【精神科医からのアドバイス】職場で古い考えの人と理解しあえず、溝が深まり自分が退職しました。どうすれば歩み寄れるようになるでしょうか?
うまくコミュニケーションできないことからくる孤独感、低い自己肯定感、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、今、生きづらさをかかえる人が増えています。そんな中にあって、毎日を心安らかに、快適に過ごしていくためには、どうすればいいのでしょうか? 発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。本連載では、バク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)の中から、生きづらさを解消するための実践的なヒントをご紹介してきました。読者から寄せられたお悩み相談に対して、バク先生が答えるアドバイス編の第5回をお届けします。
時代のアップデートについていけない人と、どう接する?
皆様、こんにちは。バク@精神科医です。
この世の中には色々な悩みがあると思います。それでも見方をちょっと変えてみたり、様々な視点を持つことで「そこまで悩まなくても良かったかな?」と思えるようになるかもしれません。
本連載が、皆様のストレスを少しでも減らして、笑顔やリラックスのためのヒントになれば幸いです。さて今回の質問です。
【質問】ジェネレーションギャップが多い方と協力して仕事をする際、歩み寄れないことが悩みです。例えば、最新の研修でAの方法でやると決まっても、相手の方の現役時代の主流のBでやろうとします。対話後にAの方法で仕事をしていたら嫌われ、2年間で溝は深まり自分が退職しました。どうすれば歩み寄れるようになるでしょうか?
中々時代のアップデートについていけず、自分の現役時代のやり方が最良だと譲れない人はおられますね。質問者さんからすれば、私のこれから書く回答はちょっとイヤな気持ちにさせてしまうかもしれない内容になることを最初に断っておきます。
まず、このシチュエーションであれば、職場でAと決まった場合は質問者さんは淡々とAで仕事を回してください。そしてBでやろうとする相手との対話に関しては、質問者さんと相手の職場での関係で大きく変わってしまいます。
1)仮に質問者さんと相手が職場に勤務しているという同列の立場であれば、一回「Aでやることになりませんでしたっけ?」と相手に確認し、相手が「前からBでやってきたからAはやらない!」と拒否された場合、その旨を職場に報告して終了です。Aの方法を採用すると職場が判断したにもかかわらず、勤務者が独断でやり方を変更している(Bでやっている)場合、職場の責任者が相手に注意や指導をする責任があります(事故が発生した場合管理責任が生じるため)。
2)質問者さんが相手に雇われている場合、話し合いをして相手をAの方法で動くように指示することはできません。元のご質問を見るに(一部改変しています)質問者さんがBを辞めさせたいと思う気持ちは重々理解できるのですが、この場合においては、質問者さんは最終的に雇用解除される側です。
3)質問者さんが相手を雇っている立場の場合は、(2)の逆の立場になります。雇用責任が伴いますので、相手にBではなくAでやるように業務上の指導を行わなければなりません。そして相手が頑なにBを行おうとする場合、就業規則に照らし合わせそれなりの処分を下すことが可能かもしれません。
「面の皮が厚い方が職場に残る」という状態は、繰り返される
ここまで書きましたが、大体の場合の関係性は(1)なのではないでしょうか。
質問者さんと相手が、共に雇用されている同列の立場である場合、相手が受け入れる気持ちがなければ質問者さんのお気持ちだけでは、仕事でAをやるように強制する力がないのです。
仕事でBを継続することが危険だし、その被害者が出ることを黙って見ていろ、という風に私が言っているように見えるかもしれませんが、職場の責任者がそのBの方法に対してどこまで禁止するスタンスでいるかは、雇用される側にはどうすることもできないのです。
質問者さんが質問の文章で書かれている「歩み寄り」は、片方が相手に合わせている状態では成立しません。
質問者さんがどれだけ正しくても相手がそれに納得し、自らAのやり方を習得していこうとする歩み寄りが起こらない限り「面の皮が厚い方が職場に残る」という状態は繰り返されます。
Bがいかに危険でも、それを職場が容認しているなら打つ手はありません。Aを採用している職場に異動し、安心して就労される方が私は良いと思います。
そもそも、Aが良いと皆が納得した方法を無視してBを貫き通そうとする相手は、それこそ「そのままでは仕事を失う」という実害が目の前にない限り永遠にそのままです。そんな相手とは、普通に話し合いだけでは歩み寄ることは無理だと(残念ながら)言わざるを得ないのです。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく、行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーの道を志し文系に進学する。しかし「カウンセラーで食っていけるのはごく一部」という現実を知り、一念発起し、医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら、勉学とバイトにいそしみやっとのことで卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を専攻したが、医師研修中に父親が亡くなる喪失体験もあり、さまざまなことに対して自信を失う。医師を続けることを諦めかけるが、先輩の精神科主治医と出会うことで、精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にてさまざまな分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は、双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者が多い急性期精神科病棟の勤務医。「よりわかりやすく、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。個人クリニック開業に向け奮闘中。うつ病を経験し、ADHDの医師としてTwitter(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Twitterフォロワー6.6万人。『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』が初の著書。