電気自動車メーカーのテスラや、宇宙開発企業のSpaceXを立ち上げたイーロン・マスク氏は、2022年4月にTwitterを440億ドル(約6兆円)で買収する契約を締結しました。しかし、マスク氏は買収成立から1カ月足らずでTwitterの買収を保留とし、現地時間の2022年7月8日には、買収から撤退することを正式に発表しました。

Elon Musk officially tries to bail on buying Twitter - The Verge

https://www.theverge.com/2022/7/8/23200961/elon-musk-files-back-out-twitter-deal-breach-of-contract

Elon Musk tells Twitter he is killing the deal | TechCrunch

https://techcrunch.com/2022/07/08/elon-musk-not-buying-twitter-sec/

マスク氏はTwitterが「多くの人々が自由にあらゆる話題について語り合えるような公共の場」として機能し続けることが、民主主義の基盤となる「言論の自由」を保つことにつながるとして、Twitterを買収することを計画しました。マスク氏は2022年4月5日にTwitterの筆頭株主となり、合計440億ドルで残りの株式を買収することを提案。同月26日にはTwitterがこの提案に合意し、マスク氏のTwitter買収が決定しました。

Twitterがイーロン・マスクによる5兆6000億円の買収案に合意 - GIGAZINE



by Steve Jurvetson

しかし、マスク氏は5月13日に「『スパムや偽アカウントがユーザーの5%未満である』というTwitterの試算を裏付けるデータが出てくるまで、Twitterの買収を一時的に保留にします」とツイートし、事実が明らかになるまでTwitterの買収を保留すると発表。



このツイートを受け、ウェブサイトの解析ツールであるSparkToroとTwitter向けの解析ツール・Followerwonkが共同で数万件のTwitterアカウントを分析。その結果、Twitterのアクティブアカウントの約20%がスパム・偽アカウントであることが判明しています。

Twitterのアクティブアカウントの約20%がスパム・偽アカウントであるという調査結果 - GIGAZINE



その後、現地時間の2022年7月8日(金)になって、マスク氏はアメリカの証券取引委員会にTwitterの買収を取りやめることを伝える資料を提出。この中でマスク氏は、「Twitterが買収契約で重大な違反を犯し、誤解を招くような虚偽の発言を行ったため、買収取引を取りやめる」と述べています。

マスク氏の法務チームは資料の中で、「Twitter上で偽アカウントやスパムアカウントがまん延していないかを2カ月近くにわたって独立して評価するために必要なデータと情報を集めてきました」「Twitterはこの情報の提供に失敗、あるいは拒否しました」と記し、買収を取りやめる理由を説明しています。

なお、Twitterのブレット・テイラー会長は、マスク氏が同社の買収を取りやめる動きを見せたのち、「Twitterは買収を進めるために法的措置を講じる予定であり、訴訟に発展した場合には勝利を確信している」と説明しています。





なお、マスク氏がTwitterの買収を取りやめることにした要因は「偽アカウントやスパムアカウントがまん延しているから」ですが、「これだけの理由で買収契約を破棄できるかどうかは不明です」と海外メディアのThe Vergeは記しています。

一方で、買収契約が合意に達したのち、Twitterはマスク氏の要求に応える形でさまざまな施策を打ち出しています。Twitterはプラットフォーム上から1日あたり100万件以上のスパムアカウントを削除しており、四半期ごとの集計ではスパムアカウントが全体の5%以下まで減少したと報告しています。

The Vergeはマスク氏によるTwitter買収計画について、「Twitterの新しい事業計画を立案したいというよりは、言論の自由と企業の独立に関する希望に満ちた製品計画を立てることを楽しんでいるようでした」「マスク氏のTwitter買収は、新しいビジネスを買収して成長させるための試みというよりも、新しいゲームか何かのようでした」と指摘しています。。