グループリーグ第3戦のスペイン戦。日本は初戦のドイツ戦に続いて、またも劇的な逆転勝ちを収めた。森保一監督の戦術、采配がハマりすぎて怖い面もあるが、その鮮やかな勝ちっぷりには興奮を覚えた。おかげで、日本中が沸いて、すごいことになっている。

 サッカーに関わる者としては、こうした状況は非常にうれしいし、喜ばしいことだが、このまま優勝とかしたら、どうなってしまうのだろうか。

 それはともかく、日本代表の選手たちは、ドイツ、スペインというW杯優勝国相手に勝って、大きな自信をつけたことだろう。それは、今後の戦いに向けてもいいこと。これまでの戦いにおいても、いろいろな人たちに影響を与えてきたと思うが、さらに勝ち星を積み重ねて、より多くの人たちに夢や希望を与えてほしい。


決勝トーナメント1回戦でクロアチアと対戦する日本代表

 ただし、次なる相手は前回準優勝のクロアチア。その実績が示すとおり、そう簡単に勝てる相手ではない。ドイツ、スペインに勝ったからといって、舞い上がることなく、改めて気を引き締めて挑むことが大事だ。

 クロアチアは、うまいし、強い。運動量があって、力強さもある。守備は強固で、カウンターのキレ味も相当なものだ。

 スペインとドイツを合わせたような感じのチームで、しかも選手たちはサッカーをよく知っている。そこは、旧ユーゴスラビア圏の選手特有のもので、狡猾で、試合巧者。勝負どころをよく知り、チャンスはもちろん、危険なところもよくわかっている。

 チームの顔であるルカ・モドリッチも、相変わらず強烈。37歳でありながら、まったく衰えを感じさせない。攻守において存在感を発揮し、最も注意すべき選手であることは間違いないだろう。

 そんな油断ならないチームでありながら、クロアチアというチームは常にひたむきだ。ドイツ、スペインを破ってきた相手となればなおさらで、日本だからといって、決して舐めてはこない。おそらく、それなりのリスペクトを持って挑んでくるはずだ。

 つまり、日本も今回、そういうチームの域に入ってきた、ということ。ひとつ階段を上がった、と言ってもいいだろう。そうしたなかで、どういう戦いを見せるのか。そして、どんな結果を残すことができるのか。それがまた、日本サッカーの進歩、進化につながっていく。

 とはいえ、今の日本にできることは、自分たちが持っているものを全力で出しきるだけ。「やれる」という自信は持ちつつも、それが過信になってはいけない。これまでどおり、粘り強く、どん欲に戦うことが大切だ。

 キーマンを挙げるとすれば、森保監督。そして、堂安律、鎌田大地、三笘薫といったところか。

 堂安は、ドイツ戦、スペイン戦と同点ゴールをゲット。今やラッキーボーイ的な存在で、彼が出てくると「何かが起きる」という期待感がある。そういう選手がいることは大きいし、クロアチア戦でも何かやってくれるのでは? という期待がある。

 それは、三笘にも言えること。三笘がピッチに入ってくると、ガラッと雰囲気が変わる。見ているほうの期待感も一段と増す。その点については、一緒に戦っている選手たちも感じているだろうし、かなり大きな活力になっているはずだ。

 スペイン戦での逆転ゴールのアシストも、三笘だったからボールがタッチラインを割らなかったと思う。ボールに向かうスピード、判断、足の入れ方......三笘にしかできないことで、本当に大したものだ。そのあとも、相手DFをぶっちぎるような突破を見せて、スタンドを大いに沸かせた。

 やっぱり、三笘はモノが違う。W杯で通用することを示したし、世界で認められた選手になっている。クロアチア戦でも、彼の一発を期待したい。

 鎌田は、2戦目、3戦目と影が薄かったが、決勝トーナメントに入って、再度気持ちを切り替えて頑張ってほしい。彼が本来の力を発揮すれば、日本の攻撃はさらに破壊力を増すだろう。

 そして、大当たりの采配が続く森保監督。そこは誰もが注目しているところだと思うが、決勝トーナメントに入ったからといって、特に変わったことはせず、今までどおり、自分の思っていることをやっていけばいい。

 我々は、その采配を信じて応援するだけ。偉そうにあれやこれやと文句を言わず、日本中の誰もがそうであってほしいと思っている。

 結果は2−1とか、3−1とか、とにかく日本が勝ってほしいと思っているが、あまり大きな期待をかけすぎるのもどうか? という思いもある。しかしながら、最低でも目標であったベスト8には行ってほしい。

 まずはベスト16という壁を超えていかないと、その先が見えてこない。それを経験しない限り、その先に行く方法だったり、その先の戦い方だったりも、わからない。

 森保監督もこれまで、日本がまだ見たことのない「違う景色」「新たな景色」を見ることが目標だと言ってきた。そのチャンスが今、目の前にあるのだから、そこは是が非でもつかんでほしい。

 それが、経験になり、糧となり、勉強になる。戦っている選手、スタッフにとっても、見ている我々にとってもそう。ベスト16の先を見ることで、日本サッカーはまた、ひとつ階段を上がることができる。そして、今後の進化へとつながっていく。

 森保ジャパンには、それを実現してほしい。