米陸軍第1連隊第167機甲部隊に所属するローレンス・ホールズ特務曹長にとって、最も大きな悩みのタネは「ゲータレード」だそうだ。そう、あのスポーツ飲料のゲータレードである。何が一体、悩みのタネかといえば、ゲータレードの過剰消費だ。イラクの7月の焼き付けるような太陽の下では、兵士はこまめに水分補給しなければならない。この暑さ、最低気温でセ氏32度、最高はなんと43度を超えるという熱波なのだ。

  肌の潤いを保つため、美容雑誌では1日にグラスに7-8杯の水分を取るよう勧めるが、アナコンダ基地ではそんな量は何の意味もなさない。1日に7-8リットルの水分がここでは必要なのだ。次から次と飲む水では、すぐに味気なくなるため、兵士は味覚のある飲料水を好むようになる。その中で、ゲータレードが人気の的になっているというわけだ。

  しばらくして、医療班は兵士の腎臓と胆のうに結石の影が日を追うごとに大きくなって行くのに気付いた。ホール特務曹長と衛生班は、結石の肥大化の原因は、ゲータレードの過剰摂取とそれに見合わない運動不足だと見ている。このため、兵士にはゲータレードの代わりに水を飲み、積極的に運動するよう勧めている。また、食堂ではゲータレードのボトルが1人2本に限定して配給されることにもなった。これまでは簡単に入手できたので、緑色とオレンジ色のゲータレードのボトルを軍服のあらゆるポケットに目一杯突っ込んでいる兵士の姿はよくみかける光景だったのが一変したのだ。

  ゲータレードの消費の低減は人命にもかかわる。ゲータレードの輸送量が減れば、武装組織が道路脇に仕掛けた爆弾で命を落とす兵士も少なくなるだろう。「兵士の健康への配慮か、それとも輸送兵の安全を優先したのか、配給制になった理由についてはわからない」とホールズ特務曹長はいう。いずれにしろ、ゲータレードの消費は制限されるという結果になった。特務曹長は「イラクまではるばるやってきて、最大の懸案事項がゲータレードになるなんて誰が思うだろうか。ここでは気にも留めなかったささいなことが大事になるんだ」と語る。(2006年7月28日午後2時17分)【了】

■レベッカ・サンタナ記者
AP通信の特派員で、現在、イラクのアナコンダ基地に駐屯する米ニュージャージー州の州兵部隊に同行取材中。

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