「背中ニキビ」を防ぐ方法や治療法、原因を皮膚科医が解説!
顔だけでなく、背中や肩などにも発症することがあるニキビ。はたして、フェイスケアと同じ方法で防げるのだろうか。夏場など、肌を出すことの多い機会に増える背中ニキビの謎を、「宮前平すずらん皮ふ科クリニック」の鈴木先生に解説いただいた。
監修医師:
鈴木 医師(宮前平すずらん皮ふ科クリニック 院長)
名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学病院、名古屋市立東市民病院(現・名古屋市立東部医療センター)、愛知県内の大学関連病院、東京都内の皮膚科クリニック勤務を経た2014年、神奈川県川崎市内に「宮前平すずらん皮ふ科クリニック」開院。女性医師によるきめ細やかな診療と相談しやすい環境に配慮し、日常的な悩みから専門的な治療まで対応している。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会の各所属。
背中ニキビの原因は?
編集部
背中のニキビに悩んでいるのですが、顔のニキビと同じものですか?
鈴木先生
基本的には同じニキビです。どちらも「アクネ菌」が毛包に炎症をおこすことで発症し、腫れや化のうの度合いが次第に強くなっていきます。早めにケアを始めましょう。
編集部
基本的には同じなのですね。背中のニキビに例外はないのでしょうか?
鈴木先生
実は、あります。「マラセチア」というカビが原因となる、背中ニキビです。ただし、マラセチアによる背中ニキビは汗っかきの人に夏場に一過性にみられるもので、ひどく化膿(かのう)したり瘢痕が残ったりするような事態には発展しません。
編集部
顔と同じニキビのほうが治療は難しいのですか?
鈴木先生
そう思います。まず、お顔と同じようなケアをしてみるといいでしょう。大半の方は、このタイプですからね。それでも効き目がなかったら、マラセチア菌ニキビを疑いましょう。もちろんどちらのタイプも、お薬で治すことができます。
編集部
どうして背中にできやすいのですか?
鈴木先生
背中に限らず、胸のVゾーンにできる方もいらっしゃいます。顔、背中、胸は、皮脂腺が発達していてニキビの好発部位なのです。また、長髪の方の場合、リンスやトリートメントのすすぎ残しに含まれる油分なども悪化原因になりえます。洗髪の後、体を洗い、最後に洗顔をするという順番がおすすめですよ。
編集部
ムレ防止のために、保湿ケアをしないほうがいいのでしょうか?
鈴木先生
逆に、保湿はしないとダメです。皮膚の一時的な乾燥を補おうとして、皮脂がより過剰に分泌されるからです。ワセリンや油性クリームなどの油分を多く含むスキンケア商品は避けて、水を基剤としたサラっとしたものにしてください。できれば、ノンコメドジェニックと記載された基礎化粧品の使用をおすすめします。
背中ニキビの治療法
編集部
皮膚科などの医院では、どのようなニキビ対策をしてくれるのでしょう?
鈴木先生
ニキビはお薬で治せる時代になりました。まず、そのことを知っておいていただきたいですね。通常のニキビに対しては、皮脂の詰まりを溶かすぬり薬と抗菌薬の併用が有効です。他方、マラセチアの背中ニキビには、カビの繁殖を防ぐクリームを処方します。これらはもちろん、保険でうけられる治療です。さらにきれいにしたい場合、毛穴のつまりをとかすケミカルピーリングという自費の治療もあります。
編集部
アクネ菌とマラセチアの両方のニキビが混在していることはないのですか?
鈴木先生
ありますよ。そのような場合は、程度や時期を見てのみ薬と塗り薬で別々の治療法を用いることもあります。
編集部
通常のニキビを放置しているとどうなるのでしょう?
鈴木先生
一生残る「瘢痕」ができてしまいかねません。通常のニキビは慢性に経過する「病気」であることを知っておいてください。初期段階は、毛穴の詰まりによる「白ニキビ」です。みなさんが想像しているような「赤いボツボツ」ではなく、ごくごく小さな「白い点」で、わずかに触ってザラザラする程度です。この段階で治療を開始すると、跡が残りません。
編集部
白ニキビの次の段階が、いわゆる「普通のニキビ」なのですね?
鈴木先生
はい。炎症を伴い赤く腫れるので、「赤ニキビ」と呼んでいます。この段階でも、塗り薬やのみ薬できれいに治せます。ところが、「ニキビを病院で治す」という発想のない方がいらっしゃるのです。そのまま放置していると、やがて膿がたまりニキビがつぶれ、傷跡になってしまうでしょう。
背中ニキビを防ぐための対策
編集部
ニキビ対策は、いつ頃から始めるべきですか?
鈴木先生
思春期のホルモンで皮脂腺が発達し、皮脂で毛穴がつまり始めます。女の子で早くて10歳、男の子で12歳くらいでしょうか。顔のTゾーンの皮膚がザラっとしてきたら、「白ニキビ」かもしれませんので、皮膚科を受診してください。また、そのころから、朝晩の洗顔と保湿が必要になってきます。
編集部
通常のニキビのほうが“やっかい”なんですよね?
鈴木先生
そのとおりなのですが、それだけ、いいお薬も出ています。保険で処方できる本数には月に2本までなどの制限がありますので、数カ月ごとに定期健診を受け、お薬をもらいに来てください。思春期を過ぎ、皮脂の分泌が安定してくるまでは頑張りましょう。
編集部
市販薬や通販などで買える薬はどうなのでしょう?
鈴木先生
やっぱり、医院の処方薬には劣りますよね。あと、通販って、付属品として付いてくるグッズがあるじゃないですか。洗顔ブラシみたいなものとか。医師からすると、お肌を傷めてしまうものが散見されるので心配です。あと、スクラブ洗顔もお肌を傷つけるのでおすすめしません。
編集部
ニキビかな? と思ったら、早めに皮膚科を受診したほうが良さそうですね。
鈴木先生
はい。また、女性の一部に、ホルモン系の疾患を抱えていらっしゃる方がいらっしゃいます。例えば、多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)症候群の症状のひとつとして、ひどいニキビがあるんですね。そのような場合、皮膚科で診断して、婦人科の受診をお勧めすることもあります。いずれにしても、入口は皮膚科でいいでしょう。
編集部まとめ
背中ニキビ対策は、大きく2パターンにわかれそうです。1つは、夏のシーズンのみ発疹が見受けられるパターン。この場合は、マセラチアによる可能性が高く、ぬり薬で落ち着いていくとのこと。もう1つは、秋や冬になってもニキビが残っている通常ニキビのパターン。この場合は、ニキビ跡を残さないように早めに専門的な治療を受けましょう。