「横になると咳が出る」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

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横になると咳が出る時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
甲斐沼 孟(医師)

2007年大阪市立大学医学部医学科卒業、2009年大阪急性期総合医療センター外科後期臨床研修医、2010年大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、2012年国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、2013年大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、2014年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医員、2021年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長。
著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。
日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。

「横になると咳が出る」で考えられる病気と対処法

日常生活で横になると咳が出やすくなって止まらない、あるいは咳嗽(がいそう)症状がひどくなる経験はありませんか。
このような咳嗽症状の原因疾患はさまざま考えられます。どんな場合に早めに医療機関を受診するなどの対策が必要とされているのかを解説していきます。

横になると咳が出る症状で考えられる原因と対処法

横になると咳が出る場合に考えられる原因疾患には、咳喘息が挙げられます。

咳喘息

咳喘息は、喘息という名前がついているものの、気管支喘息に特徴的なゼーゼーという喘鳴(ぜんめい)所見を認めることはほとんどありません。
風邪をひいた場合にも頭痛、下痢、鼻水などとともに咳が出ることはありますが、咳喘息に伴う咳症状は風邪症状とは無関係に長期間持続することや、咳以外の息苦しいなどの症状が認められず熱がないことが特徴です。
アレルギー素因などさまざまな要素が複雑に関連して咳喘息を発症すると考えられていますが、いまだに明確な原因が特定されていません。
タバコの副流煙などさまざまな因子によって症状悪化するため、周囲の環境を整備して生活環境を整える対処策が重要な観点です。
咳が8週間以上長期に認められる場合には、症状を放置せずに早めに呼吸器内科を受診することが重要です。

横になると咳が出て、寝れない症状で考えられる原因と対処法

横になると咳が出て、寝られない場合に考えられる原因疾患には、気管支喘息が挙げられます。
喘息の原因には遺伝的要素、ハウスダストやダニなどの特定のアレルゲン吸入によるアレルギー、粉塵などを始めとする気道における過剰刺激、高血圧の治療などに使用されるβ遮断薬、ヨード造影剤などの薬物が挙げられます。

気管支喘息

気管支喘息の典型的な症状は、呼吸困難を伴う咳であり、特に就寝後や早朝に咳や息苦しさで仰向けになれずに覚醒することも多いです。
喘息の治療では、気道の慢性炎症を早めにコントロールすることが重要です。
喘息発作が引き続いて起きないようにするために、吸入薬や飲み薬、点滴などさまざまな薬物を用いた治療が行われます。
主要な薬剤は、発作が起きないように維持するためのコントローラー(長期管理薬)、そして発作が起きた際に緊急的に活用するリリーバー(発作治療薬)の2種類です。
夜間や早朝などに咳が出て息苦しくて寝れずに睡眠が確保できない場合には、早急に呼吸器内科を受診して相談するように心がけましょう。

横になると咳が出て、喉がイガイガする症状で考えられる原因と対処法

横になると咳が出て、喉がイガイガする場合に考えられる原因疾患には、アトピー咳嗽が挙げられます。

アトピー咳嗽(がいそう)

アトピー咳嗽を診断する際には、基本的に気管支拡張薬が無効である状態を確認することが必要です。
アトピー咳嗽にかかった際に重要な点は、長引いている咳症状をいかに確実に迅速に改善させることができるかです。
したがって、咳やのどのイガイガする症状を自覚した際には、早急に呼吸器内科やアレルギー科を受診することが重要です。

横になると咳が出て、痰がからむ症状で考えられる原因と対処法

横になると咳が出て、痰がからむ場合に考えられる原因疾患には、副鼻腔気管支症候群が挙げられます。

副鼻腔気管支症候群

副鼻腔気管支症候群は、慢性的に何度も繰り返して上気道と下気道の領域に炎症を引き起こす病気です。慢性的に痰が絡んだ咳嗽(湿性咳嗽)を呈することが知られています。
軽症の場合は去痰剤(痰を切る薬・咳止め)だけでも薬物効果が認められて症状が軽減されます。
治療を開始してから数週間で症状が緩和されることもありますが、ひどい場合には数ヵ月単位で治療期間を要する場合も少なくなく、抗生剤を去痰薬と共に長期間服用することも往々にして存在します。
咳が長期的に続いて痰がからむ症状が継続している場合には、早めに呼吸器内科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。
長期間の治療が必要となる場合もありますが、症状がいったん軽快(回復)したからといって自己判断で通院を中断(治療中止)することは禁物です。

横になると咳が出て、頭痛がする症状で考えられる原因と対処法

横になると咳が出て、頭痛がする場合に考えられる原因疾患には、一次性咳嗽性頭痛が挙げられます。

一次性咳嗽性頭痛

一次性咳嗽性頭痛は、例えば乾いた咳をすると約1分程度持続して特に後頭部にかけての頭痛が誘発される特徴があります。
主に、40歳以上の男性に発症しやすく、咳以外にもくしゃみやいきみ、大笑いする行為などによっても頭痛が引き起こされやすくなります。
治療は、インドメタシン服用が有効的です。
同様の症状を呈する鑑別疾患として、アーノルド・キアリ奇形I型(小脳扁桃が位置的に落下する病気)、溶連菌感染症、髄膜炎、低髄液圧症候群などが考えられます。
咳嗽症状に加えて頭痛症状が随伴する場合には、呼吸器内科や脳神経外科などを受診するのが良いでしょう。

