「アスペルガー症候群」の特徴はご存知ですか?医師が監修!

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「相手の気持ちを汲み取れない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

アスペルガー症候群では、コミュニケーションが上手くいかず対人トラブルに発展することがあります。

発達障害は子どものイメージを抱く方も多いですが、大人のアスペルガー症候群も増えており、大人になってから気づくケースも少なくありません。

今回は、そんなアスペルガー症候群について詳しくご紹介します。診断方法や治療・サポート方法もみていきましょう。

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群はどのような障害ですか?

アスペルガー症候群は、知的や言語に遅れはなくコミュニケーションにおいて特異性がみられる発達障害です。自閉症スペクトラムに含まれる障害として分類されており、自閉症スペクトラムの発症頻度は100人に1人と珍しい発達障害ではありません。

アスペルガー症候群は1944年ハンス・アスペルガーにより発症報告され、知的障害を伴なわない自閉症としてアスペルガー症候群という名前が付けられました。

そして、アメリカ精神医学会が定める診断基準「DSM-5」が2013年に改定され、現在ではアスペルガー症候群・自閉症・広汎性発達障害を統合して「自閉スペクトラム(ASD)」と呼ばれています。

アスペルガー症候群でみられる症状が知りたいです。

相手の気持を汲み取れない・共感できない・会話がかみ合わないなど、コミュニケーションにおいて特徴的な症状がみられます。

集団生活の中では、「暗黙の了解」や「空気を読む」ということが求められるシーンも少なくありません。しかし、アスペルガー症候群の方の場合はそれが難しく、その場の雰囲気を壊してしまう言動をしてしまうのです。本人はまったく悪気はないものの、相手に不快な思いをさせてしまったり孤立したりすることもあります。

また、相手の言葉をそのまま受け取ることも症状の1つです。想像することが苦手で、冗談・社交辞令・嫌味などを文字のままで受け取り、真に受けてしまいます。

コミュニケーションの他に、強いこだわりもアスペルガー症候群の特徴的な症状です。自分の中で決まったルールがあり、その通りに進めることに重点を置き、ルールからそれてしまうとパニックになることもあります。

他人とコミュニケーションが上手くいかないことや決まったルールがあることから、自分の世界に引きこもるケースも少なくありません。しかし、興味のある分野に関してはとことん追求し、仕事で大きな成果を上げる方も多いです。

原因は解明されていますか?

アスペルガー症候群の原因は、明確に解明されたわけではありません。しかし、研究が進み遺伝子や胎内環境が影響しているのではないかといわれています。

さまざまな要因が複雑に絡み合っている可能性があるため、どのような遺伝子や胎内環境がどういった経緯で影響しているかというところまでは分かっていません。

1ついえることは、アスペルガー症候群の原因は幼少期のしつけ・育て方ではないということです。また、本人の性格が原因というわけでもありません。

大人と子どもで症状や特徴に違いはありますか?

成長・発達が急激に進む乳幼児期では、親と目が合わない・何度言っても理解できない・音に敏感に反応するといった症状がみられます。

また、幼児期は同年代の子どもと複数人で遊ぶようになる時期ですが、アスペルガー症候群の子どもは1人で何かに熱中していることが多いです。イレギュラーなことに対応するのが苦手で、小中学生になると集団生活で悩むことも少なくありません。

学習面においては、得意な分野の成績は良いものの、それ以外はついていけずに辛い思いをするケースも多いです。

大人になると、学習面よりもコミュニケーションや想像力の面で悩むことが増えていきます。得意分野や興味のあることにとことん追求するタイプが多く、仕事で活躍したり成功したりする方は決して少なくありません。

しかし、仕事はできるけれど相手の思いを汲み取ることが苦手で、周囲の人とコミュニケーションがとれずに思わぬ誤解が生じたりします。また、自分のこだわりがあるため「融通が利かない人」と思われることもあるでしょう。

アスペルガー症候群の診断と治療

受診を検討する症状があれば教えてください。

アスペルガー症候群は発達障害の1つで、乳幼児健診で指摘されることがあります。発達障害の可能性を指摘されたら、小児科・小児神経科・児童精神科のある医療機関を受診してください。

お子様の場合、学校生活の中で対人トラブルやコミュニケーションの不得意さを指摘されることがあれば受診を検討するとよいでしょう。強いこだわりや、ルールからそれたときのパニック・かんしゃくといった症状も受診を検討する要素の1つです。

大人の場合も同様に、コミュニケーションに関連する対人トラブルに悩むことがあればアスペルガー症候群を疑った方がよいでしょう。

いずれにしても、アスペルガー症候群を放置すると、対人関係で多くの悩みを抱えることになりかねません。気になる点があれば、専門の医師に相談してみましょう。

アスペルガー症候群はどのように診断されますか?

