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2年ぶりとなる麻倉ももの3rdアルバム『Apiacere』は、近作のシングル曲で見せた彼女の新境地を更に推し進めた形で提示してくれている。普遍性と革新性が同居する現在の麻倉ももの“意志”について、制作へのスタンスなどもまじえたロングインタビューをお届けする。

チームの変化が麻倉ももに変化をもたらす



――3rdアルバム『Apiacere』(アピアチェーレ)聴かせていただきました。個人的に「ピンキーフック」がとても好きなのですが、この曲や「僕だけに見える星」などシングル曲も含めた2年ぶりのアルバムということで、麻倉さん的にはこの2年間でアルバム制作にあたっての変化などはありましたか?

麻倉もも 本当に身内的な話ではあるんですけど、制作チームががらっと変わったり、スタジオも初めましてのところだったりして、音楽活動での変化は多かったですね。

――その変化はタイミング的にいつ頃からなんですか?

麻倉 ちょうど「ピンキーフック」を作っていた頃からですね。その辺りのシングルも含めてのアルバムなので、今回収録されている曲はほとんど新チーム体制での音楽活動という感じです。

――麻倉さん的にはご自身のチームが変わってみていかがですか?

麻倉 チームの年齢層が若くなって、私と歳の近いスタッフさんも多くて。私が音楽をそんなにたくさん聴く方ではないので「こういう曲が合ってるんじゃない?」とか、「海外ではこういう曲が流行ってるよ」とか教わったりするようになりました。

――まさしくアルバム自体が若々しく今っぽい音になってるとは感じましたね。

麻倉 私も上手く言い表せないんですけど、また全然違う色のアルバムになったなとは思いますね。現代的というか、過去に歌ったことのないような音楽というか、曲の構成も最近はやっぱり長いとなかなか聴いてもらえないみたいで。これまではAメロ、Bメロ、サビ、それを2番で繰り返してからDメロ、といった形が多かったのですが、新チームになってからは「2番サビがない!」みたいな曲が増えました。

――確かに麻倉さん個人の好みでいうと昭和アイドル的なスタンダードな構成のものがお好きですよね。

麻倉 そうですね。そういう曲にばかり触れてきたので、短くするという感覚がそもそも私の中になかったんです。だから今回も新しい発見だらけでした。レコーディングでも年下のスタッフさんに意見を求めたりはしますね。音楽について以外も、このタイトルどう思います?とか、これどう受け取られるんだろうとか、若者の意見みたいな感じで参考にしたりします。

――そんな新体制で作られているアルバムですが、まずどういった取っ掛かりから着手されましたか?

麻倉 まずは今ある曲を並べてみて、あとはどういう曲が欲しいか、歌いたいかを考えてパズルのピースを合わせていくような感じでした。アップテンポ曲がちょっと足りないねとか、ここにこういう感じの曲が欲しいよねみたいな。

――今回は12曲中6曲が新曲と、新曲が多めの構成です。曲のピースを合わせていくときに新曲で色々遊びがききそうな。

麻倉 一応最初に新曲の方向性はざっくり決めていくのですが、例えば「Love me, Choose me」という曲は、元々アップテンポで明るいダンス曲が欲しくて曲を集めていたはずが、結果的に私が最終候補の中でこれがいいって、ちょっとマイナー調のかっこいい曲を選びました。そうやって当初予定していたものから外れていったりして、じゃあ次はこうしようかと1曲ずつ話し合って作っていきました。

――歌詞の内容についての依頼などは曲を決めてからですか?

麻倉 そうです。曲が決まったら、この曲はこういう歌詞の世界観でお願いしますと要望をお伝えして。

――ソロでの麻倉さんは基本的には恋の歌を歌うというのは、今回もブレませんでしたか?

麻倉 そうですね。やっぱり私の軸にあるものなので、今回も自然とそうなりました。

――少し漠然とした質問なのですが、チームが新しくなったり、ご本人的にも久しぶりのアルバムとなったときに、“アーティスト・麻倉もも像”についての話し合いにはならないんですか? みんなにどう思ってもらいたいとか、恋の歌のイメージがしっかり付いたうえで、今回はこういう角度にしてみようか、みたいな話とか。

麻倉 私含めてみんなで話し合うみたいなのはないんですけど、チーム側ですごく話してるとは聞いたことがあります。基本的には私がこういう歌詞がいいって閃いた案を共有して、問題なければそれで書いてもらいましょうとなるので、みんなで歌詞や方向性などを決める段階では「麻倉ももをこう見せよう」みたいな話はあまりしないですね。なんだか恥ずかしいですし(笑)。

――麻倉さんのアイデアと皆さんが提示してきたものをミックスして決めていく感じですね。アイデアを送るときは具体的にはどんなことをスタッフに伝えるんですか?