横になると咳が出て、下痢が続く症状で考えられる原因と対処法

横になると咳が出て、下痢が続く場合に考えられる原因疾患には、アデノウイルス感染症が挙げられます。
アデノウイルスは、多くの亜型を持つウイルスであり、鼻水や鼻づまり、咳、発熱、嘔吐、下痢、腹痛などさまざまな症状を呈します。
アデノウイルス感染症に対して、いわゆる特効薬はないため、室内の温度や湿度を適温に保ち、安静にして症状を緩和する対症療法薬を服用して治療を実践します。
アデノウイルスは感染力が強いので、家族など周りの方々に二次感染させないことが重要な観点であり、咳嗽や下痢が続いている場合には早急に呼吸器内科や消化器内科など医療機関を受診して、症状に応じた治療を確実に実践することを心がけましょう。

すぐに病院へ行くべき「横になると咳が出る」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

長期に咳症状が続く場合は、呼吸器内科へ

特に、咳喘息は、発作的な激しい咳症状が主に夜中から明け方にかけて認められるなどの点は通常の喘息疾患と類似していますが、ゼーゼーといった喘鳴や呼吸困難を伴わずに痰もあまり絡まないといった相違点があることを認識しておきましょう。
咳喘息では、早めに適切な治療介入を受けられなかった場合には、約3割の患者が通常の気管支喘息に移行するといわれているので、気になる咳症状を自覚した際には早めに呼吸器内科を受診しましょう。

「横になると咳が出る」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「横になると咳が出る」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

咳喘息

咳喘息とは、8週間以上にわたって継続する慢性の咳症状を呈し、一般的には喘鳴や呼吸困難などの症状を伴わないとされています。
咳喘息は、何かしらのアレルギー素因によって発症すると言われており、風邪や運動、タバコの副流煙などの要因に曝露される(体に入る)ことで、咳喘息の症状が誘発されやすくなります。
咳が出る病気は、単純な風邪症候群のみならず、鼻炎、気管支喘息、肺炎、肺結核、肺がんなど非常に多岐に渡るので、こうした病気を鑑別するために呼吸器内科を受診することが重要です。
通常の場合には、咳喘息の症状はアレルギー性要素があるために、ステロイド吸入薬や気管支拡張薬などを活用して治療を行います。

アトピー咳嗽(がいそう)

アトピー咳嗽という病気は、気管支中枢部位にアレルギー性の炎症所見が惹起されて(炎症が引き起こされて)、気道壁の表層部にある咳嗽受容体の感受性が上昇することで咳が出やすくなる中年以降の女性に罹患率が高い疾患です。
特徴的な症状は、夕方から夜間にかけて喉のイガイガ感を自覚して、会議中や運動中、あるいは過度のストレスによって誘発される咳症状です。
のどのイガイガ感に加えて咳症状がひどくなれば、早めに呼吸器内科やアレルギー科を受診しましょう。
一般的には、気管支拡張薬は無効であると考えられており、主要な治療薬は抗ヒスタミン薬になりますが、実際のところ薬物の有効率は6割程度と指摘されています。
効果が不十分なケースでは吸入ステロイドや経口ステロイドを処方して治療を実践することもあります。

副鼻腔気管支症候群(ふくびくうきかんししょうこうぐん)

副鼻腔気管支症候群は、慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症など慢性的に下気道領域で炎症を起こした状態にくわえて、慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)が合併した疾患であると認識されています。
長引く咳症状を自覚して呼吸器内科を受診して、胸部レントゲン検査で明らかな異常が認められない際に考えられる病気の一つです。
副鼻腔炎に罹患すると、粘稠度の高い鼻水(ねばねばした鼻水)がのどの方向に流れて後鼻漏を引き起こし、気管支が生理的にその鼻水成分を異物として認識して排出する際の反応として咳症状が出現します。
基本的な治療対策は、毎日の内服治療であり、マクロライド系抗生物質、去痰剤が症状改善に有効的に働きます。

気管支喘息

気管支喘息とは、空気の通り道である気道領域が慢性的に炎症を繰り返すことで気管支が狭くなる病気です。
呼吸をする際に、「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」といった喘鳴音が聴取される、あるいは呼吸困難や呼吸苦などの発作を呈する疾患として知られています。
発症する好発年齢(かかりやすい年代)は、幼児期と40~60歳代に2峰性のピークがあって、幅広い年齢層に発症します。
症状は、軽微なものから命に関わる重篤なものまでさまざまです。
治療方法は発作の頻度や強さによって異なっています。
仮に、喘息発作の頻度が少なく症状も軽いようであれば、気管支拡張薬を用います。
万が一、発作の頻度が多く、夜間の睡眠中や早朝にもしばしば発作が認められる場合には、吸入ステロイドなどの治療薬を処方されることもあります。
したがって、夜間や早朝に咳が出て仰向けになれずに寝れないなどの症状を認める際には、出来るだけ早く呼吸器内科を受診しましょう。

「横になると咳が出る」ときの正しい対処法は?

