軽油臭くない! 「輸入バイオ燃料」西武バスが路線バス初導入 100%使用 価格も現実的?
西武バスが廃食油などから精製された輸入「バイオ燃料」を国内の路線バスで初導入。しかも100%使用のため、鉱物油特有の臭いもありません。西武バスにとっては2種類目となるバイオ燃料、なぜ導入するのでしょうか。
北欧メーカーのバイオ燃料を路線バスに導入
西武バスが、いわゆるバイオ燃料のひとつ「リニューアブルディーゼル」を同社の路線バスに導入します。2022年7月13日(水)、同社所沢営業所にて、その使用車両や給油設備が公開されました。
リニューアブルディーゼルを使用するバス。西武バス所沢営業所(中島洋平撮影)。
リニューアブルディーゼルとは、廃食油や動物油などを原料に製造した軽油の代替燃料のことで、捨てられるはずの資源をリニューアルして使用する意味で、“リニューアブル”燃料だそう。なお、航空用は一般的にSAF(Sustainable Aviation Fuel)と呼ばれています。
この燃料は、既存の車両や給油施設をそのまま使える点がメリット。車両からの排ガスは普通に出ますが、それは地下資源由来ではないため、製造工程から使用までをトータルで考えると、GHG(温室効果ガス)排出量で軽油と比べ約90%の削減を実現するそうです。
西武バスは今回、このリニューアブルディーゼルをまず1台のバスで100%使用し、所沢駅と東所沢駅を結ぶ路線を中心に走らせます。今回はそのバスの試乗も行われました。
「通常の軽油と比べて、性能や乗り心地に違いはありません」。西武バス管理部の渡邊浩平さんはこう話します。「違うとすれば、軽油独特の臭さがないことでしょうか」とのこと。実際に排ガスを嗅いだところ、確かにバス特有の鉱物系の臭いがしませんでした。また、燃料の現物は軽油が少し黄色みがかっているのに対し、リニューアブル燃料は無色透明です。
リニューアブルディーゼルは、再生可能資源由来の燃料製造で世界最大手、フィンランドのNeste社から伊藤忠エネクスが輸入し提供しています。2020年に伊藤忠エネクスが一連のサプライチェーンを構築したことで実現しました。これまでファミリーマートの配送トラックなどに使われていますが、路線バスなど旅客自動車での使用は、西武バスが国内初です。
ただ、西武バスにとって、このバイオ燃料は“2種類目”になります。なぜ新たなバイオ燃料を導入したのでしょうか。
あれ、ユーグレナの燃料は?
西武バスは2020年から、ユーグレナ社が提供するミドリムシと廃食油からなるバイオディーゼル燃料「サステオ」を導入し、上石神井営業所と滝山営業所で使用しています。しかし、サステオはいまだ生産量が少なく、価格も割高。西武バスは軽油にサステオを混合する形で使っています。
対して今回はリニューアブル燃料を100%使用。かつ価格は、「軽油の3〜4倍」(伊藤忠エネクス リニューアブル燃料課 相澤隆太課長)とのこと。この価格は、かなり現実的なラインまで下がってきたといえ、世界最大手であるNeste社ならではの優位性だといいます。
西武バスは、サステオだけでなく、水素を燃料とするトヨタの燃料電池バス「SORA」も導入してきました。「カーボンニュートラルに向け、状況に応じた対応ができるよう選択肢を多くしておくことが肝要です。あらゆる角度からカーボンニュートラルを研究していきます」(西武バス 渡邊さん)といい、リニューアブルディーゼルに関しても、バイオ燃料の調達先の選択肢を増やす意味合いがあるそうです。
リニューアブルディーゼルを給油する様子(中島洋平撮影)。
ただ、ひとつの課題は輸入燃料を今後も安定供給できるのかということ。伊藤忠エネクスの相澤さんによると、昨今の情勢から、リニューアブルディーゼルの国内生産も考えられるといいますが、国内の廃食油は活用先が決まっているケースがほとんどだそう。
原料となる廃食油を輸入し国内生産するか、あるいは従来通り完成品の燃料を輸入していくか、今後を見ながら検討していくといいます。また、「廃食油以外を原料とすることも考えられます。現在、都市ゴミや木質バイオマスから燃料をつくる技術の開発も進んでいます」(伊藤忠エネクス 相澤さん)とのことです。