サーキット用の空気圧と公道の指定圧とが違い過ぎて何がホントかを知りたいです!

A.指定圧を変えないままで問題ありません、サーキットは違いがわかればお試しを!

なぜサーキット用に思いきり下げるのか?

スーパースポーツの空気圧は、ほとんどが前2.2、後2.5~2.9あたりが指定圧のはず。それがサーキット走行でのお奨め空気圧となると、前2.1、後1.6とか、聞き違いではないのかと思う低さですよね。
だったら、ワインディングでも下げたほうがグリップが良い、もしくは安全に楽しめるということになりそうです。
といった情報を知ってしまうと、これは混乱して当然でしょう。いったい何がホントなのか、せっかくサス・セッティングで走りやすい設定に辿りついたのに、これを根底からひっくり返された気になる方もいるかも知れません。
ではなぜサーキット走行に、そこまで低い空気圧を推奨しているのか、そこからクリアしていきましょう。

まずサーキットには、公道のように路面の段差や舗装が損壊した穴はありません。公道での指定圧は、この万一の大きな衝撃でタイヤが潰れてしまい、ホイールのリムを曲げてしまうリスクを避けるためを含んだ空気圧なので、後2.5~2.9あたりが指定されているのです。
ホイールのリムが曲がれば、チューブレスですから一瞬にして空気圧ゼロとなり、タイヤがホイールから外れ大転倒に陥る非常に危険な状況となります。
因みに前、フロントタイヤはボリュームが小さい、わかりやすくいうと細いので外圧に対する空気圧の上昇率が高く、2.0もあれば大きな穴でも潰れることはありません。もともと空気圧の変化でグリップやハンドリングが影響されにくいのも覚えておいてください。
では平滑なサーキット路面だと、なぜ空気圧を下げるのかというと、滑ったときのコントロールのしやすさが主目的と思って差し支えありません。
イメージだと空気圧が低くなれば、タイヤはそれだけ凹むように思いますし、実際コーナリングではかなり凹みます。しかし凹めばトレッドが路面に接する面積が増える……というほどカンタンではありません。圧が低ければ踏ん張りも弱くなりますし、応力を支えられないとコンパウンドが柔らかくてもズルズルと逃げてしまう傾向に陥るからです。
ただ最新のラジアル構造のロープロファイル(扁平率が50~55とワイドで平たい)だと、タイヤがかなり凹んでも踏ん張れる粘りがあって、旋回できるグリップ力と安定性を確保しているのですが、大事なことはその次にくるスリップにどう対処するかということになります。
そこでいつかはやってくる滑りに、いきなりスリップダウン、もしくは危険なハイサイドが起きないよう、限界が近づくにつれ早めからライダーが感知できるズルズルと逃げはじめる特性となるよう設定しているのです。
つまり、誤解をおそれずわかりやすさ前提で言うと、滑りやすくする空気圧、もしくは滑ってからコントロールしやすい(スライドしながら旋回できる)グリップと滑りの境目が曖昧な特性となる空気圧……という理解でも間違っていません。
そうなると、サーキットでテールを振りながら路面にブラックマークをつけるような走りをしないライダーには、あまり関係のない領域といえそうです。
とはいえ、フィーリングは変わります。むしろ大きなトルクをドカーンと与えず、ジワッとトラクションを増やす感じにも、この低い空気圧はレスポンスが良い反応に感じるライダーが少なくありません。
サーキットだから許される「好み」を選べる自由度を楽しむのは悪くないと思います。

指定空気圧がムダに高いことはない!

では公道の指定圧は、説明したような路面の穴や段差など、突然のとんでもない衝撃を前提にしなければ、相応に空気圧を下げることができそう……このように考えても不思議はありません。
それにユーザーの空気圧チェックが疎かになりがちなのを見越して、少し抜けた状態にマージンを上乗せした指定圧にしているのかも、という疑う気持ちも出てきます。
しかしこうした戸惑いそうな情報は一掃してしまいましょう。
指定空気圧は、大きな衝撃でホイールリムが曲がらないようにを含んだ空気圧ですが、だからといって過剰に高圧ということにはなりません。そして空気圧に関心が低いユーザー向けに盛った空気圧でもないのです。
最新のラジアル構造のタイヤは、この指定圧とサーキット推奨の低い空気圧との性能差があまりない、言葉だけ聞くと信じがたいパフォーマンスとポテンシャルです。
とくに路面に接するトレッドの柔軟性は、シーズン毎にしなやかで剛性もある、とてつもない進化を繰り返しています。
なので、サーキットでスライドのコントロールができるライダー向けの空気圧調整と同じような意味合いで、公道で指定圧より下げたほうが良いといえる状況にはならないということになります。
ワインディングでテールスライドのしやすい空気圧……コミックのストーリーならともかく、大人がそんなことへ傾倒していたら迷惑千万ですよね。
ということで、基本は指定空気圧を守って走る、サーキットを走るときは「気分」で下げてみる……でイイと思います。
そしてもちろん、サーキット走行を終えたら指定圧に調整しておくのを絶対にお忘れなく!

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