韓国経済に忍び寄るスタグフレーションの危機
韓国経済にスタグフレーションが忍び寄る(写真・ loveallyson/PIXTA、イメージ)
韓国の中央銀行・韓国銀行が2023年の実質国内総生産(GDP)成長率予測を、1.6%から1.4%に下方修正した。1%台前半から半ばの経済成長率予測と、3%台中盤の物価上昇率が重なる「スタグフレーション」(物価高騰・低成長)という暗雲が立ち込めている。
1.4%予測は、アジア開発銀行(ADB)と国際通貨基金(IMF)、格付け会社のムーディーズ、韓国開発研究院(KDI)、韓国・ウリィ金融経営研究所などが示した1.5%よりも低い数値だ。
1.1%成長とさらなる景気下降も
韓国銀行は中国の景気回復速度が遅く先進国の金融不安が拡大した場合、成長率が1.1%まで下落する可能性もあると明らかにした。
李昌𨉷(イ・チャンヨン)総裁は「(成長率を1.4%に下方修正したことは)IT関連と半導体業界の景気や中国経済の回復速度が予想より遅れたことが最大の理由。中国の成長が内需中心であるため、周辺国に効果が伝わる速度が遅い」と話した。
さらに「韓国経済の年間の浮き沈みである『上低下高』パターンは維持されるとみられ、(下半期の景気の持ち直しは)四半期遅れる面がある」と説明した。
一方で、韓国銀行は2023年の年間物価上昇率の見通しを3.5%とし、2月の見通しを維持した。しかし物価の基礎的な流れを表す農産物および石油除外指数の上昇率の見通しは、2月時点の3.0%よりも0.3ポイント増となる3.3%までの上昇で修正した。
韓国銀行の金融通貨委員会は通貨政策方向決定会議を開き、2023年2月と4月に続いて基準金利を現在の水準の3.50%で凍結した。
韓国銀行の李総裁が「(低成長問題を)財政・通貨政策などの短期的な政策で解決しようとすれば、国家経済は簡単に壊れる」と指摘した。韓国経済が「長期低成長」に入ったという見方が広まる中、これを打開するために必要な社会的合意と構造改革がいまだ示されていないとの批判だ。
李総裁はさらに、「5〜10年以内に高齢者の貧困がさらに大きな社会問題になるだろう。労働、年金、教育を含む構造改革が必要だ」と強調した。
李総裁は「問題は、改革の必要性を認識してはいても当事者間の社会的妥協が難しく進捗がないこと。需要者ではなく供給者中心の議論を行っていては一歩も先に進めない」と批判した。
学生の大学での進路選択が人気の職業に就けるような専攻に集中する傾向がますます強まっていること、そして年金や外国人労働者をどう活用するかといった議論が硬直化しており、韓国経済の中では潜在力が強い産業分野であるサービスと医療の海外進出の妨げとなっている状況を指摘した。
歴代の韓国銀行総裁の発言や姿勢はこれまで、「曖昧さ」が美徳とされてきた。ところが李総裁は、社会・経済全般に関する直接的な物言いをためらわない。
李総裁は「なぜ韓国銀行総裁がこのような話をするのかと言われるが、こういった問題を構造的に解決できないまま金融緩和をしろとか金利を下げろといった要求があるからこそ、通貨政策に負担がかかる」と説明した。
(ソウル新聞)