アスペルガー症候群の診断は、前述したアメリカ精神医学会の診断基準「DSM-5」、あるいは世界保健機構による分類「ICD-10」をもとに行われます。DSM-5が用いられることが多く、近年では自閉症スペクトラムという名称に変わりました。

DSM-5では、社会的コミュニケーションや対人相互関係の持続的欠如・行動や興味に関する症状・発達に応じた対人関係などの障害・知的障害からくる症状ではないなどの項目に当てはめていきます。

他の精神疾患を併存しているケースもあるため、アスペルガー症候群以外の可能性も含めて問診や心理検査が行われ、アスペルガー症候群(あるいは自閉症スペクトラム)と診断されます。

アスペルガー症候群の治療方法が知りたいです。

アスペルガー症候群の根本的な治療方法はなく、コミュニケーションや日常生活に必要なトレーニングを行うことがほとんどです。

アスペルガー症候群では、自分が発した言葉によって相手がどのように感じるのか想像するのが苦手なことも少なくありません。そういった想像力を高めるためのトレーニングを行うのです。

また、自分の強み・弱みを洗い出して、自分自身と向き合うことも行います。子どもの頃に治療を開始した場合、トラブルをできるだけ減らして過ごせることも多いです。

これらの治療は、子どもの場合は児童精神科や小児神経科で行われます。大人の場合は、精神科・心療内科を受診してください。根本的な治療方法はないものの、適切なサポートやカウンセリングによって症状を減らせる可能性があります。

他の精神疾患を併発することがあると聞きます…。

アスペルガー症候群の患者さんの40%が2つ以上の精神疾患が併存しているといわれています。

併存することが多い精神疾患が、知的障害・LD(学習障害)・ADHD(注意欠如・多動症)・発達性協調運動症・不安症・うつ病・双極性障害・強迫症などです。その他にも、身体的な疾患として便秘・睡眠障害・てんかんがみられることもあります。

アスペルガー症候群を治す根本的な治療方法はありませんが、このように併存する疾患があればそれに対して薬物療法を行うことがあります。

アスペルガー症候群の日常生活とサポート

日常生活で気をつけることがあれば教えてください。

アスペルガー症候群は短期間で症状が悪化したり改善したりするものではありません。そのため、病気を理解して上手く付き合いながら生活していく必要があります。

お子様の場合、親が何度も同じことを伝えても伝わらなかったり、思い通りにいかないとかんしゃくを起こしたりするケースも少なくありません。なかなか思いが伝わらずに焦りや不安があるのは、周囲の人も本人も同じです。

アスペルガー症候群の方は、スケジュールが決まっていることを予定通りに行うことが得意です。そのため、1日のスケジュールを決めておき、イラストや文字を使ってわかりやすくしておくとよいでしょう。

スケジュールが変更になる場合は、パニックにならないように予め説明しておくと安心です。また、伝えたいことは「明確に」「端的に」伝えるようにしましょう。言葉で伝わりにくい場合でも、紙に書くことで伝わる場合があります。

周囲の人はどのようにサポートすればよいですか?

ご家族・友人・同僚などにアスペルガー症候群の方がいたら、アスペルガー症候群の特性について理解することが大切です。

1つのことに熱中しすぎて心配になることもありますが、他のことに目を向けさせるよりも興味のあることを伸ばす方がよいでしょう。

叱られると萎縮したり騒がしい環境に不安を覚えたりしますが、褒められることで自己肯定感を高めて自信をもてるようになるのです。何かを依頼するときは、「やってはいけない」よりも「やってほしい」と伝え方を変えることをおすすめします。

大人になってからアスペルガー症候群に気づくケースもありますか?

近年増えているのが、大人になってからアスペルガー症候群に気づくケースです。アスペルガー症候群は知能や言葉の発達に問題はなく、子どもの頃に気づかれないことがあります。

しかし、コミュニケーションにおいて特異性があるため、周囲の人からは「変わり者」と思われることも少なくありません。そのため、対人関係でトラブルがみられたり、コミュニケーションが上手くいかずお互いストレスが溜まったりしてしまいます。

大人のアスペルガー症候群では、対人関係のトラブルやストレスによる抑うつ状態・うつ病・不安症などから気づくことが多いです。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

我が子がアスペルガー症候群だとわかると「育て方が悪いのではないか」と不安になることもありますが、育て方やしつけが原因ではありません。アスペルガー症候群には特効薬はないものの、専門の医師のもとで適切な治療を受ければ症状を軽くできる可能性があります。

大人になってからアスペルガー症候群に気づく方も多く、子どもの頃から対人関係にストレスを感じたり、生きづらさを感じたりしていることも珍しくありません。

アスペルガー症候群であることに早めに気づくことで、対応や考え方を変えられる可能性が高くなります。少しでもアスペルガー症候群を疑う症状があれば、早めに専門の医師に相談してください。

編集部まとめ


アスペルガー症候群は発達障害の中でも言葉や知能に遅れがないため、大人になってから気づくケースも増えています。

いわゆる「空気を読む」という行為が苦手で、相手の気持を汲み取ったり想像して対応することが難しく、対人関係に悩むケースが多いです。

そんなアスペルガー症候群は薬で治すことはできませんが、カウンセリングやトレーニングによって症状は軽減できます。

そのためにも、早めに気づいて診断を受けることが大切です。

アスペルガー症候群に気づいて適切なサポートをすることで、本人はもちろん周囲の人にとっても不安の軽減につながります。

症状の現れ方には個人差があるため、少しでも気になることがあれば一度専門の医師に相談してください。

参考文献

アスペルガー症候群|信愛クリニック

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット

アスペルガー症候群
(自閉スペクトラム症)|ふせき心療クリニック

【アスペルガー症候群】0歳から成人期まで、年齢別の特徴や症状の現れ方を解説します【専門家監修】|LITALICO発達ナビ

自閉スペクトラム症(ASD)|NCNP病院

大人のアスペルガー症候群|Kaien

アスペルガー症候群|おやこCAN