【闘病】小6で脳出血になることも! 「脳動静脈奇形」とリハビリ生活

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突然の脳動静脈奇形破裂により脳出血を起こし、脳卒中を患った和田栞さん。発症当時小学校6年生で、それまでやっていたバレエやダンスなどが一切できなくなってしまったそうです。和田さんは「脳動静脈奇形という先天性の病気があって、子どもでも、若い人でも脳出血することがあるということを知ってほしい」と言います。今回は、和田さんの闘病体験を通して、脳動静脈奇形について知っていきたいと思います。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年4月取材。

体験者プロフィール:
和田 栞

東京都在住、2007年生まれ。2019年、小学6年生のときに突然、脳動静脈奇形破裂による脳出血を起こし、開頭手術を行い一命を取り留めた。急性期病院で約1か月過ごし、回復期病院に転院。退院後、中学校に入学。在学中は1か月間休みをもらい、大学病院でhands療法を計2回行う。2021年5月、手術では取り切れなかった未破裂の脳動静脈奇形に対して放射線治療(ガンマナイフ)を行い、現在は経過観察中。学校では、生徒会や自主リハビリ、部活に励んでいる。また、ネットを通じて脳動静脈奇形の難病指定を求め署名活動を行っている(小児は難病指定になっているが、大人はなっていないため)。

記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

小学生だったある日、突然起こった脳動静脈奇形破裂

編集部

脳卒中を起こしたときの経緯について教えてください。

和田さん

小学6年生のときのある朝、突然、脳動静脈奇形が破裂して脳出血を起こしました。それまでは子どもということもあって、頭(脳)の精密検査はしたことがありませんでした。やがて急性期病院に運ばれ、すぐにCTを撮りました。脳出血でも脳幹にまで出血が到達していたので、そこにいた医師のみなさんが助からないだろうと言っていたそうです。「子どもの脳出血なので、脳動静脈奇形破裂によるものだと思う」とのことで、即開頭手術が始まりました。手術を受けた結果、やはり脳動静脈奇形破裂による脳出血でした。

編集部

前兆などはまったくなかったのでしょうか?

和田さん

私は覚えていないのですが、その日の朝4時半に一度泣きながら頭が痛いと言ったそうです。母からは、季節柄、インフルエンザか風邪だと思って熱を測り(熱はなし)、「朝に小児科へ連れて行くからそれまで寝てましょうね」と言われ、私は再度寝たらしいです。このときは、会話もできていたようです。6時半に母が私の様子を見ると、嘔吐があり、呼びかけにも何も答えず、すでに麻痺も始まり、瞳孔が開いていたといいます。

編集部

それは危険そうですね。どのように治療を進めていくと説明がありましたか?

和田さん

急性期病院に運ばれたときは、「手術を行っても90%助からないと覚悟してください」と言われたそうです。それでも、開頭手術を行わないと2~3時間ももたないとも告げられ、すぐに手術を行うことになりました。病状が安定して意識を取り戻したところで急性期病院でのリハビリの説明を受けました。

編集部

なるほど。そこからリハビリ生活がはじまるのですね。

和田さん

はい。1か月後に回復期病院へ転院し、そこでもリハビリの説明を受けました。回復期病院のリハビリを終了した後に、再度急性期病院でCTやMRI検査を行い、まだ頭の奥に未破裂の細かい脳動静脈奇形があることを説明されました。また、ガンマナイフを1年後に行う予定であることも教えてもらいました。結局、ガンマナイフは2021年5月に受けました。受けての結果は、あと3年ほど効果が見えるまでに時間がかかるそうです。

編集部

急性期病院ではどのようなリハビリを行ったのでしょうか?

和田さん

急性期病院でのリハビリは、驚くことに開頭手術翌日の意識のない、まだ病状も安定していないときから始まっていたそうです。初めは10分程度、麻痺側のマッサージや手足の屈折を理学療法士が、1日に何度かICUに来て行っていました。意識が戻ってからは血圧を計測しながら少しずつベッドの角度を上げて、麻痺していない手足の屈折も併せて行いました。急性期病院にいる間はまだ首も座っておらず、嚥下のリハビリも行っていましたが、好きだったアイスも食べることができませんでした。また介助されて車いすに乗っても、血圧がすぐに下がりリハビリ室へ行くことも困難でした。

編集部

リハビリを継続して行うために転院もされたそうですね。

和田さん

はい。ソーシャルワーカーから「もっとリハビリの時間が増えれば、子どもなので回復が期待できるかもしれない。ここ(病院)はお正月休みでリハビリができないから、明日からお正月休みのない回復期のリハビリ病院に転院したほうが良い」と言われ、突然転院が決まりました。急いで転院できる病院を見つけてくださったそうで、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

編集部

回復期病院ではどのようなリハビリを行ったのでしょうか?

