こりゃすげぇ! 全長8m超えのクルマが「海」にダイブ!? 水陸両用のワクワクする自衛隊車「AAV7」の特徴とは
自衛隊が所有する水陸両用とは
最近では、日本全国の湖や海などでも見かけるアクティビティとして「水陸両用バス」が存在します。
陸から水面にダイブする迫力はまさに圧巻ですが、実は自衛隊にも水陸両用車は存在するといいます。
水陸両用車はワクワクするクルマです。
【画像】全長8m超え水陸両用車の迫力が凄い! 陸と海を突き進む実車を見る!(19枚)
全国の10か所以上に水陸両用バスのツアーがあり、陸からそのまま川や湖に入る迫力に人気を博しています。
川を渡る橋がネックになって渋滞していると、渡河できる水陸両用車が欲しいな。なんて妄想してしまいます。
重い戦車や装甲車でも水陸両用車が結構あります。
自衛隊の74式、90式戦車はシュノーケルを付けるなどの準備をすればある程度の水深なら潜水して川底を走ることが可能です。
さらに、73式装甲車は浮航することが出来ます。
但し、鋼鉄の車体を水に浮かせるというのは設計上の制約になり、沈没などのリスクもあります。
最近では川を渡るにも橋を架ける機材が充実してきているため、水陸両用能力はあまり重視されないようになっています。
しかし、単に水に浮かぶだけでなく、まるでフネのように波のある海でも航行できるのが陸上自衛隊の水陸機動団に配備されているのが「水陸両用車:AAV7」です。
水陸機動団はその名の通り、島嶼防衛、奪還を意識した水陸両用作戦部隊で、水陸両用車は水陸機動団の機甲科部隊である戦闘上陸大隊に配備されています。
AAV7はアメリカ海兵隊など多くの国で使われています。太平洋戦争中アメリカ海兵隊はサンゴ礁の囲まれた日本の島嶼に従来の上陸用舟艇では着岸できないことに悩まされました。
そこでサンゴ礁も乗り越えられるように履帯(いわゆるキャタピラー)付き上陸用舟艇を急遽開発したのがAAV7のルーツです。
もともとクルマではなくフネとして生まれたのです。水上推進用にウォータージェットを装備しています。
フネがルーツですがアメリカ海兵隊は、イラクやアフガニスタンでは海岸の上陸作戦だけでなく、陸上に前進して普通の装甲車のように活動しました。
陸上自衛隊が取得を開始したのは2013(平成25)年度のことですが、AAV7は実は古い水陸両用車です。
原型が完成したのは1970年代のことであり、メーカーの製造ラインはもうありませんので、日本が取得したには中古車のリビルト品です。
とはいえ、陸上自衛隊にとっては新装備で運用経験のない装甲車でした。
AAV7の操縦手はキャタピラ車の操縦と小型船舶の操縦の二役の技能を習得しなければならず、技能習得のためシミュレーターも用意されました。
ちなみに2017年6月2日の防衛省設置法の改正により、AAV7は法的に「船舶法」除外となり操縦免許にも小型船舶免許は必要なくなりました。
外見をみるとフネ風味を残しています。なんといって特徴は3.3mという車高の高さです。
10式戦車と90式戦車の車高が2.3mであることと比べても高いことが分かります。
操縦手は戦車などの装軌車から転換してきた隊員が多いのですが、まるで建物の2階から操縦しているような高い位置から車両感覚をつかむのが訓練の第一歩になるそうです。
車内には3名の乗員と25名が乗車できます。車高が高いので車内中は立ち上がれる程の高さですが、水上で浮力を確保する為に必要な容積でもあるのです。
12.7mm機銃と40mm自動擲弾銃で武装していますが本格的な戦闘には向きません。
本来は水陸両用輸送車です。それでもイラクやアフガニスタンでは無いよりましということで戦闘にも駆り出され、携帯対戦車ロケット弾や対戦車ミサイルで被害を出しました。
実は水陸両用車には独特のリスクもあった?
水陸両用車独特のリスクもあります。
船酔いと沈没です。大きいとはいえ車内にヘルメットや小銃、リュックなどを装着した隊員が20名以上乗り込めば窮屈です。
さらに、窓もない閉鎖空間で方向感覚が狂わされ揺れとも相まって船酔いすることが問題です。
あまり海面が荒れていると物理的にAAV7は航行できても、上陸後隊員が船酔いでヘロヘロでは任務を果たせません。
もっと怖いのが沈没です。
実際アメリカ海兵隊では2020年7月30日に訓練中に沈没事故を起こして8名の海兵隊員と1名の海軍船員が亡くなっています。
以降アメリカ海兵隊ではAAV7の海上浮航を実施していません。
そんなリスクに備える為水陸機動団が駐屯する相浦駐屯地には沈没時の脱出を訓練する大がかりな施設があります。
大柄なAAV7が海岸に乗り上げてくるシーンは迫力がありますが、映画「史上最大の作戦」に描かれているような敵の砲火をくぐり抜けて、敵前に上陸することは基本的に考えられていません。
武装も装甲も最小限でしかありませんし、水上の最高速度は13km/h程度であり航行中は脆弱です。
水陸機動団の象徴的な車両ですが、実際の島嶼は岩場など上陸できない箇所も多く、実際に活躍できる場面は限られ、ヘリコプターを使ったほうがずっと効果的なこともあります。
それでも天候などの条件でヘリコプターを使えない場面もあり、水陸両用車が不要ということにはなりません。
輸送手段は多いほうが有利です。
AAV7は中古車ですが陸上自衛隊は水陸両用車の扱いを経験し、次の水陸両用車を開発するテストベット的な性格もあります。
防衛装備庁では90式戦車の2倍の3000馬力というエンジンを積んだ40t級の水陸両用車を研究しています。