し尽くしていない。よく言えば、底が割れていない印象がある。攻撃的MF兼守備的MF。多機能型と言えるが、現状ではサイドでのプレーに芸がないことも確かだ。ミランに移籍すると言われる来季、そこでどんな選手像を描くことになるか。
4位 守田英正(スポルティング)
サンタクララからスポルティングに移籍した今季、アーセナル、トッテナム・ホットスパー、ユベントスといった欧州の強豪とCLとELで対戦。飛躍のシーズンになった。守備的MFとしてウルグアイ代表のマヌエル・ウガルテとともにチームの屋台骨を支えた。懐の深さを活かし、パスワークの拠点になった。
セルティックの旗手怜央もCLなどで捨てがたい活躍をしたが、両国内リーグのレベルを考慮し、守田は旗手を勝ると判断した。このふたりの代表チームにおける関係は、来季、あるいはその次のシーズン、それぞれがどのチームでプレーしているかに懸かっているのではないかと、勝手に推測する。
【点取り屋の地位を築いた古橋亨梧】
3位 古橋亨梧(セルティック)
UEFAランク9位のスコットランドリーグのレベルをどう見るかだが、セルティックはプレミアリーグに入れば有力な降格候補だろう。チャンピオンシップ(2部)ならば優勝候補かもしれないが、ブンデスリーガでいえば中位から下位だ。それでもCLに出場できるところに、セルティックに所属するうま味がある。
古橋はそこで27ゴールを挙げた。点取り屋としての地位を築いた。ベルギーリーグ(UEFAランク8位)の7位チーム(セルクル・ブルージュ)で22点を奪った上田との比較でも、勝ると考えるのが自然だろう。
2位 久保建英(レアル・ソシエダ)
カタールW杯を挟んで一皮剥けた。少年らしさが消え、逞しくなった。プレーの遂行能力が上昇したと言うべきか。レアル・マドリード所属のローン契約選手から、レアル・ソシエダに完全移籍した今季、初めの頃と終盤とで印象がいい意味で大きく変わった。
チームのスペインリーグ4位という結果に貢献。来季はいよいよCLデビューである。22歳になったばかりだ。三笘薫より4学年年下ということで、市場価値で上回る可能性がある。直進性、推進力、得点力、フェイントの切れ味がもう一歩増すことが、ビッグクラブでプレーする条件になる。
1位 三笘薫(ブライトン)
今季活躍した欧州組上位5人を独自に選ぼうとしたとき、プライオリティを与えたくなるのはCL、EL出場組だ。とりわけCL出場回数は、選手のステイタスを推し量るうえで、重要なデータになる。にもかかわらず、出場機会が国内リーグに限られた三笘を1番手に推す理由は、プレミアのレベルとブライトンの成績を勘案した結果だ。
驚くべきは出場時間で、カタールW杯直前にスタメンの座を掴むと、以降24試合中16試合でフルタイム出場を果たした。交代枠5人制下の左ウイングで、ここまでの選手は珍しい。効いている証だ。
シメオネも警戒した久保建英
小宮良之
5位 上田綺世(セルクル・ブルージュ)
ベルギーリーグには他に何人も日本人選手がいるが、22得点という突出した成績を残し、チームをプレーオフまで導いている。動き出しのよさ、マークの外し方はもともとの持ち味だが、そこにボールを呼び込めるようになり、後半戦はゴールラッシュとなった。
日本人離れした体格の強さで、ぶつかり合いながらゴール前に入り、空中戦でも強さを見せられる。今や止められない存在で、有力クラブが食指を動かすのは当然と言える。フライブルクの堂安律、セルティックの古橋亨梧、旗手怜央とも迷ったが、1年で3倍以上になったと言われる市場価値の高騰が飛躍の証だ。
【攻撃のアイデア光った守田英正】
4位 守田英正(スポルティング)
ポルトガルリーグで、ボランチながら6得点。間合いのよさやタイミングの駆け引きで、相手の逆を取るプレーは称賛に値した。10年前まで、日本人選手がポルトガルリーグで活躍すること自体、ほとんど夢物語だっただけに、「時代の変化の象徴」になった。
CLではグループリーグ3位入りに貢献し、ELでの準々決勝進出にも尽力。EL準々決勝で、イタリアの強豪ユベントスのフランス代表アドリアン・ラビオと互角に渡り合っている姿は雄々しく、隔世の感があった。攻撃面のアイデアはすでにトップレベルだ。
余談になるが、同じポルトガルリーグで、シーズンを通してゴールマウスを守った中村航輔(ポルティモネンセ)の活躍も、異国でプレーする日本人GKとして特記したい。
3位 鎌田大地(フランクフルト)
CLではグループリーグでトッテナム、マルセイユ、スポルティングを相手に3戦連続得点。決勝トーナメント進出の原動力になった。ナポリに敗れ、ベスト8こそならなかったが、そこに至る戦いは欧州の日本人選手の中でも抜群だった。昨シーズン、EL優勝の活躍がフロックではないことを証明した。
ブンデスリーガでも9得点という数字が際立つ。カタールW杯後は得点数が伸びなかったが、ボランチでのプレーが多くなったし、(シーズン後にフリーになることで)移籍報道の多さに悩まされただろうし、多くのW杯組と同じく消耗も余儀なくされていた。それでもシーズンが深まるほどにキレを増し、再び得点やアシストを連発。国内カップでも4得点で決勝進出に導いているのだから、圧巻のシーズンだったと言っていいだろう。
2位 三笘薫(ブライトン)
単騎でも襲いかかるドリブルのインパクトは、今シーズンの欧州リーグ日本人選手の主役に値するものだった。話題性は断トツのトップ。左サイドでボールを持つと、スタジアム中で「予感」が湧きたっていた。リバプール戦のアレクサンダー・アーノルド、マンチェスター・シティ戦のカイル・ウォーカーといった一線級のディフェンダーを翻弄する姿は痛快だった。
今シーズン、ウィンガーとしてはレアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオールと双璧を成した。カップ戦を含めて10得点だが、ほぼ同数のアシストを記録するなど、チームのFAカップ準決勝出場やプレミア上位進出の攻撃をけん引していた。
1位 久保建英(レアル・ソシエダ)
日本人として、ラ・リーガで初のCL出場をもたらした功績は大きい。結果的にそれをつかみ取ったアトレティコ・マドリード戦には敗れたものの、敵将ディエゴ・シメオネ監督が「久保は一番決定的な選手で、無効化する必要があった」と最大の警戒をしていたように、21歳でトッププレーヤーの仲間入りをしたと言える。
9得点した試合は9戦全勝と、シーズンを通した貢献も際立った。バルサ、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッドというビッグクラブを下す殊勲者になった点も評価に値するだろう。トップの一角、トップ下、左右のアタッカーなど複数のポジションで力を示し、ダビド・シルバなど左利き選手たちとのコンビネーションは芸術的だった。
(つづく)