ANAの大型貨物専用機、ボーイング777Fには「ブルージェイ」という愛称が与えられています。今回ロサンゼルスでその名付け親に直撃。「初めて話す」という、命名の裏側を聞いていました。

“北米”に生息する鳥、でも誕生はロス?

 ANA(全日空)では、2019年から大型貨物専用機「ボーイング777F」の運航を開始しています。現在777Fは2機体制で、ともに社員公募で選ばれた愛称「BLUE JAY(ブルージェイ)」が与えられており、機体後部左側に「青い鳥のマーク」が入っています。「ブルージェイ」の日本名は「アオカケス」。“北米”に生息する”青い”羽を持つ鳥だそうです。

「名前をつけた理由を詳しく話すのは、たぶん初めてだと思います」。現在777Fの重要な就航地のひとつである、アメリカ・ロサンゼルス。ここに、ANAの777Fに「ブルージェイ」の“名付け親”がいます。米州室貨物担当のMO CHAOさんです。


離陸するANAのボーイング777F「BLUE JAY」。この撮影時はロサンゼルスに向かった(乗りものニュース編集部撮影。

 ANAグループの公式サイトには、「ブルージェイ」が名付けられた理由について、次のように記されています。

「北米に生息するとても美しい青い羽根を持つ鳥。ブルージェイの特徴は、賢く勤勉かつ何事にも粘り強い所。ANA Cargoもボーイング777型フレイター機導入にあたり、この"BLUE JAY"に倣(なら)って、何事にも勤勉に、粘り強く取り組んでいきたいという思いから命名」

 ただ、CHAOさんが語る理由は、これよりももっとストーリーに満ちたものでした。

「3〜4年前にロサンゼルスの外れでハイキングをしていたら、青い鳥が鳴きながら私についてきたんです。実のところ私も鳥には詳しくなく、友人などに聞いたらそれは『ブルージェイ』じゃないかと言われまして。それで、その数か月後に同じところにいったところ、また同じ種類の鳥がいて、食べ物を手に持ってみると、飛んできてその食べ物を持っていくんです。そのとき、この鳥がある動きをすることに気づいたんです」

 この“ある動き”こそ、同氏が777Fに「ブルージェイ」の名前をつけた大きな要因でした。

「ブルージェイ」=ANAの777Fがピッタリすぎた!

 CHAOさんは続けます。

「食べ物をくわえた鳥は、すぐにそれを食べるのではなくて、リスのようにいろいろなところに隠すんです。とある場所に隠し終わったらまた飛んで来て、次回は違う方向にいって……というのを繰り返すんですよね。多分、冬など食べ物が少ないときなどに備えたもので、『将来のために』ということだったんでしょうね」

「その鳥の姿を見たあとで、仕事で貨物専用機を眺めていたら、貨物をもって(搭載して)違う空港にいっては、拠点に戻り、また違う空港へ貨物を持っていく……という忙しく動き回るさまが、『あの鳥の動きと似ているな』と思ったんです。新型貨物機に『ブルージェイ』と名付けようと提案したのは、そういった経緯からでした」


ANAのボーイング777F「BLUE JAY」の胴体後部には”青い鳥”が描かれている(乗りものニュース編集部撮影/)。

 同氏によると、「ブルージェイ」という名前がANAの777F貨物専用機にぴったりな理由はまだあるとのこと。それについては、次のように話します。

「『BLUE』はANAのコーポレートカラーと一致しますし、『JAY』は“JAPAN”の意味にもなります。しかも空を飛ぶ“鳥”です。そしてANAが当時大型貨物機である777Fを入れたのは、『将来のために』です。この名前は、すべてが一致するんです」

 ちなみに、鳥の「ブルージェイ」との出会いについては、後日談があったよう。同氏はそのいきさつを次のように話しました。

実はありました 「ブルージェイ」物語の後日談

「ただ、実は私たちが『ブルージェイ』だと思っていたのは、実は同じ仲間ではあるものの、『カリフォルニア・スクラブ・ジェイ(California scrub jay)』という違う鳥だったようだ、というのが後でわかりました。カリフォルニアには、ブルージェイはいないはずなんですよね……ただ行動パターンは2種ともにほとんど同じようです。本物のブルージェイを見せてもらったんですが、私達が見たものよりもっとキレイでした」


ロサンゼルス国際空港で貨物を積み込むANAのボーイング777F「BLUE JAY」(松 稔生撮影)。

 CHAOさんが名付けたANAのボーイング777F「ブルージェイ」は、従来同社で用いられてきた貨物専用機「ボーイング767F(BCF)」よりも、搭載貨物の重量や大きさ、そして航続距離が大幅にアップしています。

 とくに新型コロナウイルス感染拡大下で貨物需要が大きく伸びた現況では、その特徴を活かし“大車輪”の活躍を披露。名付け親が待つロサンゼルスには、2021年に臨時便として初飛来したことを皮切りに、2022年6月現在では、成田〜ロサンゼルス線が定期便化されています。ANAの「青い鳥」は、さまざまな人の思いが詰まった貨物をくわえて、日常的に“親元に帰れる”ようになったといえるでしょう。