スマホはいつ出るの? ファーウェイ日本のトップに製品ラインナップの戦略を聞いた
ファーウェイは5月24日、スマートウォッチの最上位モデル「HUAWEI WATCH Ultimate」など、新製品6モデルを発表しました。
米国による輸出禁止措置の対象となり、5Gモデムなど一部の先端半導体の調達が困難となっているファーウェイ。その中で、日本市場では意欲的に新製品を投入していますが、今後はどのように挑むのか。端末部門の日本・韓国地域の責任者を務める楊涛(ヤン・タオ)氏に聞きました。
世界で実績のある製品を、そのまま日本に持ってきているわけじゃない
―― 日本でウェアラブル製品の展開を進めるために、どのような取り組みが必要と考えていますか。
楊氏 日本の消費者は、製品の新しさや革新性のみならず、ユーザー体験や品質にいたるまで高い水準の要望を有しています。他社と同じような製品を投入して価格の安さを競っているようでは、日本市場では生き残れないでしょう。ですから、ファーウェイが日本に投入する製品は、特別なイノベーションを体現して、競争力があるような、それでいてユーザーにとって特別な価値をお届けできるような製品を選んで投入しています。
本日(5月24日)の発表会では、日本市場向けに6つの新製品を発表しました。日本市場では、世界のマーケットで実績のある製品をそのまま持ってきて発表している訳ではありません。それぞれの製品には、特徴的な機能があり、届けたいユーザー層も明確に定義しています。
たとえば、スマートウォッチの最上位モデル・HUAWEI WATCH Ultimateは、専門的なスポーツを趣味として楽しむビジネスパーソンを想定しています。この製品は、ビジネスでも趣味でも使える上質で頑丈なデザイン、ダイビングやクライミング、登山のような危険を伴うアクティビティにも対応できるワークアウトを計測。そして日々の健康管理にも役立てられる高度なヘルスケア機能を搭載しています。
また、「HUAWEI WATCH D」は、高血圧症の当事者や予備軍の方が、毎日の血圧計測を気楽にしていただけるように開発しました。家庭用の血圧計といえば、上腕を圧迫して血圧を計測するタイプが一般的ですが、体組成計のように大きな機械で、外出先まで持ち歩くのは不便です。HUAWEI WATCH Dは、厚生労働省の医療機器認定を受けた血圧計測機能を、スマートウォッチのサイズで実現しました。
ハードの完成度が高いだけでは不十分。データを役立てられることが重要
―― ファーウェイのウェアラブルデバイスは最も安価な「HUAWEI Band 8」でも8000円弱の価格帯ですが、競合他社では5000円前後の製品を投入しているメーカーもあり、そのメーカーは勢いがあるように見えます。ファーウェイは他社とどう差別化するのでしょうか。
楊氏 発表会でも少し触れましたが、ファーウェイはオールシナリオのユーザー体験に焦点を当てて、製品を開発しています。デバイス、ソフトウェア、データ分析、エコシステムといった多層のレイヤー構造を有しており、それぞれで差別化しています。これは、最終的には大きな違いとなってユーザー体験に現れます。
HUAWEI Band 8の例を挙げるなら、一度充電すれば2週間は電池持ちが持続し、心拍数や睡眠状態も計測できるなど、製品単体としても十分に高い完成度となっています。
ただ、ハードウェアとして完成度が高いだけでは不十分です。仮に良いデバイスを作れて良質なデータを取れたとしても、それでは意味がありません。重要なのは、実際にユーザーが健康管理に役立てられること。データを分析して、健康管理に役立つアドバイスを提供するアルゴリズムも重要です。
この点でも、ファーウェイはより洗練されたアルゴリズムを提供できるように専門機関と共同での研究開発を続けています。ファーウェイの睡眠モニタリング機能「HUAWEI TruSleep 3.0」では、レム睡眠とノンレム睡眠の比率、覚醒時間、呼吸の質などの指標を分析し、睡眠の質に応じた200種類以上の実践的なアドバイスを提供します。
アルゴリズムの研究開発が重要なのは、睡眠モニタリングに限りません。今回発表したスポーツ用センサー「HUAWEI S-TAG」では、特にランニングの分析に特化しており、ランニング時の姿勢や身体の揺れ方、足の接地角などのデータを取得し、多角的に表示できるようになっています。S-TAGではまた、日本企業のテクノクラフト社と提携し、ゴルフのフォーム分析ツールとして活用できるようにしています。この製品をより良いものへと昇華させていく過程では、専門分野の知見を有する専門機関との協力が欠かせないと考えています。
アルゴリズムの観点で、専門機関と協力して研究開発を持続しているのは、ファーウェイならではの強みだと考えています。スマートバンドで最初は安価な製品を選んだ消費者も、製品を知り、次の製品を選ぶ過程で、機能が充実したファーウェイ製品を選んでいただけると期待しています。
スマホはしかるべきタイミングで新製品を出したい
―― 「オールシナリオのユーザー体験」を実現するうえで、ファーウェイは中国でスマートフォンを中心に、家電、クルマなどさまざまなデバイスと連携する仕組みを構築しています。ただし、日本ではスマートフォンの新製品をここ2年投入していません。日本でのスマートフォンの製品展開の今後についてお聞かせください。
楊氏 ファーウェイは、ユーザー体験を重視しています。今回発表したHUAWEI WATCH UltimateやHUAWEI WATCH Dがそうであるように、日本市場においては、ユーザーにとってこの製品を選ぶ意味があるという、明確な価値を備えた製品を投入していきたいと考えています。そうしてユーザーから評価されて、そのフィードバックを次の製品開発に生かしていくことで、製品を育てていくことができると思います。
投入できる製品を片っ端から投入するようではユーザーとの良い信頼関係を築くことはできません。価値ある製品を厳選して投入しなければならないと考えています。
―― つまり、スマートフォンについては、今は日本で価値のある商品を投入するのが難しいと考えているということでしょうか。
楊氏 ファーウェイのスマホやタブレットは、さまざまな面で競争力がある製品を有していると考えています。しかしながら、その競争力を日本市場でも十全に発揮できるかといえば、今は難しいと考えています。
たとえば私が使っている折りたたみスマートフォン「HUAWEI Mate X3」は、フォルダブル型ながら高い耐久性のあるガラスを使用していたり、4万km離れた人工衛星と通信できたりと、さまざまなイノベーションが詰まっている製品です。中国国内以外でも、ヨーロッパや中東などですでに販売されています。
ただ、Mate X3は4G LTEのみの対応です。5Gが浸透している日本市場にはそぐわないかもしれません。また、アプリについても、日本向けの最適化にまだ少し課題が残されています。スマートフォンについても、しかるべきタイミングで新製品をご案内したいと考えています。今後の発表にご注目ください。
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