産経新聞社「120人リストラ」割増退職金は最大2000万円で「応募が殺到する」現役社員が語る社内の“ざわつき”
産経新聞東京本社が入居する東京サンケイビル(写真・PIXTA)
2023年、「産経新聞」が創刊90周年を迎える節目の年に、同紙を発行する産経新聞社に激震が走った。4月4日、会社側が労働組合に対し、120人の希望退職を募集することを通知したのだ。同社の関係者が語る。
「2023年10月31日時点で48歳以上、60歳未満の従業員が対象です。社内で話題になっているのは割増退職金で、48歳の正社員で1600万円、49歳で1750万円、50歳で1900万円が、通常の退職金に加えて支給されます。
もっとも支給額が大きいのは51〜54歳で、その割増額は2000万円。そこから額は減っていき、55歳で1600万円、57歳で840万円、58歳で680万円。59歳では560万円が支給されます」
8月22日から始まる募集期間を前に、社内はざわついているという。別の現役社員が語る。
「うちの会社は、2019年にもリストラをおこないました。当時の経営陣は『これで当面は人員整理をおこなわない』と明言していましたが、今回、簡単にひっくり返したことに、批判が広がっています。コロナ禍での収入急減と紙代の高騰で余力がなくなり、2024年度予算が赤字になる予想となったことが理由だといいます」
紙代の高騰は新聞社にとって死活問題だ。「朝日新聞」は、5月から朝夕刊セットの購読料を500円値上げし、4900円にすることを発表した。
「しかし、『読売』が少なくとも1年間は値上げしないと宣言したことで、経営陣は『うちも値上げできない。ではリストラでコストを抑えよう』と判断したようです。社内では、ネット対応などでひとりあたりの仕事量がかなり増え、経営陣に対して『人を大切に扱わない』という意見が出ています。希望退職には応募が殺到するのではないでしょうか」(前出・現役社員)
別の関係者も同意する。
「割増退職金の額は、前回のリストラのときより下がっているようですが、それでも『退職金が出るだけましだ』と、手をあげる人はたくさんいるとみられています。経営陣は、最終的に従業員数を数百人規模にまで減らすのではないかと囁かれています」
2018年度まで、従業員数2000人近くで推移してきた産経新聞社だが、会社概要によると、2023年3月31日時点では1557人まで減少している。今回の希望退職に、経営陣の思惑どおり120人の応募があれば“従業員数3ケタ”にさらに近づくことになる。
「前回のリストラの際、当時の社長は『将来のネット社会に対応する投資資金を確保する』と説明していました。しかし、米ワシントン・ポスト社が開発した編集システムを、高額な費用を出して導入したものの、追加の費用がかかってしまったうえ、うまく運用できませんでした。そのためか、2022年ごろから他社へ転職する社員が急に増えています」(前出・現役社員)
産経新聞社の広報部に、早期退職の実施や、割増退職金についての事実関係を問い合わせたところ、「お答えできることはありません」との回答だった。
前出の関係者は、こうため息をつく。
「希望退職に応募しても、大学の教員の職につくなど、理想的な転職をできる社員はごく一部です。どうすればいいんでしょうね」
去るも地獄、残るも――。