麻倉 世界観だったり登場人物だったり曲によって違うのですが、例えば「Love me, Choose me」は、主人公はこういう女の子でこんなことを考えてますみたいなアイデアを送りました。リード曲の「eclatante」は主人公というより“女の子の概念”みたいな感じにしたかったので、どういう子かというよりも、ときめくワードをたくさん入れたいと思って、“キャラメリゼ”や“ルージュ”や“カプチーノ”とか、そういうときめき単語を私がバーっとリストにして送って、それを歌詞に組み立ててくださったり。手法は1曲ごとに違いますね。

――以前「僕だけに見える星」のインタビューのときにも同じようなことをおっしゃってましたね。曲を聴いてこういうストーリーが乗ってるといいなとか、こういう言葉が入ってるといいなというアイデアが頭にパッとと思いつくと。

麻倉 そうですね。曲を聴くとまずこういう女の子でこういうストーリーがいいなみたいなビジュアルが思い浮かぶので、それをお伝えすることが多いですね。

――そういうアイデアは聴いたら即座に湧いてくるものなんですか?

麻倉 割とスッと浮かびますね。具体的にというよりはこういう感じかなあっていうフィーリングでしかないんですけど。

――さっきのお話の中で、同年代のスタッフの方から色んな方向性の曲を教えてもらったとおっしゃってましたが、麻倉さん個人として歌いたい曲に変化はありましたか?アルバムに必要なピースとは別に、新たな音楽の好みというか。

麻倉 自分では新しい曲を聴き始めたとか、最近このアーティストが好きでとか、そういう好みの変化はないんですけど、こうやってアルバムを作ってみると前作とは全然違う感じになったなとは思います。収録曲は私も一緒にスタッフさんと選んでるので、何か変わったのかなとは思うんですけど、どこがどうやって変わったのかがいまいちわからないんですよね。

――聴いていて不思議なのが、曲自体がすごく大人っぽくなったわけではないし、歌詞が大人の恋愛を歌ってるわけでもないのに、ちゃんと少し大人になっている感じがするんですよね。少し前にTrySailのインタビューをしたときに、各々が声優としてのキャリアを10年分積んでいるので、ストーリーがあってキャラクターがあるような曲に関しては、アプローチが変化しているという話をされてたんですけど、ソロ活動ではいかがですか?

麻倉 そうですね。やっぱり全然違うなとは思うんですけど、好みが大人になったかはわからないんです。どっちかというと自分でやりたいことや、自分の気持ちがちゃんと見えるようになったというか。例えばこれは嫌だなとか、これは好きだなっていうのが、昔は自分自身よくわからなかった。モヤがかかってて見えなかったところが、今は好きか嫌いかって問うたときに、ちゃんと答えられるようになったところは成長ですし、大人になったなと思います。



――ちなみに今回のアルバム制作で嫌だなと思ったことはありましたか?提示されたことで、それは違うと思うことってどんなことなんでしょう?

麻倉 基本的には曲に対してここのメロディを変えたいですとか、自分の耳馴染みを優先するというか、こうしたら気持ちいいなって自分でわかるというか。当然いただいたものも正解なのですが、「私はこっちのほうが気持ちいいです」って言えるようになりました。あとは歌詞もイメージと離れているものがあれば、別の案をいただいたりしています。

――歌詞は具体的にはどういうワードがイメージと異なりますか?

麻倉 例えば言葉遣いが悪いとか。「ヤバい」とかはあんまり入れないようにはしています。もちろん普段の会話で「ヤバい」って言うことはあるんですよ、たまにあの……TPOに合わせて(笑)。でも麻倉ももとして活動するうえで、それは自分自身でもあるんですけど、「麻倉もも」っていう存在を作ってるみたいな感覚もあるんです。だから多分、私がプロデューサーとして“麻倉ももさん”に歌わせたくないワードなんです。

――なるほど。それはご自身の好きなものでいうと少女漫画的なのか、もしくは昭和アイドル的なというか。

麻倉 どちらかというと昭和アイドルですかね。あんまり現代風の「だりぃー」みたいな感じじゃないほうがいいなっていうのが私の中にあって、あくまでちゃんとしたキラキラした、もうこれファンタジーだろ!くらいの女の子のほうが、基本的な設定としてはいいなと思います。

