イオンが株主総会で提案する議案が異例の内容だ(写真はイメージ)

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流通大手のイオンが2023年5月26日に開く株主総会で提案する議案が異例の内容で、ツイッター上で注目が集まりつつある。定款の変更、具体的には第2条の「基本理念」の部分だ。変更前は260字程度だったが、変更後は2000字超の大ボリュームだ。基本理念が4月1日に改定され、それを定款にも反映したい考えだ。

従来の基本理念では「お客さま」を原点に「平和」「人間」「地域」の3つを掲げてきたが、改訂後はそれぞれについての考え方を詳細に記述。「平和」については600字程度を割き、岡田卓也名誉会長相談役が、「小売業の存在こそが平和の象徴であると実感した」エピソードなどが書き込まれている。

小売業は「平和産業であり、人間産業であり、地域産業」

これまでイオンのウェブサイトに掲載されていた「基本理念」は、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」というキャッチフレーズと、「平和」「人間」「地域」の3つを結んだ三角形の中に「お客さま」を描いた概念図、それを説明する6行の文章で構成されていた。

5月9日の取材に応じたコーポレート・コミュニケーション部によると、この書きぶりでは「理念が正確に伝わりにくかった」。そのため、改定作業を数年かけて進め、改定版を4月1日の入社式でお披露目した。検討を進める中でロシアによるウクライナ侵攻が始まった。イオンでは、ウクライナ侵攻を機に改定したわけではない、と説明している。

改訂後の基本理念では、冒頭部分で「小売業が平和産業であり、人間産業であり、地域産業であると信じ」るとして、それぞれの要素について解説している。平和については、次のように説明している。

戦後の売り出しで「小売業の存在こそが平和の象徴であると実感」

「平和は、戦争や災害からの復興にしても、平穏な生活の維持・増進にしても、能動的で意識的な関与なしにはもたらされません。こうした思いの原点には、岡田卓也名誉会長相談役の実体験があります。戦後、チラシを手にして店頭に並ばれたお客さまが『戦争が本当に終わったんだな』と涙された姿を見て、小売業の存在こそが平和の象徴であると実感したと言います。そこから、小売業が成り立つためには平和が大前提であり、小売業は平和の維持に貢献していかねばならないと決意したのです」
「平和は、わたしたちが能動的で意識的に関与することによってはじめて保たれるのです。イオンは平和に反することは決して行いません」

4月12日の発表では、定款変更を提案する理由を

「基本理念に基づく経営の実践をゆるぎないものとすること、また全てのステークホルダーに共感いただけるよう現行定款第2条の規定に関して、企業集団としての行動姿勢、想いを追加するものです」

と説明している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)