過去の敗戦から見る大阪桐蔭の弱点。この夏、絶対王者の牙城を崩すのはこの8校だ!
"ストップ・ザ・大阪桐蔭"----昨年秋の明治神宮大会、今年春のセンバツに続き、3冠を狙う大阪桐蔭をどこが倒すのか。第104回を迎える今夏の甲子園の焦点は、ここに尽きるといっていいだろう。
センバツを圧倒的な強さで制し、3度目の春夏連覇に挑む大阪桐蔭
3度目の春夏連覇もかかる絶対王者は、大阪大会を盤石の戦いぶりで勝ち上がった。来年のドラフトの目玉といわれる左腕・前田悠伍、センバツ優勝投手の川原嗣貴、春以降の成長著しい別所孝亮ら5投手が登板した投手陣は、7試合でわずか1失点。合計54イニングで安打はわずか20本しか許さず、与四死球は21。1イニング平均0.76人の走者しか許さない計算になる。
守備も固く、7試合で4失策。走者すら許さず、ミスでピンチを広げることもない。センバツで4試合51得点、大会新記録の11本塁打を記録した打線に注目が集まりがちだが、投手陣は柿木蓮(日本ハム)、根尾昂(中日)、横川凱(巨人)とプロ入りした3投手を擁した2018年(6試合45回37安打7四死球。1イニング平均の許した走者0.98人)を上回る安定感がある。
もちろん、センバツで相手校を震え上がらせた強打は健在。大阪大会3本塁打のドラフト候補・松尾汐恩を中心に、7試合で打率・371、7本塁打、54得点をマークした。
そんな絶対王者に死角はないのか? 西谷浩一監督が率いてからの大阪桐蔭は、2004年のセンバツ以来、甲子園で11敗喫しているが、このうち右投手は5人(駒大苫小牧・田中将大/早稲田実・斎藤佑樹/明徳義塾・岸潤一郎/敦賀気比・平沼翔太/近江・山田陽翔 ※勝利投手は2番手の岩佐直哉)、左投手は6人(常葉菊川・田中健二朗/大垣日大・葛西侑也/県岐阜商・藤田凌司/木更津総合・早川隆久/仙台育英・長谷川拓帆/智弁学園・西村王雅)。対戦数を考えると、左投手を苦手にしているのは一目瞭然だ。
今年春のセンバツでも、鳴門の左腕・冨田遼弥に8安打3得点と、4試合で唯一のひとケタ安打だった。2018年にも高岡商の山田龍聖(現・巨人)に8安打3得点しながらも11奪三振を喫し、作新学院の背番号10の左腕・佐取達也には5回2安打無得点に抑えられた。
11人中6人はプロ入りしており、大阪桐蔭を抑えるにはそれ相当のレベルの投手でないと厳しいことがわかる。この観点から、大阪桐蔭の牙城を崩せそうなチームを挙げてみたい。
タレント揃う近畿の実力3校筆頭は春の近畿大会で大阪桐蔭の公式戦連勝を29で止め、夏の甲子園連覇を狙う智辯和歌山。背番号11ながら最速149キロを誇る身長187センチの大型右腕・武元一輝がいる。ほかにも140キロ台中盤の速球を投げるエースナンバーの塩路柊季もおり、連戦になっても不安はない。
昨年同様、打線も強力で、和歌山大会5試合で打率.383、9本塁打をマークした。昨夏の甲子園決勝で本塁打を放った渡部海は和歌山大会で打率.600、3本塁打。同じく和歌山大会3本塁打の1番・山口滉起、昨夏も5番を打った岡西佑弥ら一発を打てる打者が並ぶ。
中谷仁監督になってから県外生が多くなり、中学時代の実績では大阪桐蔭の選手たちとまったく遜色ないのも強みだ。
この智辯和歌山につづくのが、昨夏の甲子園4強の京都国際と今春センバツ準優勝の近江(滋賀)。