和田さん

回復期でのリハビリは、理学療法、作業療法、心理療法、言語療法を1日4時間、149日間休まず行いながら、合間に院内学級で2時間勉強、その後、自主リハビリを毎日1時間行っていました。

同病の人たちとの交流が心の支えに

編集部

脳卒中だとご自身で理解したときの心境について教えてください。

和田さん

意識障害や記憶障害があり、理解できたのは、脳出血から1か月半後でした。当たり前ですが、すでに体が思うように動きませんでした。必死にリハビリを行って、初めの1年間は元に戻るものだと信じていました。ですが、まったく戻らず後遺症に苦しい思いをする日もありました。

編集部

そのような気持ちの中、和田さんの心の支えになったものはなんでしょうか?

和田さん

SNSで自分の病気を公開しているのですが、励ましてくださるみなさんが心の支えになっています。同じ病気の方も多く、一体感があります。誰かが頑張っていると「私もやってやるぞ!」という気持ちになって、相乗効果が生まれます。体が不自由になって「〇〇ができなくなってしまった」というよりは、「〇〇もできるようになりました!」と思えるようになりました。

編集部

発症してから生活面ではどのような変化がありましたか?

和田さん

私はバレエやダンスなど、習い事をたくさんしていたのですが、一つもできなくなってしまいました。電車やバスを利用して一人で通うこともしていましたが、今では視野欠損や肢体不自由もあり、近所でも介助者が必要です。学校も普通校から特別支援学校になり、通院や入院で休むことも多くなりました。両手を使っての動作は意外と多く、まだまだ苦戦していて、一つずつ克服していっています。コロナ禍ということもあり、直接友達に会っての交流というよりSNSを使って同病の方とつながったり、同じ障がいの方から生活面でのヒントをいただいたりしています。学校も通えないときはオンライン授業を受けることができ、この部分では恵まれています。

編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

和田さん

外は車いす、室内は装具と杖で歩いています。病気前はバレエや激しいダンスやミュージカルのレッスンを受けていたのですが、病気後は運動量が減ってしまい、かなり体重も増えてしまいました。身体が不自由だと頭(脳)からの指令なのか、生理不順にもなっています。片頭痛もあり、痛みがひどいときには再出血なのかもしれないという不安があります。また、右片麻痺、右視野欠損、斜視、複視、高次脳機能障害、失語症の後遺症があります。

編集部

学校生活はどうですか?

和田さん

未破裂の脳動静脈奇形が破裂する不安と闘いながらも、学校では生徒会に所属したり、部活のハンドサッカーをやったりしています。土日は、自主リハビリにも励んでいます。

子どもの周囲にいる大人がこの病気を知ることが大事

編集部

あなたの病気を意識していない人にメッセージをお願いします。

和田さん

私の病気は、元気な子どもや若い方が突然脳出血やてんかんを起こすこともある病気です。子どもを見ている大人が脳動静脈奇形の存在を知らず、救急搬送を遅らせてしまうこともあります。親御さんは少しでも変化に気づき、不安を感じた場合は、病院へ連れて行ってあげてください。子どもだから、若いから大丈夫だと考えず、念のため精密検査をして、何もなかったときに安心したほうが良いと思います。

編集部

医療従事者に望むことはありますか?

和田さん

回復期病院のリハビリ中、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3名が男性だったのですが、失語でうまく話せないことと、思春期だったこともあり、「トイレへ行きたいです」と言い出せないことがありました。今は普通に言えますが、そのときは言えず、間に合わず恥ずかしい思いをしました。リハビリテーション科は年配の方が多い科ですが、子どもには子どもへの配慮を望みます。温かく接していただけると不安が解消されます。

編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

和田さん

この記事を読んでくれている方のお子さんやお孫さん、学校の教員であれば児童・生徒さんが私のように「脳動静脈奇形」を自認なく抱えていることがあるかもしれません。この病気はある日突然、何かの症状が出てくることがあります。症状が小さなときに病院で診ていただくことが重要です。日ごろの変化も気にしてよく周りの子どもに目を配ってください。

編集部まとめ

和田さんは、ご自身が体験談を話すことで、同病の方と気持ちを分かち合えたり、予防に繋がったりすることを望んでいらっしゃいました。若いから大丈夫だと考えず、子どもの周りにいる私たちが、子どもの変化をしっかり感じ取ってあげられる大人にならなければと改めて感じるお話でした。

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