「熱症状などは認めないが、咳が出る」際に、頼りになるのが市販の咳止め薬です。

咳の症状を緩和させる市販薬や飲み物

軽度の咳症状だけを認める場合には、市販薬を利用して症状を緩和させて自然治癒を期待するのもひとつの手段です。
市販の咳止めは、カプセルや錠剤などのほか、漢方薬、トローチやドロップ、液体やシロップなどさまざまなタイプがありますが、飲み薬としては「クールワンせき止めGX」などがお勧めです。

咳の予防におすすめの生活習慣

また、咳症状を和らげるために最も手軽な方法はのどに良い飲み物を摂取することであり、緑茶やハーブティー、ココア、生姜やはちみつを含んでいる飲料は手軽に手に入り咳嗽症状を軽減させることが期待できます。
例えば、子どもが咳をしている場合には、前胸部と背部周辺を温湿布して温めることで症状軽減に繫がりますので、身体全体をむやみに冷やさないことも重要な観点です。
早く症状を治癒させたいケース、市販薬使用など応急処置をしても治癒しない場合、あるいはひどくて長引く咳症状に関しては、早めに呼吸器内科を受診する必要があります。
また、就寝時の咳症状は、ハウスダストやエアコンによる寒暖差、湿度などの環境要因によって引き起こされるとも考えられています。
アレルギーのある人はもちろんですが、アレルギー歴がない方も、寝室はなるべくきれいに掃除して、寝室のエアコンフィルターも定期的に清潔保持しましょう。
空気が乾燥する冬場などの季節では、加湿器を利用する、寝室に濡れたタオルを干すなどの対策で室内を加湿しておくと、咳症状が多少ましになり、痰が排出しやすくなることが期待されます。
咳がひどくて呼吸がしんどい際は、背中をクッションなどで支えながら上半身を高くした姿勢をとると、気道が開いて呼吸様式が改善します。

「横になると咳が出る」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「横になると咳が出る」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

毎日、横になると咳が出るのですが、何か大きな病気でしょうか?

甲斐沼 孟(医師)

咳喘息、気管支喘息、アトピー咳嗽などが考えられます。症状が長引く場合には、早めに呼吸器内科やアレルギー科などを受診しましょう。

横になると咳と鼻水が出るのは風邪でしょうか?

甲斐沼 孟(医師)

一般的な風邪症候群の可能性もありますが、時に鼻水や痰がからむ症状が合併している場合には副鼻腔気管支症候群が考えられます。症状が心配であれば、耳鼻咽喉科などを標榜する医療機関を受診することをお勧めします。

睡眠中、深夜に乾いた咳がひどくなるのは何科を受診すべきですか?

甲斐沼 孟(医師)

就寝時や夜間、早朝などに乾いた咳症状を認める場合には、気管支ぜんそくなどを疑います。症状を放置すれば重症化する懸念がありますので、早急に呼吸器内科を受診しましょう。

寝ていると明け方にゼーゼーした咳が出ます。喘息でしょうか?

甲斐沼 孟(医師)

寝ていると早朝にゼーゼーやヒューヒューという喘鳴音が聴取される場合には、気管支喘息などを考慮します。
咳が止まらずに呼吸がしんどい際には、重篤な呼吸器の病気に罹患している可能性がありますので、なるべく早めに呼吸器内科を受診して、専門医に相談してください。

まとめ

咳という症状は患者さん方の医療機関を受診する動機として最も頻度が高く、特に持続する咳嗽を訴えて外来受診する患者数増加が指摘されています。
咳嗽症状を長期間継続して認める場合には、様々な鑑別疾患が考えられており、適切な診断結果に基づいて確実に治療することで症状が改善することが期待できます。
心配な方は、かかりつけ医や呼吸器内科、耳鼻咽喉科、アレルギー科などに早めに相談して専門医から的確な診断、治療を受けるように努めましょう。

「横になると咳が出る」で考えられる病気と特徴

「横になると咳が出る」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

呼吸器内科の病気

咳喘息

気管支喘息

小児気管支喘息

アレルギー科の病気

アトピー咳嗽

耳鼻咽喉科の病気

副鼻腔気管支症候群

消化器内科の病気

アデノウイルス感染症

脳神経外科の病気

アーノルド・キアリ奇形

髄膜炎

低髄液圧症候群

咳のみの症状であると軽視しがちですが、治りづらい場合には大きな病気が潜んでいる可能性も考えられます。

「横になると咳が出る」と関連のある症状

「横になると咳が出る」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

長引く咳

夜間に咳き込む

喘鳴

横になると苦しい

咳乾いた咳が続く 熱はないむせやすい痰が喉に張り付く喘息

「横になると咳が出る」他に、これらの症状が見られる際は、「咳喘息」「アトピー咳嗽」「アデノウイルス感染症」「副鼻腔気管支症候群」などの病気の存在が疑われます。
なかなか治らない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。

【参考文献】
・咳嗽に関するガイドライン第2版2012年発行(日本呼吸器学会)