――ファンタジーという言い方はわかりやすいですね。楽曲の主人公もすごくちゃんと恋をしている、かわいらしい女の子じゃないですか。そこに麻倉さんの声優としてのキャリアが乗ったことによって、そのファンタジーに強い説得力が出ていると感じます。こんな女の子いないだろと思わせずに自然に聴けるようになっていますよね。



アルバムを貫くブラス曲「eclatante」



――では収録曲について聞いていきましょう。ご自身的にアルバム全体の軸というか、この曲があるから、このアルバムってこういう雰囲気になったなという曲があればお伺いしたいです。

麻倉 真ん中にある曲……やっぱり一番最初に取りかかった、私がこういう曲やりたいと思って制作が始まったリード曲の「eclatante」(エクラタンテ)は、このアルバムの軸になってるんじゃないかと思います。

――この曲はどんな内容の発注から始まったんですか?

麻倉 まずブラス曲をやりたくて。ブラス曲といっても色々ありますが、かっこいい感じのジャジーな曲調のイメージがあって、それを私が歌ったらどうなるんだろうという興味からスタートしました。

――まず最初の発注はジャズっぽい感じというのがあったと。

麻倉 そうですね。ジャジーといっても大人っぽいというよりは、これまで私の音楽でやってきた流れで明るめの、ちょっとかわいらしさがあるブラス曲って感じで。

――そもそも大人になりすぎないというか、麻倉ももイメージの範疇でっていうのも元々考えにあったんですね。

麻倉 まさにそうです。こういう曲を私なりの、麻倉ももの楽曲にできたらいいなと考えていて、すごく大人にしようとかは思っていなかったです。

――それはさっき仰っていた俯瞰のアーティスト・麻倉もも像というか、どういう範囲の歌まで歌わせていいかという判断基準によるものですか?

麻倉 そうかもしれないです。挑戦はしてみたいけど、あくまで私の歌っている中でっていう。

――個人的な感想なのですが、まだデビューして間もない1stアルバムくらいの若手だと、もう少しチーム側の意識が働いて、ここらでこの子に大人をやらせてみようって方向になると思うんです。ちょっと歌詞もセクシーにしたりして。今このタイミングでジャズ曲で管楽器を生で入れてとなったときに、かわいいの範疇に収めるのって、アーティストイメージがはっきり持ててないとそうならない気がするんですよ。

麻倉 あーなるほど。はい。多分私の好みみたいなものがあって、そこに寄せていったら結果的にかわいくなるというのはどの曲もありますね。例えば曲選びでももっと大人っぽくなりそうな曲もあったけど、どっちかというとファンタジー感のある曲調を選んだりとか。あとはもっとキラキラする音を入れてくださいとか、そういう希望を足していった結果、かわいく収まることは多いです。

――そういったリクエストに対してこの曲が上がってきて、最初の印象はいかがでしたか?

麻倉 最初は楽器の種類も違って、もっと浮遊感があったというか。ジャズっぽくなかったというか。まったく違う印象の曲でした。

――こういう曲って打ち込みのデモだとグルーブ感が変わっちゃいますよね。

麻倉 多分デモから完成までで一番印象が変わった曲だと思います。

――とはいえデモの時点でこの曲がいいって選びはしてるわけですよね。

麻倉 それはそれでというか、まったく違うけどすごくいい曲だったんです。あのバージョンも作り込んでどこかで出したいくらいで。だから私自身も驚きでした。あ、完成したらこういう曲になるんだっていう。

――こういった過去やられたことのないタイプの楽曲を歌うにあたって、レコーディングはいかがでしたか?

麻倉 こういう曲ってリズムが重要だと思うんですけど、かなり速いテンポで言葉も詰まってるので大変でした。気持ちの部分では情景を思い浮かべながら、お人形さんみたいなフワフワの服を着て、雲の上で歌ってるみたいな気持ちで、人物像とかはあまり決めずに、どちらかというと影絵みたいなイメージで歌っていました。



“特例”が生んだ新境地「シロクジチュウム」



――ほかにご自身的にチャレンジになった曲や、挑戦したことはありましたか?

麻倉 それはもう「シロクジチュウム」は新境地というか、自分が歌ったらこの曲どうなるんだろうとか、デモの段階でも不安だったので、一番挑戦の曲だったなと思います。

――不安というのは、テクニック的にですか?それとも完成像とか未来があまり見えない感じ?

