3月25日から5月28日にかけて、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国際リーグ「VALORANT Champions Tour 2023 Pacific League」(以下、VCT Pacific)が、韓国・ソウルにて開催されています。

6月に日本で行われる国際大会「Mastars Tokyo」への出場権をかけて戦う本リーグには、東南アジア・韓国・日本・南アジアより10チームが集結。日本からは、「ZETA DIVISION」と「DetonatioN FocusMe」の2チームが出場しています。

記事前半では、会場の「Sangam Colosseum」に関する情報や、日本2チームの開幕戦の模様をレポートを、記事後半では、試合直後の「DetonatioN FocusMe」xnfri選手への単独インタビューをお届けします。

韓国・ソウルの「Sangam Colosseum」にて「VCT Pacific」が開幕

AfreecaTVが運営するeスポーツ専用スタジアムで有観客開催

「VCT Pacific」は、シングルラウンドロビン(全チーム総当たり戦)のリーグプレイ、リーグプレイを勝ち抜いた6チームによるプレイオフ、そして最終2日間のセミファイナル・グランドファイナルと、3つのステージで構成されます。

リーグプレイとプレイオフが行われる会場は、韓国の配信プラットフォームAfreecaTVが運営する「Sangam Colosseum」。ソウルにあるS-Plexセンタービル内の14〜17階に設けられた、eスポーツ専用のスタジアムです。

試合は有観客。チケットは有料で、一般席のチケット価格が、10,000〜15,000ウォン(約1,000〜1,500円)です。日本のオフライン大会と比べるとチケットの安さに驚きますが、ステージを1から組み立てる必要がない、常設のeスポーツスタジアムだからこそ実現できる価格といえるでしょう。

最寄りはデジタルメディアシティ駅で、韓国の主要なテレビ局をはじめとする、メディアやITの企業が集結するエリアです。現地で観戦する場合、デジタルメディアシティ駅から会場のあるS-Plexセンタービルまで徒歩で20分ほどかかるため、電車ではなくタクシーで向かってもよいかもしれません。

また、グランドファイナルを含む最終2日間は、「Jangchung Stadium」に会場を移して開催されます。「Jangchung Stadium」では、過去に「PUBG Nations Cup 2019」が開催されており、現在「ZETA DIVISION」の『VALORANT』部門に所属するDep選手が、かつて『PUBG』日本代表チームのメンバーとしてそのステージに立ちました。今回、「ZETA DIVISION」が最終2日間まで勝ち進めば、Dep選手は4年ぶりに同じ会場のステージに立つことになります。

最寄りのデジタルメディアシティ駅付近は、メディアやITの企業が集結するエリア

会場の「Sangam Colosseum」が入っている、S-Plexセンタービルの入り口

S-Plexセンタービルの14〜17階が「Sangam Colosseum」

最終2日間の会場になる「Jangchung Stadium」。写真は「PUBG Nations Cup 2019」開催時のもの

手書きのファンボードでアピール! 物販やサイン会の実施も

S-Plexセンタービルに入ると、1階のエントランスには「VCT Pacific」の大きなボードが設置されています。「ZETA DIVISION」と韓国チーム「DRX」の試合が行われた初日には、ホームチームである「DRX」の物販ブースが設けられていました。

なお、2日目の試合直後には、このエントランスで「DetonatioN FocusMe」がサイン会を行っていました。サイン会の実施は事前に決まっておらず、直前に告知されるようです。これから現地へ観戦しに行く人は、チャンスを逃さないよう、各チームの公式Twitterなどで情報を随時チェックしておくとよいでしょう。

「Sangam Colosseum」がある階の通路には、ファンボードとペンが用意されていました。自由にメッセージやイラストを書き、客席で掲げてアピールできます。客席では、ほとんどの観客が思い思いに書いたファンボードを手にしていました。こうした応援方法も、現地観戦ならではの楽しみの1つです。

1階のエントランスでは、「VCT Pacific」の大きなボードとスパイクがお出迎え

初日には、韓国チーム「DRX」の物販ブースが設けられていた

チケット提示でもらえる「DRX」ファンボードと、SNSフォロー特典のトレーディングカード

Tシャツやフーディー、チームジャージなどのアパレルグッズが販売されていた

チームロゴや選手名が入った、シンプルで買いやすいキーホルダーやステッカーなども

会場の通路には、ファンボードとカラフルなペンが用意されている

手書きでメッセージやイラストを書き、客席で掲げてアピール

VCTのロゴが印された扉を開け、客席へ向かうと……

eスポーツ専用スタジアムならではの没入感あるステージが目の前に広がる

ファンボードには選手の似顔絵など、見事な腕前でイラストを描くファンもいた



強豪「DRX」相手に、アウェイのなか戦った「ZETA DIVISION」

初日の1試合目は、「DRX」対「ZETA DIVISION」。韓国の強豪チームである「DRX」は、2月から3月にかけてブラジルで行われた国際大会「VCT 2023 LOCK//IN サンパウロ」(以下、LOCK//IN)で、ベスト4まで上りつめる結果を残しています。

