今季の国内メジャー初戦であるワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ(茨城GC西コース)は、強風が舞った3日目、大雨にたたられた最終日をしのぎきって、吉田優利が通算1オーバーで制した。

 2000年度に生まれたミレニアム世代の彼女にとって、2021年のゴルフ5レディス以来、1年8カ月ぶり3度目の優勝は、自身初のメジャータイトルとなった。

「3勝目までが結構長かったなと思いますけど、その分、特別な試合で勝つことができたし、頑張ってきたことは間違っていなかったなと思う」


ツアー3勝目を初の国内メジャー制覇で決めた吉田優利

 昨シーズンは2位が5回と、高次安定した成績を残したが、ついぞ優勝には届かなかった。

「もちろん、勝ちたい気持ちはすごく強かったですけど、勝てなくて2位が何回もあっても、評価してくださる方はいた。自分が思っている以上に、褒めていただけた。

 毎試合、頑張って、頑張った結果が優勝ゼロだったですけど、今はさらに先を見据えて、広い視野で自分のゴルフを見ているかなと思う」

 タフな気象条件、難度の高いコースセッティングの公式戦ではあるが、大会初日のラウンド後に、吉田は「相性がいい」と語っていた。

「毎年、いつもここから調子がよくなるイメージでシーズンを戦っている。気持ちよくゴルフができる、一番好きな試合です」

 相性のよさがそのままスコアにつながったのが、2日目だ。「69」で回って、ただひとりのアンダーパーとなる通算4アンダーで抜け出した。勝負は時の運とも言うが、吉田は日頃から運を引き寄せるために「徳を積む」ことを意識すると語った。

「簡単なことで言うと、ふだんからゴミを拾うとか、(車の通りが少ないような道路であっても)赤信号では絶対に渡らないとか、そういう人が見ていないところを美化していけたらと思っています。

 あと、周りの人に対する態度というか、姿勢。ゴルファーとしても、人間としても、一番大事なことだと意識しています」

 強風の3日目は、予選ラウンドでの"貯金"を使い果たしてイーブンに。それでも18番でバーディーフィニッシュを決め、2位と2打差をつけて明るく前を向いた。

「結果も、スコアも大事だけど、一番は自分がどんなゴルフをするのか。今日みたいに耐えつつ、(最終日は)全選手のなかで一番いいプレーをしたい」

 最終日に吉田を猛追したのが、ひとつ前の組で回っていた申ジエだった。吉田を含む多くのゴルファーがスコアを崩すなかで、申ジエは16番を終えて1打差に迫っていた。

 最終組の吉田がピンチを迎えたのは、16番パー4だ。第2打をグリーン脇のバンカーに入れてしまう。しかし、ピンまでの距離が短いバンカーショットをなんとかワンピンの距離に寄せ、外せば並ばれるパーパットを沈めてしのいだ。

 そして17番のロングでは、残り90ヤードの第3打をグリーン右サイドに落とし、左に位置するピンに寄せる"カニスピン"で1.5mにつける。申ジエとの差を2打に広げたこのバーディーパットが、事実上のウイニングパットと言えた。

「(17番の3打目は)見ている方々よりも自分のほうが冷静だったと思う。集中力は高かったなと思いますし、あのショットは完璧だったし、次に打つバーディーパットもいいラインにつけられた。

 勝負というのは、人との競い合いではあるけれど、相手がどれだけいいプレーをしようと、悪いプレーをしようと、自分がよければ自ずと結果はついてくる。相手がミスをしているからちょっと守りに入ろうというのは、好きじゃないプレースタイル。そういった意味では、今日は自分のゴルフを貫けたと思う」

 国内メジャーを制すれば、自然と吉田の視線も海外を向くのではないか。

「それは、これから考えようかなと。自分のキャリアを見据えるなかで、どうするべきか、これから先、判断していきたい。まずは目の前のことに集中して、今のままいい状態でゴルフを続けていけば、結果として年間女王につながるんじゃないかと思う」

 吉田が気に入っているという「優利」の名は、「優しく、有利なふうに生きていけるように」という両親の願いが込められているという。

 茨城GCの悪コンディションも、難しいセッティングも、吉田には"優利"に働いた4日間だった。