麻倉 未来が見えないというのが近いですね。今まで歌ったようなわかりやすい感じじゃないというか。

――そうですね。すごく現代的かつテクニカルというか、麻倉さんのイメージにあまりない曲ですね。

麻倉 なので最初にデモを聴いたときに、これが良い曲かも判別できないというか。これはどういうジャンルでどういう受け取り方をしたらいいかもわからなくて。まず音がすごくかっこ良くて、自分の声が乗っているイメージが想像できなかったんです。

――最初に聴いた時点で仮歌などは入ってたんですか?

麻倉 いえ、最初は打ち込みの音だけのデモをいただいて、その段階では最終的にどういうメロになるかも想像できなくて。なので、「わ……わかりました」みたいな(笑)。この曲はそもそもドルビーアトモスに対応した曲を作ろうというところから始まっていて。私も都度確認してはいましたが、基本的に全部お任せで作っていただいたんです。

――明確な嫌がない限りはチームに任せてみようと。

麻倉 そうですね。ほかの曲はほぼ全曲もっとこうしたいとか伝えていたんですけど。そもそもドルビーアトモス自体も、このアルバムを作るなかで色々聴かせていただいて知っていったので、基本的にはお任せして。それに合うようにこういう音楽だったら楽しいとか、仕組みをわかっている方に一任してました。

――ということはこの「シロクジチュウム」はだいぶ手探りの状態でレコーディングを迎えたと。

麻倉 最初の段階から音だけは聴いてたので、曲には馴染んではいました。聴けば聴くほど癖になるスルメ曲だなと思って、レコーディングの段階ではもう自分の中で落とし込めていたというか。あと仮歌もかわいらしい声の方が録ってくださっていて、想像がしやすかったのもありますね。



――実際の作業はいかがでしたか?レコーディング中の感覚というか。

麻倉 Aメロはどういうテンションで歌えばいいかなっていうのは迷って、ディレクターさんや作曲の田中秀和さんと相談しながらやっていたんですけど、ラストのたたみ掛けるサビなんかはもう、楽器の音がガンガン感じられるような録り方をしてもらったので、上手くノリに乗れたというか、気持ち良く歌えました。

――楽曲的にはテクニカルでちょっと無機質な部分と渦巻くような感情の部分が共存していますが、歌のキャラクターはどういうイメージで歌われましたか?

麻倉 この曲はちょっと一枚上手な女の子というか、小悪魔っぽく翻弄するようなイメージだったんですけど、Aメロとかは無機質に淡々と歌ってる感じにして、クライマックスにかけて感情を爆発させていくみたいな流れで歌っていました。

――確かにサウンド的にも後半に行けば行くほど有機的というか、感情が音でわかるようになってくる仕掛けですね。歌詞もさっきの「ヤバい」とまでは言わないけど「Hey Siri」とか、現実と密接なワードが出てきますね。これらは麻倉さん的に抵抗はありませんでしたか?

麻倉 制作段階でこんなに全部お任せする曲ってそんなにないんですけど、そこも含めて私の中で“特例の曲”ってイメージがあったんです。普通だったら、この“既読”とか“Hey Siri”とか、スマホを連想させる現代的なワードは多分変えてもらってたと思うんですけど、今回ここまで挑戦していますし、曲にもこのワードがすごく合うなと思って、そのまま活かしてもらったんです。もう挑戦するんだったら歌詞も今まで歌ったことのないような、今後使うかはわからないけれど、そういう言葉を入れるのもありだなと思って。

――根本的に麻倉さんは普遍的なものというか、10年後や20年後に聴いて「そんなブームあったね」とならないワードのほうが好きなんですね。

麻倉 そうですね。あとはやっぱりちょっと古風というかファンタジー寄りの女の子像が私の中であるので、スマホを使ってる女の子っていうのがあんまり想像つかないというか。

――例えば描写として寝る前に日記をつけるとかはもう現代のイメージの中にないかもしれないけど、歌の中だとありですよね。

麻倉 そうですね、そっちのほうが好きですね。LINEして寝るとか、スマホでなんかメモして寝るとか、そういう感じよりは、日記を書いていい夢見ようみたいなほうが曲の中の主人公像としては好きです。

