2022年10月25日、アメリカ内務省傘下で野生生物の保護管理を担当する魚類野生生物局(FWS)が、最も大きなペンギンとして知られるコウテイペンギン絶滅危惧種に指定したと発表しました。コウテイペンギンは南極大陸沿岸部の棚氷で繁殖することが知られており、近年進行している地球温暖化による海氷の融解が脅威となっているとのことです。

Emperor Penguin Gets Endangered Species Act Protections | U.S. Fish & Wildlife Service

https://www.fws.gov/press-release/2022-10/emperor-penguin-gets-endangered-species-act-protections



Emperor penguins listed as endangered by US because of climate crisis | Endangered species | The Guardian

https://www.theguardian.com/environment/2022/oct/25/emperor-penguins-endangered-species-us-climate-crisis

Emperor penguins join threatened species list, thanks to climate change | Live Science

https://www.livescience.com/emperor-penguins-threatened-species

コウテイペンギンは南極の氷上で大規模なコロニーを形成して繁殖し、出産したメスが栄養補給のためにエサを採りに行く間、抱卵をするオスは合計100日以上も絶食状態になるという過酷な子育てを行うことが知られています。記事作成時点では、南極大陸の海岸線に沿って約60ほどの繁殖コロニーが確認されており、つがいの数は約27万〜28万ほどと推測されています。

全長115〜130cmと大型であることに加えて生息環境も安定しているため、コウテイペンギンの個体数は比較的安定しているとのこと。しかし、地球温暖化による海氷の減少はコウテイペンギンの繁殖に大きなダメージを与えると指摘されており、「気候変動がこのまま継続した場合、コウテイペンギンの群れは2100年までに98%が消滅し、個体数は99%減少する」という研究結果も報告されました。

コウテイペンギンの個体数が99%減少する可能性があるとして絶滅危惧種に指定へ、気候変動の影響で - GIGAZINE



こうした危機的な状況を受けてFWSは10月25日、コウテイペンギン絶滅危惧種に指定して、絶滅危惧種法に基づいて保護することを発表しました。アメリカの領内に野生のコウテイペンギンは生息していませんが、ウッズホール海洋研究所によると、コウテイペンギン絶滅危惧種に指定することで保全プログラムへの資金投下や研究が促進されるほか、連邦政府機関はプロジェクトが個体数および生息地を脅かさないようにすることを求められるとのこと。

コウテイペンギンの個体数減少に関するモデルでは、炭素排出量が多いシナリオでは2050年までに個体数が47%減少するとされていますが、炭素排出量が少ないシナリオでは減少が26%に抑えられるとされています。

FWSのマーサ・ウィリアムズ局長は、「今回のリスト入りはコウテイペンギンが絶滅する危機の高まりを反映しており、個体数の減少が不可逆的になる前に保護する絶滅危惧種法と努力の重要性を強調しています。気候変動は世界中の種に深刻な影響を及ぼしており、その対策は行政の優先事項です。コウテイペンギンのリスト入りは警鐘であると同時に行動への呼びかけでもあります」と述べています。

アメリカの非営利団体である生物多様性センターの気候科学ディレクターであるシェイ・ウルフ氏は、「今回の絶滅危惧種指定は、この愛すべき象徴的なペンギンと、ペンギンの反映を願う私たち全員にとって大きな勝利です」「ペンギンの生存は政府が気候変動の原因となる化石燃料を削減し、地球上の生物に取り返しのつかないダメージを与えないよう、今すぐ強力な行動を起こすかどうかにかかっているのです」とコメントしました。