会場には「DRX」のファンが多く詰めかけており、「ZETA DIVISION」にとっては、かなりアウェイな空気のなかでの戦いになりました。しかし、争奪戦となった初日のチケットを入手し、日本から駆けつけた「ZETA DIVISION」ファンも複数いて、日本のファンによる応援の熱も感じられました。

試合は、1マップ目のアセントで、「ZETA DIVISION」がラウンドを連取する好スタートを切りますが、その後は一転して「DRX」がペースを握ります。2マップ目のパールでは、「DRX」による圧倒的な攻めを止めることができません。「ZETA DIVISION」としては苦しい内容が続き、マップカウント0-2での敗北となりました。

■試合結果

ZETA DIVISION [0-2] DRX

1マップ:5-13(アセント)

2マップ:5-13(パール)

オープニングでは、ステージ中央から両チームの選手が1人ずつ入場

ステージには選手の席が並び、さらにその上にはキャスター席が設けられている

こちらは英語配信のキャスター席。反対側には、韓国語配信のキャスター席があった

1階席の後方からの光景。ステージが近く、選手の姿を間近で観ることができる

初日は「DRX」のファンが多く詰めかけており、大きな歓声や拍手が送られた

争奪戦となった初日のチケットを入手し、日本から応援に駆けつけたファンも

会場に声を響かせ、成長した姿を見せた「DetonatioN FocusMe」

2日目の1試合目に行われたのは、シンガポールチームの「Paper Rex」対「DetonatioN FocusMe」。両チームともに「LOCK//IN」では初戦で敗退となりましたが、特に「DetonatioN FocusMe」は試合内容から、チームとしての完成度に不安が残っている状況でした。

しかし、今大会「DetonatioN FocusMe」は1マップ目のパールから、成長した戦いぶりを見せます。ラウンド差はあれど、あと一歩という非常に惜しいシーンが多く、内容ではあまり差を感じさせませんでした。なにより、2階席にいても十分に聞こえてくるほど声がよく出ていて、チームの雰囲気の良さが客席にも伝わっていました。

続く2マップ目のロータスでは、抜きつ抜かれつの接戦を繰り広げ、後半ではAnthem選手のエースが飛び出すなど、「DetonatioN FocusMe」はさらなる勢いを見せます。しかし、わずかに及ばず11-13で決着。マップカウント0-2で敗れましたが、「DetonatioN FocusMe」としては着実な成長を示すスタートとなりました。

なお、上から見下ろす形になる2階席からは、試合中の選手たちの手元の動きやリアクションなどがよく見え、ゲーム画面が表示されるモニターも見やすい位置にあります。会場の規模的に、距離もそれほど遠くありません。チケットの購入時は、映画館のように座席を指定して買うことができるため、空席の状況によっては2階席を選択するのもおすすめです。

■試合結果

DetonatioN FocusMe [0-2] Paper Rex

1マップ:5-13(パール)

2マップ:11-13(ロータス)

1マップ目から、成長した戦いぶりを見せた「DetonatioN FocusMe」

試合中の選手たちの声は、2階席でも十分に聞こえてくるほどだった

2階席の中程からの光景。選手たちの姿が見やすく、モニターも見やすい位置にある

2日目にも、複数の「DetonatioN FocusMe」ファンが日本から応援に駆けつけていた

試合を終え、グータッチで挨拶をする両チーム



試合直後の「DetonatioN FocusMe」xnfri選手にインタビュー

「Paper Rex」との初戦を終えた「DetonatioN FocusMe」のxnfri選手に、会場にて単独インタビューを行いました。「LOCK//IN」出場からの変化や成長、韓国のゲーミングハウスでの生活などについて聞いています。

試合直後、インタビューに応じてくれたxnfri選手

――まずは、「Paper Rex」との初戦を終えて、感想や手応えを教えてください。

xnfri:結果としては0-2で負けてしまったんですけど、内容的には全然悪くはなく、むしろ良かったと思います。やはりまだ場数を踏めていないので、ラウンドの終盤や少人数戦で焦ってしまうことが多く、そういう小さなミスの積み重ねが負けにつながりました。負けたことは悔しいですが、感触はすごく良かったです。

――皆さんすごく声が出ていて、試合中の雰囲気がとても良さそうでした。「LOCK//IN」のときと比べていかがでしたか?

xnfri:「LOCK//IN」以降、チーム内での役割なども結構変えて、それが上手くハマりそうだという状況がありました。練習での出来も良かったので、「LOCK//IN」よりも気持ちの余裕があって、良い雰囲気につながっていたと思います。

――これまで「DetonatioN FocusMe」は、チームづくりの面で苦戦していたように見えました。チームづくりのどういったところが難しかったでしょうか?