――「シロクジチュウム」は今後の麻倉ももに繋がってるっていうよりは、特例という意識で聴いていいんですかね。

麻倉 確かに特例だと思いながら作ってはいたのですが、出来上がってみると自分の中でやってよかったなと思えた曲なんですよ。挑戦にもなりましたし、聴いていて楽しいし、こういう曲もありだなっていう幅が自分の中で広がったので、機会があったらまたやってみたいと思えるくらいに好きになりました。だから特例で作りはしましたが、今後はわからないです。また作るかもしれない。

――ご自身の麻倉もも像フィルターに新しい何かが追加されたのではなく、フィルターは変わらないけど、スタッフを信じて任せてみる回がまたあるかもしれないと。

麻倉 そうですね。こういう曲調もありだなっていう許容範囲は広がったかもしれないです。今まではこれを提示されてもたぶん選んでなかったと思います。でも今後こういう曲が候補を選ぶ段階で入っていたら、面白そうかもって思えるような幅が広がった気がします。

――特例という言葉がぴったりなくらいアルバムの中でも異質ですし、あとこの曲が最後に入っているのが面白くて。これはどういう意図か聞いてもいいですか?

麻倉 流れや曲と曲の繋がりが気持ち良かったのもあるんですけど、ちょっと「なんだこれ?」って終わらせたかったんです。これは何だったんだ?ってもう1回最初の「ピンキーフック」に戻っていくみたいな。いつもは最後の曲をちゃんと手渡しで渡して、受け取ってもらって「ありがとうございました」という感じの終わり方が多かったのですが、今回はとりあえず私が剛速球を投げて終わるみたいな(笑)。

――それこそ麻倉さんのこれまでの作品でいうと、最後の曲らしいメッセージでアルバム全体が閉じていくのが似合っていたので、この理解できないかもしんないけどブン投げとくねという感じはすごく新しいイメージになりますよね。

麻倉 考えてもらう時間というか、次の曲に行かずに終わって「この曲は……?」っていう噛み砕く時間があったらいいなと思って最後にしたんです。

――少女マンガ的な感覚でいうと読後のモヤモヤというか、「何だったんだろう?」みたいなオチってお好きなんですか?

麻倉 嫌いなんです(笑)。ちゃんとハッピーエンドというか、2人を見届けて終わるのが本では好きなんですけど、でもお客さんとの今までの信頼感もあるからできることなのかなとは思いますね。こういうふうに投げても面白がってくれるだろうなとか、意図を汲み取ってくれるだろうなっていう信頼があるからこそできる。1stアルバムだったら絶対やらないです。

――このアルバムを今まで麻倉さんを応援してきたファンの皆さんが聴くとして、これは信頼してるから大丈夫だよねなのか、みんなをちょっと裏切ってみたいなのか、どっちの気持ちが大きいですか?

麻倉 多分もう何をやっても大丈夫だろうなっていう信頼と、あとは意図をすごく考察してくれるだろうなっていう期待もありますね。



“物語”を歌う麻倉ももの音楽



――新曲で個人的に好きだったのが「フラワーズ」なのですが、「シロクジチュウム」とはまた違った意味で声の特性や、サウンド的な広がりとコーラスワークが印象的でしたけど、麻倉さん的に楽曲の印象はいかがでしたか?

麻倉 私のイメージでは絵本の中の世界で、人間とは違う、クマみたいな小さな生き物の夫婦のお話という感じで歌っていました。「僕だけに見える星」以来の一人称が僕っていう男の子の曲なんですけど、人間じゃないイメージがあったからこそ、すんなりとキャラクターっぽく自分の中に落とし込んで歌えたのかなと思います。

――この曲に限らず、作家さんから「こういう曲です」という説明などは受けないんですか?

麻倉 もちろん話してくださる方もいらっしゃるんですけど、ほとんど受けないですね。レコーディングに行く段階で、私のイメージがすごく固まってるっていうのもあって、想像とズレてたらどうしようかと(笑)。

――ご自身の中ではクマで固めちゃってるわけですもんね。

麻倉 そうなんですよね。だから当日行って「これってどういう歌ですか?」って聞いて全然違ったらどうしようというか。迷ったら聞くことはあるんですけど、基本的には自分の中で世界観が広がりすぎて、自分の解釈で歌うことが多いんです。

――確かにこの「フラワーズ」は具体的な風景というより想いの部分が主題に据えられていて抽象的ですよね。そこにクマであれ、ロボットであれ、キャラクター性が乗ると急激にセンチメンタルが増すじゃないですか。麻倉さんがそういったイメージを乗せるのは意識的にですか、それとも無意識?

