コーヒーの価格で警察が介入する事態に(画像は『L’Union 2022年5月23日付「Italie : un habitant de Florence estime que son café est ≪trop cher≫ et appelle la police」(Crédit photo : image d’illustration)』のスクリーンショット)

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毎日3,000万杯のエスプレッソが飲まれているイタリア。そんなイタリアのフィレンツェで、ある客が「カフェで注文したエスプレッソが高すぎる」と警察に通報するという出来事が起こった。警察もこれに同意し、カフェのオーナーは罰金を科されることになったが、オーナーは今回の通報に対して抗議している。『Capital』などが報じた。

コーヒーの聖地、イタリア。この国は有名なエスプレッソをユネスコ無形文化遺産の候補として提案したほどで、コーヒーはイタリア文化に欠かせない存在である。多くのイタリア人は行きつけのカフェに通い、バリスタや常連客らの間では他愛もない話から政治の話題など様々な議論が交わされているのだ。

今回の出来事は、そんなイタリア市民の交流の場となっているカフェで起きた。5月16日、フィレンツェの小さなカフェ「Ditta Artigianale」に一人の男性地元住民が訪れ、カフェインレスのエスプレッソを注文した。エスプレッソを飲み終わり、支払いをしようとした際に男性はこのエスプレッソが2ユーロ(約268円)もすることに気がついた。価格の高さに納得できなかったこの男性は、警察に通報するという行動をとるに至ったのである。男性は、カフェはメニュー表や店頭看板に価格を表示することが義務付けられているにもかかわらずそれを怠ったことを非難しており、警察はこれを受け1000ユーロ(約13万4000万円)の罰金をカフェのオーナーに科すことにした。(※為替は5月16日時点、1ユーロ134円換算)

罰金を科された「Ditta Artigianale」は2013年に開業し、2019年にはイタリアのコーヒー焙煎最優秀賞を受賞するなど地元住民に親しまれているカフェである。今回の出来事に対し、店のオーナーであるフランチェスコ・サナポさんは「コーヒーの価格はデジタル媒体で表示されている」、「何よりも、メキシコの小さな農園で作られたコーヒーだからその価格なのだ」、「そしてバリスタが丁寧に作っている」と強調し、いらだちを募らせる。さらにサナポさんは、Instagramに投稿した動画の中で「誰かがカフェインレスコーヒー(水抽出工程を含む)に2ユーロを支払うことに腹を立てたため、私に罰金を科したのだ。信じられない。今日に至っても、誰かが怒って警察を呼んだ際には、時代遅れの法律に振り回される」と憤りを露わにした。

サナボさんはまた、今回通報したお客のような行動を皆がとれば「ほとんどのレストランやカフェが潰れてしまう」と訴えた。イタリアのカフェでは、コーヒーは通常1ユーロ(約134円)で売られているが、高騰するインフレ(4月に6.2%上昇)や物流問題、コーヒーの不作に直面し、エスプレッソの価格は2022年中に1.50ユーロまで上昇する可能性がある。また新型コロナウイルスの影響もコーヒーの価格上昇に拍車をかけている。「Ditta Artigianale」もこれらの問題に直面しており、2013年のオープン時のエスプレッソの価格が1.50ユーロであったのに対し、値上げに踏み切らざるを得ない状況に至ったのである。

サナポさんは「ネガティブな反応もポジティブな反応もあったが、これまで罰金を科されたことは一度もなかった」と言う。職人同盟「Confartigianato」のフィレンツェ支部は今回の罰金の件を受け、オーナーを擁護する立場を取った。職人同盟の会長は「質の高い製品を作るには、多くの労力が必要である。上質な商品はすべての人に利益をもたらし、報われるものだ。」と念を押した。「Ditta Artigianale」に通う客らも、お気に入りのお店を守りたい、値段が上がっても通い続けたいという気持ちが強いという。

画像は『L’Union 2022年5月23日付「Italie : un habitant de Florence estime que son café est ≪trop cher≫ et appelle la police」(Crédit photo : image d’illustration)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 H.R.)