xnfri:選手の実力とは別に、相性も存在すると思うのですが、なかなか相性というのは測りづらいものです。お互いの特性をしっかりと活かせれば強みになりますが、そこが難しいなと感じます。

――今日の試合を通して、特に成長の手応えを感じたのはどんなところでしたか?

xnfri:以前より、敵の動きの読みが的確にできている感覚はありました。実際どうだったのかは、まだ試合を見返していないのでわからないですが。ただ、今回は本当に小さなミスの積み重ねで負けてしまっただけで、大きな動きは上手くいっていたのではないかと思います。

――今のチームの完成度は何%くらいに感じますか?

xnfri:……15%です。

――今日の内容でも、まだたったの15%ですか!?

xnfri:そうですね。やっぱり、まだまだ時間がかかります。今日戦った「Paper Rex」は、もう2年くらい同じメンバーで一緒にやってきているチームです。連携の面でも、お互いのやりたいことを瞬時に理解できるようになるには時間が必要なので、伸びしろしかないと思っています。

――現時点で15%ということは、「LOCK//IN」のときは何%だったのでしょうか?

xnfri:「LOCK//IN」のときは……忘れました(笑)。別にあのときも悪かったのかというと何とも言えないですが、力を出し切れなかった部分が大きかったです。

試合中のxnfri選手

――長期リーグということで韓国に拠点を移されていますが、韓国での生活はいかがですか?

xnfri:韓国で生活を始めてから、2週間半くらい経ちました。韓国語が話せないなかで、韓国人メンバーのSuggestやSeoldam、コーチ陣やスタッフの方々が手伝ってくれて、すごく助かっています。日本のほうが過ごしやすいとは感じますが、悪くはないです。

――チームでの共同生活ならではのエピソードがあれば教えてください。

xnfri:自分は3LDKのところにReitaさんと一緒に住んでいるんですけど、Reitaさんは几帳面できれい好きで、かつ1人の時間を大切にしていますね。朝の3〜4時ごろに練習が終わって帰ってくると、すぐに部屋のドアを閉めてしまうんです。僕はしゃべりたい派なので、ちょっと悲しいです(笑)。

――試合がない日は、1日をどのような練習スケジュールで過ごしていますか?

xnfri:13〜14時ごろに集合して、まず今日は何をするかといったブリーフィングを1〜2時間くらいします。練習試合が21〜22時ごろまであって、そのあとの反省会が2〜3時間くらい。それ以降の時間は自由な個人練習で、僕は朝の4時までと決めていますが、朝の7時くらいまでやっているメンバーもいますね。もうずっと『VALORANT』です。

――スクリムは2マップを1セットで組むことが多いそうですが、1日何セットくらい行っていますか?

xnfri:一昨年や去年は2マップずつスクリムしていたのですが、今年は1マップずつ希望を出して、それを受けてくれるチームと練習する形になっています。1日あたりのスクリムは、6〜7マップくらいですね。3マップと3マップ、もしくは4マップと3マップに分けて、間に1時間の休憩を挟んで練習しています。

――それでは最後に、ファンの方々に向けたメッセージをお願いします。

xnfri:いつも応援してくださっている皆さん、本当にありがとうございます。初戦は負けてしまいましたが、これからどんどん成長できるチームだということを見せられたかなと思います。これからも応援し続けてもらえたらうれしいです。必ず勝って「Masters Tokyo」に出場します。

――xnfri選手、ありがとうございました!

5月末まで続く長期リーグ、現地会場で観戦するチャンス!

開幕戦では黒星スタートとなった日本2チームですが、「VCT Pacific」はまだ始まったばかり。総当たり戦で行われるリーグプレイは、Week8(5月12日〜16日)まで続きます。リーグのなかで日本2チームがどのような成長を見せてくれるのか、期待して応援しましょう。

そして、長期にわたるリーグだからこそ、ファンにとっては現地に行って観戦するチャンスでもあります。韓国で特に人気が高い「DRX」が出場する日などは、チケットがすでに売り切れている傾向にありますが、現時点ではまだ日本2チームが出場する日のチケットも残っています。

リーグプレイの期間は、日ごとの対戦スケジュールが事前に確定しているため、現地に向かう計画も立てやすいでしょう。ソウルには、Riot Gamesが運営する『League of Legends』のeスポーツ施設「LoL PARK」もあります。ぜひこの機会に、eスポーツが盛んな韓国に足を運び、国際リーグを生で体感してみてはいかがでしょうか。

■「VCT Pacific」開催スケジュール

リーグプレイ:3月25日〜5月16日

プレイオフ:5月19日〜5月22日

セミファイナル・グランドファイナル:5月27日・28日

「VCT Pacific」に出場する10チーム

5月16日まで行われるリーグプレイの対戦スケジュール

リーグプレイの順位に応じて配置されるプレイオフのトーナメント表

「LoL PARK」には専用スタジアムやグッズショップ、PCバン、カフェなどがある

試合が行われている日は、チケットがなくともスタジアム外のモニターで観戦可能