痛み止めの飲みすぎに注意 医師が副作用や効かなくなる危険を解説

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歯痛や生理痛、頭痛などのときに、痛み止めの薬を飲むべきかどうか、迷う人も多いのではないでしょうか。「痛み止めを飲みすぎるとクセになり、効かなくなる」という話も聞いたことがあって、気軽に手を出せないという人もいるかもしれません。正しい痛み止めとの付き合い方について、森本内科・循環器科の森本先生にMedical DOC編集部が聞きました。

痛み止め(鎮痛薬)とはどんな薬? 市販薬と病院で処方される薬の違いとは

編集部

そもそも痛み止めとはどのような薬なのでしょうか?

森本先生

痛み止めの薬にはさまざまな種類がありますが、一般的に手に取りやすいものの多くは「解熱消炎鎮痛剤」です。痛みを抑えるだけでなく、炎症を取り除く効果もあり、炎症を取り除くことで痛みが緩和される、という仕組みです。

編集部

ドラッグストアではさまざまな痛み止めが売られていて、どれを選ぶか迷ってしまいます。

森本先生

市販されているものでもさまざまなので、迷ってしまうのも当然かもしれません。まず、多くの人が痛み止めと聞いて思い浮かべるのは、ロキソニンやボルタレンなどでしょう。これらは、NsAIDs(非ステロイド消炎鎮痛薬)という種類の痛み止め。簡単にいうと、炎症の元となるプロスタグランジンなどの物質の産生を抑えることで痛みを鎮めるのです。

編集部

ほかに市販で流通しているものには、どういうものがありますか?

森本先生

たとえば新型コロナウイルスのワクチンを受けたあと、痛みや発熱があった場合に推奨されたカロナールは、アセトアミノフェンという種類の痛み止め。NSAIDsが解熱、鎮痛、抗炎症作用があるのに比べ、アセトアミノフェンは解熱と鎮痛のみで、抗炎症作用は少ないと言われています。また、副作用が少なく、子どもでも服用しやすいとされています。

編集部

痛み止めは市販薬のほか、病院で処方されることもありますが、違いはあるのですか?

森本先生

たとえば痛み止めのロキソニンは、病院で処方されるときには「ロキソニン」、ドラッグストアで購入するときには「ロキソニンS」という名称がついています。ロキソニンの場合は、成分、成分量、錠剤の大きさもまったく同じです。

編集部

そうなるとわざわざ病院で処方してもらわなくても、市販薬で済ませられるということですか?

森本先生

いいえ、注意しなければならないのはそれぞれ用量・用法が違うということです。「ロキソニンS」は短期の使用が原則。痛みや熱の症状がひどい時に、応急処置として用います。一方「ロキソニン」は適応の幅が広く、医師の指示に従うことで、さまざまな症状に適応することができます。

編集部

確かに頭痛や歯痛など、さまざまな痛みでロキソニンが処方されます。

森本先生

ロキソニンは幅広い痛みに効果があるのですが、その反面、腎臓への負担がかかるという特徴があります。また、胃が荒らされることも多いので、病院では胃粘膜の保護剤とともに処方することも少なくありません。また、ロキソニンに対してアレルギー反応を示す人もいますし、日光過敏症のリスクにもなります。このように、ロキソニンはとても便利な薬である反面、危険な側面もあるので、自己判断でロキソニンSを飲み続けることは控えましょう。

痛み止めを頻繁・大量に飲みすぎるとどうなる? 頭痛や胃痛・吐き気、腎臓への障害が出るって本当?

編集部

歯痛や頭痛のときなど、頻繁に痛み止めを使っています。でも、しょっちゅう飲むのは良くないと聞いたのですが、本当ですか?

森本先生

本当です。定められた用法・用量を守らずに使いすぎると、胃腸障害、頭痛、腎障害などが起きることがあります。痛み止めの多くはNSAIDsであり、これは、痛みの元であるプロスタグランジンが作られるのを抑制します。しかしプロスタグランジンには、胃の粘膜を保護する作用もあります。そのためこれらの働きが阻害され、障害が起きてしまうのです。

編集部

具体的に、どのような症状が起きるのですか?

森本先生

たとえば食欲不振や、胃の不快感、吐き気、頭痛、目がチカチカする、動悸がする、発熱、悪寒がするなどです。気になる症状が出た場合はすぐに服用を中止して、医師の診察を受けるようにしましょう。

編集部

一度にたくさん飲むのもダメなのですか?

森本先生

痛いからといって一度にたくさん服用すると、副作用の危険性が高くなります。また、定められた間隔を空けずに飲んでしまうのも危険です。必ず、定められた間隔をあけ、用法用量を守るようにしましょう。

痛み止めの飲みすぎは「効かなくなる」と聞いたけど本当? 薬の正しい用法・用量を守る大切さとは

編集部

痛み止めの飲みすぎは、効かなくなっていくと聞きました。

森本先生

同じ痛み止めを長く飲み続けると、体がその薬に慣れてしまい、効かなくなってしまうことがあります。また、市販流通しているものにも副作用がありますから、重篤な症状に陥る場合もあります。

編集部

それでも、痛みを我慢できないときはどうしたら良いのですか?

森本先生

その場合は医師や歯科医、薬剤師などに相談して、痛み止めの種類を変えてみることをおすすめします。痛み止めにはさまざまなタイプがあり、それぞれ機序が異なるので、「この種類は効かないけれど、これなら効く」ということが少なくありません。

編集部

なるほど。痛み止めの種類を変えるなどの対処も有効なのですね。

森本先生

また、痛み止めを使わなくとも、理学療法や赤外線治療などが痛みを改善してくれることもあります。たとえば肩こりや腰痛に悩んでいる場合は、理学療法や整体、筋膜リリースなどの施術が効くことも少なくありません。このように、ひとつの症状に対してさまざまなアプローチをかけることを「マルチモーダル治療」といい、特定の治療を深く行うのではなく、さまざまな治療を広く浅く行う方が、治療効果が高い場合もあります。

編集部

痛み止めを正しく使うために覚えておくべきことはありますか?

森本先生

痛み止めは、非常に早く効果があらわれます。そのため、もし痛みが我慢できないようならあまり我慢せず、早めに服用しましょう。そして、痛みがおさまったらキッパリ服用するのをやめることです。長期間にわたってだらだらと服用し続けるのではなく、痛みがおさまって「もう大丈夫」と思ったら、スパッとやめることが大切になります。

編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば聞かせてください。

森本先生

「痛み止めは極力飲まない」という方もいますが、痛みは我慢すべきものではありません。病院に行けない場合は、応急処置として市販の薬を使いましょう。ただし、痛み止めは対症療法であり、根本的に痛みを治療するには痛みの原因を見つけ、治療することが必要です。ただの痛みではなく、もしかしたら、大きな病気が原因になっているかもしれません。そのため、痛みが出たらできる限り早く病院で診察を受けましょう。

編集部まとめ

痛み止めはドラッグストアなどで簡単に入手できるので、あまり抵抗なく気軽に使っている人も多いのでは? しかし適切な使用法を守らないと、薬が効かなくなるばかりでなく副作用を引き起こすこともあります。市販の痛み止めは応急処置として考え、病院で診察を受けるようにしましょう。

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