昨夏のレギュラー4人が残る京都国際は、ドラフト候補の左腕・森下瑠大を擁する。最速143キロの速球に加え、決め球のスライダー、チェンジアップなど6種類の変化球を操る。昨夏の甲子園でも28回を投げて28奪三振をマーク。センバツで大阪桐蔭を相手に好投した鳴門・冨田と同じタイプだけに打倒・桐蔭に期待は高まる。
ただ気がかりなのは、左ひじを痛めて京都大会での登板が2試合9イニングだけだったこと。大阪桐蔭とは準々決勝まで当たらないだけに、2番手の森田大翔らがどれだけ森下の負担を減らして大会後半を迎えられるか。京都大会で打率.632、3本塁打の森下は昨夏の甲子園でも本塁打を記録。主砲としての活躍も期待される。
昨夏の甲子園で大阪桐蔭を破った近江は、センバツの決勝で1対18と大敗。リベンジを誓う。センバツではエースの山田が初戦からひとりで投げ抜き、大阪桐蔭戦は万全の状態ではなかった。その反省を生かし、滋賀大会では山田の投球回を22回に抑え、ほかの投手で17回をまかなった。山田は最速149キロにまで伸び、スライダー、ツーシーム、フォークのキレも健在。22回で28三振を奪い、許した走者は11人だけ。
問題は難敵の多いブロックに入ったこと。好投手・冨田の鳴門、最速150キロ右腕・田中晴也を擁する日本文理、チーム力のある山梨学院らがおり、大阪桐蔭を前にして山田が疲弊してしまう恐れがある。打倒・大阪桐蔭のためには、打線の奮起と2番手以降の投手の踏ん張りが不可欠だ。
好左腕擁する不気味な5校昨秋の明治神宮大会4強、センバツ8強と安定した実力を持つ九州国際大付(福岡)も神宮大会準決勝で大阪桐蔭に2対9と7回コールド負け。甲子園でのリベンジを狙う。黒田義信、野田海人、センバツでは花巻東・佐々木麟太郎、広陵・真鍋慧と並んで"2年生のビッグ3"と騒がれた佐倉侠史朗と並ぶクリーンアップは強力。佐倉は春以降打撃フォームを見直し、福岡大会で3本塁打を放った。
福岡大会では2年生右腕の池田悠舞が好投したが、打倒・大阪桐蔭にはセンバツで2勝を挙げた左腕・香西一希の力が必要。球速こそ120キロ台だが、スライダー、チェンジアップを内外角に投げ分け、見た目以上に打ちづらいのが特長だ。春の九州大会で足を負傷し、福岡大会ではコロナに感染し5回戦以降を欠場するなど体調面に不安が残るが、香西が復調しなければ大阪桐蔭と戦えないと言っても過言ではない。
明秀日立(茨城)も打倒・大阪桐蔭に燃える。カギを握るのは、4番で主将を務める石川ケニー。左腕投手として140キロの速球を持ち、空振りを奪うスライダーもある。春までは大舞台での登板経験が少なかったが、茨城大会決勝ではピンチでライトから2度マウンドに上がり、いずれも三振で切り抜けるなど自信をつけた。また、茨城大会決勝でサヨナラ本塁打を放った佐藤光成、打率.625を記録した本坊匠らチーム打率.404、6本塁打をマークした強力打線を擁し、「今年こそ」の思いは強い。
このほかには、最速145キロの左腕・古川翼を擁する仙台育英(宮城)、最速145キロをマークする左腕・古賀康誠と146キロ右腕の仲井慎とで二枚看板を形成する下関国際(山口)、140キロ左腕の渡辺和大と今大会ナンバーワンスラッガー・浅野翔吾と投打の主軸がしっかりしている高松商(香川)も力を秘める。
大阪桐蔭が3度目の春夏連覇を達成するのか。それとも絶対王者を破るチームが出てくるのか。夏の甲子園は8月6日、開幕する。