麻倉 なんていうか音を聞いたらもう、大体こういう子でこういうストーリーでって入ってきちゃうので、一度できたものを崩すのが難しいレベルで無意識ですね。この曲は最初にけんたあろはさんに作っていただくのが決まっていて、何曲か出していただいた候補の中から選んだのですが、その段階からもうクマって言っていました。多分最初に聴いてぱっと入ってきたんだと思います。

――そういったイメージの面で、今回の新曲の中で想像が容易だった曲、聴いて一発で入ってきた曲ってほかにありますか?

麻倉 「monologue」ですね。これは聴いてもうすぐに主人子はこういう子でこういうストーリーとか出来事がありましたっていうのを、簡単なプロットみたいに書いて送って作詞していただきました。私がイメージしたストーリーとして送ったのは、近所に幼なじみのお兄ちゃんがいて、主人公はずっと大好きだったんですけど、最終的には自分のお姉ちゃんと結ばれて。この「monologue」を歌っているのは2人の結婚式なんです。

――想像以上に切ないしめちゃくちゃ具体的ですね(笑)。

麻倉 確かに(笑)。ストーリーは結構具体的に送って、それを全部言い過ぎずにフワッと歌詞にしていただいたんですけど。どっちも好きなお兄ちゃんとお姉ちゃん同士がくっ付いて、笑顔で送り出そうみたいな曲です。

――制作過程や細かいリクエスト内容についても伺えて大変興味深かったです。最後に語り残しや、読者の皆さんへのメッセージをお願いできますか。

麻倉 今回のアルバムは自分の中でも挑戦的な曲がたくさんあったり、制作にもしっかり関わらせていただいて、私の意見もたくさん取り入れて作れたアルバムなので、ぜひ何度も聴いてください。今後はこれを引っ提げたツアーも予定しているので、この曲たちを好きになって遊びに来てもらえたら嬉しいです!

INTERVIEW BY 青木佑磨(学園祭学園) TEXT BY 市川太一(学園祭学園)

●リリース情報

『Apiacere』

7月27日(水)発売

■mora

通常/配信リンクはこちら

ハイレゾ/配信リンクはこちら

【初回生産限定盤Type A(CD+LIVE Blu-ray)】



品番:SMCL-774〜775

価格:¥8,800(税込)

【初回生産限定盤Type B(CD+MV Blu-ray+写真集)】



品番:SMCL-776〜778

価格:¥7,700(税込)

【通常盤(CD)】



品番:SMCL-779

価格:¥3,100(税込)

<CD>

1. ピンキーフック

2. 満開スケジュール

3. eclatante(エクラタンテ)

4. 彩色硝子(ステンドグラス)

5. フラワーズ

6. 僕だけに見える星

7. monologue

8. あしあと

9. Love me, Choose me

10. ふたりシグナル

11. ネムイケド

12. シロクジチュウム

<Blu-ray/-LIVE Blu-ray- [Type A] >

麻倉もも Live 2020 “Agapanthus” 11/15公演

1. Agapanthus

2. スマッシュ・ドロップ

3. カラフル

4. トキメキ・シンパシー

5. “さよなら”聞いて。

6. Twinkle Love

7. 星空を想えば

8. 花に赤い糸

9. 今すぐに

10. Good Job!

11. 明日は君と。

12. 秘密のアフレイド

13. Shake it up!

14. トクベツいちばん!!

15. 妄想メルヘンガール

16. Fanfare!!

17. 僕だけに見える星

-アンコール-

18. No Distance

19. ユメシンデレラ

20. 365×LOVE

<Blu-ray/-Music Video Blu-ray- [Type B]>

1. 僕だけに見える星

2. ピンキーフック

3. 彩色硝子

4. eclatante

-写真集- [Type B]

「デビュー5周年お疲れ様小旅行」と題した大ボリューム100ページのコンセプト写真集

●ライブ情報

LAWSON presents 麻倉もも Live Tour 2022 “Piacere!”

全席指定:

<グッズ付きチケット>¥9,000(税込)グッズ内容未定

<チケットのみ>¥7,500(税込)

10月1日(土) 大阪・オリックス劇場

10月2日(日) 大阪・オリックス劇場

10月9日(日) 福岡・福岡市民会館

10月22日(土) 愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホール

10月28日(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA

10月29日(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA

関連リンク



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https://www.sonymusic.co.jp/artist/asakuramomo/

麻倉もも Official Twitter

https://twitter.com/Asakura_Staff

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